第420話 武術大会8、観戦と初めての試合2
[まえがき]
2021年21時20分
418話、「第418話 武術大会6、開始」でお弁当をみんなに最初に配ったところを修正して、弁当以外を配ったことにしました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は相手の出方をうかがってフェイントなどを入れているのだが、相手が手にした大剣を軽く動かすだけなので剣速などの見当がつかない。
しかも相手の構えも中段なので、当てにいっても単純な突きでは簡単に払われる。
まずは剣速を知らなくては始まらないと思い、軽くではあるが、当てにいく突きを繰り出してみた。すぐに大剣で払われてしまったが、払われた際、すぐに引くことで、相手に隙を与えず、こちらの態勢を素早く整えておく。
今の相手の動きからすると大剣だけあって、そこまでの剣速はないようだ。
ということで、まずは右足を半歩だけ前に出し、相手の足元に見え見えの突きを繰り出す。
これは軽く払われたが剣先を下に下げることができた。また中段に戻されると振出しに戻るので、間を置かず大剣の位置に対して相手のへそを中心とした対称位置の肩口に突きを入れる。必要以上に力を入れると棒が折れてしまうので、威力よりスピード重視の突きだ。
ドン!
思った以上に重い音がして、俺の棒の先端が相手選手の
「そこまで!」
相手選手についていた副審の声。そして主審が、
「勝者、コダマ選手」
あれ? 今ので勝っちゃったの? あれれ?
相手選手は倒れたわけではないが、場外で待機していた係の人に付き添われて左手で大剣を杖のようにして場外へ去っていった。
俺も試合場に立っているわけにもいかないので、そのまま場外へ出てみんなが応援してくれている座席にそのまま帰っていった。
「ショウタさんすごい」「圧倒的」「思った通り」「でしょ!」
みんなが初勝利を喜んでくれた。
試合内容は何だかすっきりしないものだったが、予想を超えて俺が強くなっていたのか、はたまたその逆か?
アスカの隣に腰を掛けたところで、
「マスター、完璧でしたね」
「ありがとう。でも、なんか思っていたのと違うって気がするけれどあんなのでよかったのかな?」
「これまで見てきたところ、まだ出場していないシード選手をのぞいて、マスターを破るような選手はいませんでした」
「アスカにそう言ってもらうと心強いな」
「とはいえ、シード選手は実力を認められているからこそのシード選手でしょうから油断はできません」
「それは分かっている。油断するつもりもないし、勝つつもりでいるから安心してくれていい」
「それでこそマスターです。今日は二回戦までですからこれからどうします。この進行具合ですとかなり早い時間に今日の試合は終わりそうですね」
「昼が遅くなったがここで弁当を食べて試合を最後まで見て帰ろうか」
「分かりました。それなら、全選手を観察できます」
そういうことで、だいぶ遅くなったが階段席でみんなに預かっていたお弁当を配り、食事を始めた。目の前の試合場では順次試合が行われていたが、あまり見るべきものもなさそうだったので、俺も応援団たちも試合そっちのけで雑談をしながら食事した。
食事を終えて、数試合観戦したあたりで、今日の最終戦となった。最後のシード選手が北側の試合場に出場するそうなので、いちおう注目しよう。すこし俺たちのいる階段席からは遠いので顔の表情などは分からないが、動きは問題なく見ることができる。
試合は、一回戦を勝ち上がった片手剣に盾を装備した選手と、シードの双剣の選手との対戦だった。
「双剣とは珍しいな」
「この選手がマスターに次ぐ第2シードだったようです。使用武器が剣ですから、斬撃よりも突きが中心になるのでしょう」
二人が開始線の後ろに立って軽く礼をしたところで、主審の「始め!」コール。
どちらも接近戦しかできないため、武器を構えながら、お互いに近づいていく。
一応は間合いに入るか入らないかというところで通常は相手の出方を見ることが多いと思うのだが、双剣の選手は、そのまま相手選手に近づいていった。もちろん双剣よりも片手剣の方が間合いがあるため先に片手剣が突き出されたのだが、その剣を左の剣で軽く弾いた双剣剣士は、右手で素早く突きを入れた。
その突きは簡単に盾によって防がれたのだが、双剣剣士はすぐに体をひねって先ほど片手剣を弾いた左手の剣が相手選手の盾に対してもう一撃加えた。
「盾を先に破壊する作戦なのかな?」
「そのようですね」
その後も同様な展開が続き、とうとう片手剣選手の持つ盾は縦に二つに割れてしまった。
「いままでどちらも有効打を与えてはいないけれど、こうなると片手剣の選手は厳しいかな」
「片手剣は双剣よりも長い分破壊力はありますが、手数で押し切られてしまうでしょうから、逆転は難しそうです」
やはり、予想通り双剣選手が片手剣選手を押し切って勝利を収めた。徐々に削られて行ったせいか、片手剣の選手も目立った傷を負ってはいないようだ。
「これで、全選手の確認ができました」
「俺が注意すべき選手はいたか?」
「一人もいませんでした」
「そ、そうなのか?」
「マスターは、気楽に試合を楽しんでいればおのずと勝ってしまうような選手しかいませんでした」
「それだと、この試合に出た意味があまりないってこと?」
「いえ、この試合で勝とうという意思の中でマスターが努力したことは十分意味があったと思います」
「まあな。そういえばこの大会で優勝したら何がもらえるの?」
「今回の大会の
「優勝はしたいが騎士団には入りたくはないぞ」
「当然
「ふうん。
観戦者もだいぶ帰っているようだから、俺たちもそろそろ帰るとするか?」
「はーい」
「せっかくだから、途中で甘いものでも食べて帰ろう」
「わーい」「やったー!」「でしょ」
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