第487話 年末行事1、ビンゴゲーム準備


 ニワトリを飼うのは本気だったのか冗談だったのかは分からないが、今のところアスカはヒヨコをうちに連れ帰ってはいないようだ。


 予定していた『スカイ・レイ』の改修も順調で、あと数日で作業も終わる。


上昇限度:2000(1500)メートル

速度:巡航時、巡航高度1500(1000)。時速350(250)キロメートル。最大400(350)キロメートル、30分(変わらず)

航続距離:3500(5000)キロメートル、巡航10(20)時間


本体重量:12トン

離床荷重:18(15)トン

(搭載荷重:6トン)

機体後部に収納設置されたタラップを使い搭乗

(本体部分の後ろに取り付けられた3段ほどのタラップ)

主機:新型魔導加速器×4(吸気を加速し、排気として出力する)

補助:新型小型魔導加速器×4(方向転換、主機の補助として使用)

使用動力源:レベル2以上のモンスターの魔石×10+

座席は12(6)。

操縦席は2。


()内の数字は改修前。


 速度などが大幅に上昇するが、航続距離が半減した。航続距離について言えば、途中でいったん着陸して軽く点検したあと、魔石を交換するだけなので、特に問題ではない。


 座席数はいままでの倍の12になった。これまで客席は、左右三席ずつの二列で前から2、2、2だったが、後ろと横に増やして2、4、4、2という座席配列になった。




 パルゴール行きの前には屋敷の改修増築も完成しているので、今の屋敷の中はかなり広々している。屋根裏部屋を使っていた六人も今は新しい四人部屋を二つ、三人ずつで使っている。



 十二月に入り、冒険者学校の方も実習を始めてしばらく経ち、三期生の卒業実習ももうすぐそこだ。実習旅行用の客車もアスカはすでに製作しており俺の収納庫の中で出番を待っている。


 三カ月の短い期間でこういった行事までこなすわけで、ペラを始めとした冒険者学校のスタッフはなかなか大変だ。



 三期生の卒業式と卒業パーティーは大みそかの前日。その次の日は後片付け。


 四期生の始業式は年が明けて五日からということにしているため、前日の準備日を除いて正月三賀日さんがにち、丸三日冒険者学校はお休みになる。


 そういうことで、大みそかの夕方から冒険者学校のスタッフ全員を屋敷に呼んで、大みそかのパーティーを開く予定だ。ペラたち冒険者学校のスタッフ五人は卒業パーティーに続いて連日の宴会となる。賄い関係を見てもらっているヒギンスさんたち三人は、遠慮してか新年は実家に帰ると言って不参加になった。



 正月用にモチ米も用意済みだし、小豆あずきもそろっている。こういったものは、カレー用スパイスも含め今では王都セントラルの市中でも手に入るようになってきている。パルゴールで仕入れた砂漠大ネズミもふるまうことができる。飲み物はジュース類から、成人用にアルコールも各種用意しているので万全だ。特にセントラルヒーティング中なので冷たい氷菓はおいしいと思う。


 王宮に出仕した際、そういった話を昼食時にリリアナ殿下にお話したら、自分も参加したいと言われてしまった。最初のうちはこちらの連中も硬くなるかもしれないが殿下はかたぐるしい人ではないので、すぐに打ち解けるだろう。六人の子どもたち以外はほとんどの者が以前にもご一緒したこともある。問題があるのはヨシュアくらいかもしれないが、そこは殿下がヨシュアのいることの分かっているうちにわざわざやって来るということで、ヨシュアも察してくれるだろう。



 こちらは問題ないので、王宮の許可があれば構いませんと言っておいた。パルゴールでの戴冠式の時と同じ、リリアナ殿下の方は総数で四人程度になるだろうから、特に問題はないだろう。


 そうなると、シャーリーの友達のエメルダさんも呼んだ方がいいだろうということになった。


 こちらの方は、すぐに『ぜひ参加したい』とのことだった。エメルダさんは、侍女のパトリシアさんと二名での参加だ。


 ここまで来たら賑やかな方がいいだろうということで、フレデリカ姉さんとアルマさん、もちろんベルガー姉妹、それにボルツさんと今では正式なボルツ工房の作業員となったボルツさんの幼馴染おさななじみ兄妹きょうだいも呼ぶことにした。



 年末行事の準備は着々と進んでいる。前回はリバーシ大会などという俺にとっての屈辱の催しを開催してしまったが、今回の目玉として、以前ドラゴンの墓場で見つけた財宝ひかりものをみんなに配ることにした。


 単純に配ってしまってはつまらないので、今回は頭を使うのではなく運だけの勝負であるビンゴゲームをすることにした。ビンゴゲームに必要な資材はアスカと二人で作っておいた。いや、アスカが作ってくれた。いつものように俺の仕事は材料をアスカに渡すことと、アスカを励ましてやっただけだった。


 俺が、今年の年末はビンゴゲームをすると言ったら、アスカが、


「てっきり、マスターはリバーシ大会をして、去年の雪辱せつじょくを果たすのかと思っていました」


 とか、言われてしまった。アスカによるパーフェクトがトラウマになっている俺には、当の本人からの十分嫌味な言葉だ。


 悪気はないのは分かっているが、もう少し言葉には気を使っていただきたい。


 それはそれとして、ビンゴゲームに話を戻すと、ビンゴゲームに必要な資材を揃えなければならない。


 まずは、くるくる回すと、数字の書かれた玉が一つ出てくる抽選機と数字の書かれた玉そのもの。それにビンゴカードだ。玉にかかれた数字は厳密には数字を書いているわけではなく、彫り込んだものになっている。その方が便利なのだとアスカが言っていたがどう便利なのかは分からなかった。


 ビンゴカードは0から99までの数字が縦横五マス、計二十五マスの中に中心を除いて二十四個、0から99までの異なる数字がランダムに書かれている。抽選機から出てきた球に書かれた数字が自分の手にしたカードに書かれていればそこに印を入れて、印が縦横斜めどこか一つでも五つ並べばビンゴだ。


 真ん中が空白になっているのは、そこはワイルドカードで、その位置は最初から印がついている扱いになる。


 ビンゴカードは同一カードに同じ数字が書かれてはいけないし、全カードがすべて異なっていなければならないので、アスカに数字は入れてもらっている。俺が変に手伝ってしまうと、材料をダメにしてしまう可能性が非常に高いと自分では思っている。自分の限界を知っておくということは大切なことなのである。



 それで、肝心の賞品だが、適当にドラゴンのお宝ひかりものを選んでしまうと『呪いの~』みたいなものを選んでしまうとマズいので、一応俺が提供しようと思っている物の鑑定だけはしておくことにしている。


 アスカは薄い木の板で小箱を作ってくれているので、俺は、自分の部屋で机の後ろの椅子に座って、その小箱に商品を入れているところだ。


 何が出てくるかは、箱の蓋を開けてからのお楽しみだ。商品の箱を並べて、ビンゴゲームで上がった人が順番に選んでいく。ビンゴで一位だからといって、一番いい物が当たるわけではない。賞品の方も、一つ一つでそんなに差はないようにしているので、不公平感はないだろう。


 今回のビンゴゲーム参加者は、俺とアスカを除いて、うちの連中では、


 シャーリー、ラッティー、マーサ、四人娘、ヨシュアにマリア、新人六人の十五名。今回は殿下以下お客さまも訪れるので、悪いが使用人のみんなは接客にまわってもらう。その分ボーナス的にお年玉を手渡すつもりだ。


 お客さまとして、


 リリアナ殿下以下四名。


 アルマさんにフレデリカ姉さん。


 ベルガー姉妹の二名。


 ボルツさん以下三名。


 これで十一名。


 合わせて二十六名。


 これに冒険者学校から、ペラ以下五名で合計三十一名となる。結構な人数だ。このところ、新人六名が空いた時間屋敷の掃除を積極的にしてくれているので、ハート姉妹の妹のソフィアも姉同様、厨房のゴーメイさんの手伝いにまわっている。


 大みそかのパーティーにリリアナ殿下がいらっしゃるし、人数も三十名を越えるが厨房の方は大丈夫かとゴーメイさんに尋ねたところ、全く問題ないとのことだった。たまにパーティー的なものを開いてもらうと、パーティー料理の腕が振るえるのでありがたいと言われた。料理などはゴーメイさんに丸投げで問題はないだろう。



 ビンゴゲームの賞品用にアスカに小箱を四十個ほど用意してもらっているので、全部に賞品を入れて、余った分は当日裏方に回わる五名にお年玉と一緒に配るつもりだ。


 まずは全部の箱にもれなく、大き目の金貨を一枚ずつ入れていく。金貨の模様は俺も見たことも無いものだが、金貨の大きさも、大金貨の半分くらいあるので、現行の金貨よりもかなり大きい。見た目金色が濃いような気がしたので、鑑定してみた。


「ドライゼン帝国金貨」

ドライゼン帝国の記念硬貨。純金。十ドライゼンに相当する。


 やっぱり純金だったか。記念品として配るようなものだからちょうどいい。


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