第497話 偕老同穴(かいろうどうけつ)
俺とアスカは、うちのみんなと一緒に朝からいつもの体操とランニングを終え、朝食前にブラッキーとホワイティーにエサをやった。アスカはその後白ヘビの白ちゃんにもエサをやるのだが、ヘビはそんなに食べる必要がないようで、ここのところは三日に一度くらいの頻度らしい。
六人の子どもたちは、朝食前、屋敷の中や、敷地の掃除をしてくれている。子どもたちと言ってもそういったところがちゃんとできている子供たちなので、ありがたい。子どもたちの仕事ぶり、お手伝いを見ていると、周りの年長者がも子どもたちに対して良い感情を持つのは当然だと思う。
朝食時間、お客さんたちも食堂にそろったところで、
「あけましておめでとうございます。そして、いただきます」
「いただきます」
『あけましておめでとうございます』が何なのか分からない人がほとんどだろうが、何となく意味合いは分かったと思う。
今日の朝食は軽いめだ。
白菜が今のところ見つかっていないので、できるだけ似た野菜を使って、朝食は鶏肉のお雑煮もどきだ。俺を含めたうちの者のお雑煮にはお餅が最初から入っているが、お客さんたちのお雑煮はスープのつもりなのでお餅は入っていない。お好みで焼き立てのお餅を入れてもらう形にしたのだが、結局みんな珍しがってお餅を入れていた。もちろん、パンやサラダ、ハム、ソーセージなども用意している。
朝食を終えたお客たちは、一度部屋に戻り、帰り支度をして、三々五々うちの近くの乗合馬車の停留所から馬車に乗って帰っていった。
うちのみんなも今日は仕事がある者はいないので、昨日夜更かしした者たちが自室に帰っていった。これから二度寝でもするのだろう。
去年はうちに勤めにきている人は実家にほとんど帰ったが今年はみんな帰らず屋敷にいる。昨日のパーティーがなければおそらく実家に帰っただろう。そういったことも考慮して、俺の部屋に呼んで、残り物で悪いがビンゴの賞品の残りと少し多めのお年玉を配った。
当たり前だがみんな嬉しそうな笑顔で受け取ってくれたところで、今年もよろしくと言っておいた。みんながこれに答えて頭を下げて、『よろしくお願いします』と声を揃えていってくれた。練習をどこかでしているんじゃないか?
次は、シャーリーを始めいわゆる身内だ。順番にお年玉を渡していく。すでにちゃんと働いている四人娘やヨシュアたちにも渡しておいた。昨年どの程度の金額のお年玉を渡したのか思い出せなかったので、今回は金貨五枚ずつとしたが、後で去年のお年玉の金額を思い出した。今年はちょっと金額が多かったかもしれない。最初からアスカに聞いておけばよかった。まあ少ないよりはいいだろう。
お年玉をみんなに渡すときアスカは俺の左後ろにいつものように立っているのだが、お年玉を受け取ったみんなが俺の部屋から出ていったあと、
「マスター、私にはお年玉はないんですか?」
あれ? アスカも欲しかったのか? アスカについては一心同体過ぎて、身内という概念すらなかった。これは大失敗だ。
俺が慌てていたら、
「冗談です」
アスカはそう言ってくれたが、だからと言って『それならいいよな』と済ませてしまうわけにはいかない。
急いで収納の中を探してみたところ、ちょうど見てくれがそれなりに良くて、全く同じ意匠の指輪が二つすぐに見つかった。その一つをアスカにやろう。アスカに魔法の指輪が効果があるのかは不明だが、最悪でも効果なしだろうから、見てくれの良い指輪なら何でもいいだろう。
ただ、戦闘時は大丈夫だろうが、硬い金属をこねたり叩いたりする工作機械モードのアスカの手の動きに指輪自体が耐えることができなさそうだが、工作機械モードになっているときは素直に外せばいいだけなので問題はないだろう。
それでも鑑定だけはしておくか。なになに?
『
金とプラチナの合金製。二つで一組の指輪。二人で一つずつ指にはめることで、二人の結びつきが強化される。
「アスカ、気付かずに悪かった。今さら感はあるがこれを受け取ってくれ」
そういって、指輪の片割れをアスカに渡した。
「ありがとうございます」
「言葉の意味はよくわからないが、名前は『
そう言って俺の指にはめた
「! 私が完全機能停止するまで大事にします」
そこまですることはないと思うが、
「アスカ、どうかしたか? 『
「えーと、よくはわかりません」
「アスカにも分からないことがあったのか。それじゃあ仕方ないが、これからもよろしくな」
「何度も言っていますが、マスターが亡くなるまでご一緒します」
「大げさな言い方だけど、嬉しいよ」
[あとがき]
なんだか、ラブコメ風味になってきました。
先も見えているので、最後までよろしくお願いします。
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