第489話 年末行事3、指輪の鑑定


 アスカは身の上語りをしたあと、また部屋を出て行ったので、俺も作業に戻った。


 アスカにゆかりのある記念金貨を、並べた小箱の中に一枚ずつ入れ終えた。これでハズレはなくなった。


 あまり大きくなくて何か役に立つものはないかとドラゴンの光り物の中から次に選んだのは指輪だ。ドラゴンが持っていたくらいだから、タダの光り物の指輪の可能性はあるが、魔法の指輪の可能性も高いと思う。たいていの魔法の指輪は、指にはめると勝手にフィットするのでこういった賞品にするには便利だ。抜くときも簡単に抜けるが、指から外れて落っこちるということも無い。


 俺の場合はレベル4までの呪い無効の『祈りの指輪』をはめている関係で呪いを気にしたことはないし、身につける物は面倒でも鑑定しているので、呪いの指輪を含めそういったものを実体験したことはない。従ってゲーム知識からの受け売りだが、呪いの指輪は簡単にはめることができるものの、指から抜けなくなるのだろうと想像している。



 俺は身につける装飾品は入浴時は外して収納しているが、いつもは指輪を三つはめ、メダルを一つ首からぶら下げている。


「活力の指輪」「生命力の指輪」「祈りの指輪」


「ヒドラのメダル」


 相当有用な魔法の指輪と魔法のメダルなのだがこういった有用なものを賞品に含めたい。


 そう思いながら、つらつらと収納庫の中のドラゴンの光り物の山の中から指輪を取り出して、机の上に小山を作った。


 その指輪の山から、指輪を一つ手に取って、鑑定してみる。


「嘆きの指輪」

金と銀の合金、エレクトラム製の指輪。

自分ではなく、親しい人の運が大きく低下する。低下割合は、自分が相手を大事にしているほど大きくなる。


 これは呪いの指輪なのだろうが、かなりエグイ効果だな。こういった呪いの指輪はまとめて処分するため、机の横に置いておく。



 次の指輪を手に取って鑑定。


「明かりの指輪」

銀製の指輪。

指にはめると、夜間明るく光るが、周囲を照らすほどではない。


 微妙だが、呪いの指輪という訳ではないので、一応採用。小さな紙に鑑定結果を書き込み、指輪と一緒に箱の中に入れておいた。



 それでは、次。この指輪は緑の石でできていてかなりゴツイ。


「夜食の指輪」

ヒスイの指輪。

指にはめて就寝すると、深夜無性に空腹を感じ、目を覚ます。


 肥満まっしぐらだな。机の横の呪いのグループに。



 次の指輪。


「小さな不幸の指輪」

鉄製の指輪。

足の小指をいろいろなところにぶつける頻度が高まる。


 地味だが嫌な呪いがかかっている。どうも、呪いの指輪が多いな。これも机の横にけておく。



 次に手に取った指輪は、金でできた指輪本体に、赤いハート型にカットされたルビーか何かがくっついた指輪だ。


「アイのこだま」

エレクトラム製の指輪本体にハート型のルビーをあしらった指輪。

反響音が全て「アイ」と聞こえる。


 微妙だな。これも、一応採用しておこう。



 次に手に取ったのは、銀色の指輪で、同じ材質でできた大き目のドクロマークがくっついたものだ。どう見ても呪いの指輪に見えるが一応鑑定してみた。


「沈黙の指輪」

ミスリル製の指輪。

ドクロは何も語らない。


 たいていの指輪はなにも語らないと思うが。ミスリル製ということで小さいけれどもそれなりの価値がありそうだ。とりあえず賞品として採用しておこう。



 そして、次の指輪。


 これは銀色の指輪本体に白くて丸いたまが乗っかっていて、その珠の上の方は黒くなっている。ぱっと見、目玉にも見える。


「こけの一念」

銀製の指輪本体に、大理石を磨いたたまを乗せたもの。黒目に見える部分は大理石の模様。

信じてじっと目を凝らせば、その先を透視することができる。かも知れない。


 最後の一言が余分だが、これは俺が預かっておこう。



 どれも魔法の指輪のようだが、微妙な指輪ばかりだ。


 とにかく、数が必要だ。どんどん鑑定していこう。


「青の巣窟そうくつ

ミスリル製の本体に、サファイアをはめ込んだ指輪。

これをはめると、視野全体が青くなる。


 洞窟に行かなくても青い気分が味わえるかもしれない。



「雨にも負けず」

銀製の指輪。

この指輪をはめると、装着者の全身が撥水はっすいするようになる。


 これは雨の日には何気に重宝するかもしれないが、体中が水を弾くとなると、皮膚がおかしくなりそうな気もする。



「祈念の指輪」


 これは、名まえからしてよさげだ。何か凄い指輪の予感がする。


ミスリル製の指輪。

この指輪をはめて祈れば、願いが叶う。その信念が大切。


 もはや、精神論の世界だ。これはミスリルの価値しかないが、一応採用しておこう。




 そして、次に手に取ったのは、金色の指輪。表側はツルツルだが、裏面に文字が書いてある。


「ᛈᛟᚹᛖᚱ」


 どこかで見たような文字だが、俺には読めない文字だ。


 鑑定すればわかるだろう。どれどれ?


「支配の指輪」

材質不明。

その他一切不明。


 こいつは、名まえ以外何もかわからない。名前からしてこの指輪は本当にものすごい指輪のような気がするが、ものすごい呪いの指輪の可能性もある。これは収納庫の中にしっかり仕舞っておこう。


 あれ? 部屋の中が少し明るくなっていないか? 部屋の隅に置いた鎧用マネキンに着せているフーの額の真ん中あたりが輝いている。いったいどうした?


 収納庫の中にその指輪を仕舞ったら、フーの額の輝きもおさまった。


 一体あの指輪は何だったんだろう?


 その後も作業を続けて何とか必要個数の魔法の指輪を小箱にもれなく入れることができた。それなりの指輪も何個が有ったので、それをいれた箱には印をつけておいた。これはビンゴの上位入賞者用にしようと思う


 机の横にけていた呪いの指輪は小山になっていた。



[あとがき]

既出だと思いますが、フー:拙作『闇の眷属、俺。~』の主人公が着ていた鎧(鎧装ナイト・ストーカー)のこと。

支配の指輪:同じく拙作『闇の眷属、俺。~』の主人公が持っていた指輪。

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