第421話 武術大会9、久々登場


 武術大会初日が終わった。二回戦全試合が終了した結果、勝ち残った選手は32名。


 明日は、三、四回戦、最終日が五回戦、準々決勝、準決勝、決勝の予定だ。


 大会合場のある第2騎士団の訓練場を後にして、屋敷に戻る途中にあった結構しゃれた軽食屋さんにみんなで入り、軽くお茶とお菓子などを頼んでゆっくりした。




 それから時間が数時間さかのぼり、武術大会の貴賓きひん席。


 リリアナは大会で国王の名代としての挨拶あいさつを終えた後、そのまま義姉あねのマリアと試合を観戦している。


「ショウタさんが出場するというので、試合の見学もこのまましようと思っていたのですが、シード選手なので試合までだいぶ時間がかかりそうです」


「ショウタ殿はアスカ殿と一緒に先日Sランクの冒険者に昇進したことはリリアナも知っているでしょう?」


「もちろん知っています。そういえばお祝いにお二人に何か送ればよかったかしら」


「王室からそういった物を送るとそれなりの意味合いが出てきますから、リーシュ宰相と相談してからの方がいいと思うわ」


「さすがはマリアお姉さま。私では思いいたりませんでした」


「リリアナもすぐにそういったことに気づけるようになるわよ」


「ありがとうございます」


「それで、ショウタ殿は間違いなく優勝すると思うから、お父さまにお願いして優勝者への褒賞授与ほうしょうじゅよの役を代わっていただけばいいと思うわ」


「それはいい考えですね。あとでお父さまに頼んでみます」





 そしてこちらは、賢者サヤカと聖女モエ。


「ねえサヤカ、今日から武術大会で訓練は三連休じゃない、ちょっと武術大会を見にいかない?」


「武術大会って、おじさんばっか出てくるんでしょ? あんまりきょうみないかなー」


「試合はそうかもしれないけれど、観客席にはカッコいい人が来てるかもよ」


「そうかなー。ここにいてもすることないし、今のところ街に出てまで買いたいものもないからちょっとだけ見にいってみようか」


「それじゃあ、支度したくしてこようよ」




 二人とも余所行よそいきに着替えて武術大会会場のある第2騎士団の訓練場に顔を出した。ここ十日ほど観客席などの設営のため、サヤカとモエの訓練は第3騎士団の訓練場を借りて行っていたので、その間この訓練場には顔を出していない。


 今日の二人の出で立ちは、ワンピースながら極端なまでのミニで、思いっきりスカートを切り詰めた上に、付いていた半そでを取り払い、ノースリーブにしたものだ。下には下着だけ。確かに涼しげではある。それに、二人ともサンダルをはいて、大きな麦わら帽子をかぶっている。


「ねえ、サヤカ、この服少し薄くない?」


「なるべくうすい生地のワンピースをえらんだから、とうぜんよ」


「これだと、うえから下着がけてる気がするんだけど」


「モエ、これくらいしないといい男はよってこないの」


「良い男が寄って来ればいいけれど、どっちかっていうと変な男が寄ってくるんじゃない?」


「その時はわたしがやっつけてやるからもんだいないの」


「やっつけるって、サヤカ、手加減できるの?」


「ひつよう?」


「相手はゴブリンじゃないんだから燃やしたりしたらマズいわよ」


「それじゃあ、てかげんのれんしゅうということにすればいいいいでしょ? 失敗してもモエがあるていどなおせるし」


「それなら良いかも。じゃあいこうか」




 やって来た武術大会会場の第2騎士団の練習場。今では仮設の階段席がぐるりと巡って様変わりしていた。


「あら、こっちにこない間にずいぶんすごいことになってるのね」


「意外と大掛かりな大会みたいだわ。ちょっと面白そう」


「入るには、チケットがいるみたい。モエどうしよう?」


「空いている席がまだあるんじゃない?」


「そうかもしれないけれど、チケット売り場がどこにあるのかわかんない」


「あれ、ほんとだ。ここじゃチケット売ってないのかな。ちょっと入り口に立ってるおじさんに聞いてみるわ」



「おじさーん、ここの入場チケットってどこで売っているんですか?」


「なんだい、田舎いなかから出てきたのかい。街中まちなかのそれなりに大きなお店や食堂なんかで売ってるよ。もう売り切れじゃないかな。勝手に座席に座ると誰かの席だから困るけど、立ち見でいいなら入っていいよ。その代り後ろの人の迷惑にならないようにな」


「はーい。ありがとう、おじさん」




 二人が揃って試合場と階段席との仕切りになっている通路を歩いていくと、階段席の後ろの方に今回の試合のトーナメント表が張り出されているのが見えた。


「ずいぶん大きな大会みたい。高校野球なんかより大規模なのかな?」


「ここじゃあ、やきゅうにかぎらずスポーツってきかないから、そのぶん大きぼなのかもね」


「ねえ、サヤカ、野球をこの国で流行はやらせたらおもしろそうじゃない?」


「おもしろいかもしれないけど、モエはやきゅうのルール知ってる?」


「どちらかと言えば、全然知らない」


「アッハッハ。それじゃぜんぜんダメよ。わたしもぜんぜんしらないもの」


「ヒカルなら知ってるんじゃない?」


「少しは知っているだろうけれど、きたいはできないよ」


「そうだよね。ヒカルだものね。そういえば、そのヒカルは今何してるの?」


「知らない。き士団そう長が、何とかって国に出張中だからヒカルはやる気でてないようよ」


「少しはやる気が出てたみたいだったけど、やっぱりヒカルじゃダメみたいね」


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