第443話 『鉄のダンジョン』改造
冒険者学校の拡張が完了したので翌週初に現地で完成確認をしてくれとフォレスタルさんから連絡がきた。そちらの方はペラに任せていても問題なかったのだが、二期生も実習で『鉄のダンジョン』に入っているため、そろそろゴーレムの素材、鉄鉱石と石炭を回収してこないといけないので、冒険者学校に顔を出すことにした。
「冒険者学校の増築の確認ついでに、素材回収してこようと思う」
「それでしたら、三期生用のメイスと増員分と予備の四輪車を作っておきましょう。増築された冒険者学校の増築部分にはガレージもありますから置いておけます。マスター、材料を造船建屋に置いておいてもらえますか」
「了解」
……。
結局二時間ほどでアスカの製作作業は終わり、俺はでき上がりを収納しておいた。
そして、週が明けた当日。
「それでは久しぶりに二人で駆けていきましょう」
二人で王都内の往来をそれなりに迷惑を掛けつつ駆け抜けて、冒険者学校にたどり着いた。すでにペラたちは実習でダンジョン内に入っているようで学校周辺にペラたちの姿は見えなかった。
増築した個所は既存の校舎にL字型に
俺たちが待っていたら、フォレスタルさんが馬車で坂道を下って冒険者学校の前までやってきた。
「おはようございます。ショウタさま、アスカさま」
「おはようございます」「おはよう」
「特に問題はなく完成しました。中に入って確認していきましょう」
フォレスタルさんについて、中を確認していった。学校の寮のようなものなので、特に問題はなかった。確認途中で、新しい四輪車とメイスも倉庫に置いておいた。
「ありがとうございます。費用の方は今日中に振り込まれると思います」
「了解しました。それでは、失礼します」
俺がサインした書類を受け取ったフォレスタルさんは、すぐに乗ってきた馬車に向かおうとしていたのだが、呼び止めて、
「あっ、フォレスタルさん、うちの屋敷の方も増築したいので、明後日あたり、いらしてくれませんか?」
「はい。それでは、明後日九時ごろお邪魔させていただきます」
「お待ちしています」
「それでは、改めて失礼します」
そういって、フォレスタルさんは乗ってきた馬車に乗り込み帰っていった。実にテキパキしたビジネスマンである。
増築の確認も終わったので、ゴーレム置き場にだいぶ貯まっていた
「俺たちも、中に入って見るか。コアにも魔力を供給したいしな」
「はい」
久しぶりに訪れた『鉄のダンジョン』
生徒たちは訓練用の五百メートル四方で連なった新しいエリアで活動しているはずだ。出入り口周辺のゴーレムはすっかり狩られてしまっているようで、ミニマップで見ても近くを徘徊しているゴーレムはいなかった。
「そういえばアスカ、俺たちはコアに頼めばダンジョン内のどこでも好きなところにいわゆるテレポートできるじゃないか」
「そうですね」
「それができるなら、冒険者たちも、どこかの部屋とかどこかのエリアに入ったら一層にある出入り口前にテレポートできる仕組みがあれば荷物の問題が片付くよな。行きは台車を四人で持って階段を下ることになるけれど」
「私も思い至りませんでしたが、可能ではないでしょうか」
「俺の読んだことのある小説なんかだと、帰還用のアイテムがあってそれを使うと出入り口までテレポートできるんだがな」
「テレポートできるほどのアイテムを大量に作るとなると、ダンジョンポイントを大量に使いそうですから、テレポート部屋のようなものを設けて、その部屋の中に入って何かレバーかスイッチを押すと出入り口までテレポートするというのはどうでしょう。それですと、それほどコストはかからないと思います。いずれにせよ、コアに聞くしかありませんが」
「形式はそれでいいな。テレポート部屋を使用するにあたって、ある程度の対価を要求した方が良くないか? その方がありがたみがあると思うんだがどうだろう?」
「その方が良いと思います。お金という訳にはいきませんから、レベル1程度の魔石をどこかに投入すると起動するようにしておけば、いきなり起動もしませんし安全でしょう」
「それじゃあ、その線でいってみようか。
コア、俺たちの会話を聞いていただろ?」
『はい。マスター』
「今話していたようなことは可能かな?」
『問題ありません。各フロアに設置すればよろしいですか?』
「その周辺には、モンスターが近づかない設定も追加できるかな?」
『問題ありません』
「それじゃあ、今日も3000ほど魔力を吸い上げてくれるか?」
『ありがとうございます。……、6万
「低コストというと?」
『一部屋当たり10DPもかかりません』
「ずいぶんだな」
『単純に適当なスロットを設けてその中に魔石が投入されたらそれをダンジョンが吸収して、出入り口まで私が運ぶだけですから』
「あっ、そういうこと。なるほど。それなら、1層には不要だけど。2層以下の階層には五百メートル四方辺り一個作ってもらうか。同時に何個所からも転送するのは大変だろ?」
『同時転送に制限はないとは言いませんが、百や二百は問題ないと思います』
「そうなんだ。まあよろしく頼むよ」
『了解しました。……、作成完了しました』
「コアありがとう。まさにアスカ並みだな。それなら、いま1層で作っている訓練用の区画はもう広げる必要はないな」
「了解しました。現在、五百メートル四方の区画を十個作成済みです。今後は各階層を広げつつ、階層数を増やしていきます」
「そうだな。そんじゃあな」
『はい。それとシードを設置していただきありがとうございます』
「コアも分かるんだ」
『マスターと私の子どもですから当然です』
「そ、そうだったな。今気づいたけれど、テレポート部屋に説明書があった方が良かったな」
『説明文は部屋の壁に彫り込んでいます』
「よく気づいてくれてありがとう、コア」
『どういたしまして』
「マスターはやはりこのダンジョンのコアに好かれてますよね。子どもも生まれていますし」
「まあ、嫌われるより好かれた方が良いからな。さて、訓練の様子を見てくるか。今回は二十人だから五チーム。一期生たちはかなり優秀だったけれど、二期生の仕上がりはどうかな?」
「問題があるようならペラが何か言って来たでしょうから、順調な仕上がりでしょう」
「だよな。しかしこんなに簡単にテレポート部屋ができるんだったら、キルンでもやった方がいいんじゃないか?」
「マスター、大局的に考えればその通りですが、ダンジョンでの運送を
「ああ、そうだったな。ここのダンジョンにはうちの生徒たちしかいないから何をどう変更しようと問題ないけれど、本当の意味でダンジョンで生活してる人から見れば、少しの変化でもなにがしかの影響が出るものな。それが、今回のように見た目かなりの変化は影響が大きくなるわけだな。ダンジョンに限らず今回王都-キルン間の鉄道工事が始まっているけれどそこらへんは大丈夫なんだよな?」
「完成までにまだ五年以上の時間はありますし、鉄道工事の主体は商業ギルドですから駅馬車やその他の輸送についてもその辺りはしっかり対応してくれるでしょう」
「そうであってほしいな。それじゃあ、ペラたちのいるあたりに行って見るか」
「はい」
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