第418話 武術大会6、開始
[まえがき]
2021年2月14日。
☆2000、310万PV達成しました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
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周囲のお客からそれなりに注目を集めてしまったので、食べたらすぐに店を出ようと思っていたのだが、そういったことには
こちらの世界に召喚される前の中学時代というか全人生で、デートなどというものは一度も経験したことはなかったと思っていた。しかし、これまで何度となくアスカと一緒にああでもないこうでもないと言いながら出歩いて、食事までしている。よく考えたらこれもデートだった。つまりは、俺はいわゆる圧倒的リア充なのだ!
まあ、俺が何をどう思おうが何が変わるわけでもないし、結局、腹ごなしに軽くランニングして屋敷に戻った。
屋敷に帰ってみると、商業ギルドから手紙と図面入れが届いていた。図面には王都からキルンまでの簡単な測量図面が入っていて、手紙にはキルンまでの鉄道用の測量が完了したとの知らせと、図面上の指定
そのあと、屋敷の温室の状態を確認するのを失念していたので、温室に入ってジャングル度合いと室温を確かめてみたが、室温は思ったほど高くはなっていないようで、鉢植えの木や草花も元気いっぱい育っていた。
アスカが管理しているのだから
そういったことをしていた関係で、その日は武術大会に備えての訓練はしなかったが、仕事を後回しにするのは嫌なので、翌日は『スカイ・レイ』に乗ってレール機材などを所定の位置に置いて行った。
それで結局、訓練の方は仕事を片付けた翌日から武術大会の前日までみっちりおこなった。これで思い残すことは何もない。というか最初から何も考えていなかった。
そして今日はとうとう武術大会当日。朝から雲一つない快晴だ。
俺は2回戦からの出場なのだが、武術大会では、試合が終了すればすぐに次の試合が始まるそうで、いつ俺の出番が来るのか分からないし、特に屋敷にいてもすることもないので、早めに会場に向かった。もちろん、今日仕事のない連中がぞろぞろと俺の後について来ているので、俺も普通に歩いて試合場に向かっている。
試合に臨む俺の格好は、先日アスカに作ってもらったサファリルックだ。それにいつものこげ茶色の『大盗賊のブーツ』を
いつも通りみんなの弁当やら水筒などは俺が収納庫に入れて持っている。試合に出場する選手が観客の荷物持ちをしているのがなんとなく引っかかるが、俺の存在はそんなものなので気にする必要は全くない。
いや、ちょっと引っかかるところがあるということは、なにがしか俺の気持ちの中にここのところ立て続けに伯爵になったりSランク冒険者になったりしたことで、おごりといったものが芽生えてきたのかもしれない。これに気付けただけでも良かった。
俺たちが向かっている武術大会の開催場所は、王宮の北、第2騎士団の訓練場に設けられた特設会場だ。
会場への入場はチケット制になっているようで、うちでは決勝まで三日間分のチケットを人数分購入している。
屋敷から40分ほどかけて会場に到着して、今日の分のチケットを入り口で見せて、指定された座席に向かった。
試合開始30分ぐらい前に会場に入ったのだが、客の入りは既に8割を超えているようだ。
試合場は、グラウンドの中に20メートル四方で白線が引かれ試合場となっている。それが2×2で4カ所。その周りを特設の階段席が観客席として囲んでいる。北側の観客席の真ん中は貴賓席で王族と侯爵以上の高級貴族の席となっているそうだ。俺たちの座っている席は南側の少し西寄りの場所で俺が主に出場するはずの試合場の正面になる。
俺たちの座る階段席の後ろには大きな看板が掲げてあり、そこにトーナメント表が描かれて、試合の結果と現在四カ所の試合場で行われているのがどの組み合わせなのかが分かるように印が付けられている。
俺のブロックが、1番と2番の試合場で、俺のいない反対ブロックは3番と4番の試合場を使うそうだ。
試合の進行を見ながら適当なところで選手の控室にいかなくてはならない。控室は1番から8番まで俺たち足元、階段席の下に用意されているそうで、俺は常に1番の控室を使い、決勝以外の試合は1番の試合場になるそうだ。面倒がなくてよかった。
いずれにせよそういったところは専属マネージャーのアスカが注意してくれているはずなので、俺はアスカに言われるまま行動すればいいようになっている。一種の依存症だが治す必要もないありがたい依存症である。
座席に付いたみんなに俺が運んできた荷物の内、傷んでしまうとマズい弁当以外の水筒やその他の私物を渡し終え、
「アスカ、最初はやっぱり国王陛下からのお言葉なのかな?」
「主催が国ですから、王族の誰かでしょう。国王陛下でなければリリアナ殿下でしょうか」
「リリアナ殿下に会ったことのないのは、マーサくらいだったかな?」
「四人娘も会っていますから、そうだと思います」
「最近王宮に顔を出していないから殿下に
「この試合で優勝すると、王族の方から
「だな。とはいえ、ここまで頑張って来たんだから狙うのは優勝だけだ」
「あまりそういった言葉を言わないマスターが珍しいですね」
「俺はやるときはやる男だからな。やれないものはやらないけど」
「安心してください。マスターが破れる可能性はゼロと言い切ってもいいと思います」
「励ましてくれて、ありがとう。
そろそろ、始まるようだな。あっ! やっぱり最初のお言葉はリリアナ殿下だ」
俺の言葉を聞いたマーサが、
「あの方がリリアナ殿下ですか。お綺麗な方なのですね。噂ではショウタさんと大変仲が良い方だとか」
「まあな。一度殿下のお命を救ったことになっているんだ」
「また何とも言えないようなロマンスですね」
「ロマンスってことはないけれどな。でも殿下は気さくないい人だよ」
「王室の方と友達付き合いできるというのもすごいことです」
「たまたま。
「でしょ」
最後は、したり顔のラッティーの言葉でした。
身内で適当なことをしゃべっていたら、結局殿下のお言葉は聞きそびれてしまった。
試合は、四つある試合場ですぐに開始された。大抵の選手は剣と盾を持ったオーソドックススタイルだ。もちろん選手たちの持っている剣も盾も木でできている。
盾以外の防具は各自の防具を使ってよいし特殊なアクセサリーなども装備していいことになっている。それで俺は指輪などのアクセサリーはいつも通り着けて、着ているのもいつもの普段着よりもさらに動き易いサファリルックだ。
アスカがただの布の服だと悪目立ちするので、革の鎧でも用意した方が良いのではと言っていたが、格好で試合するわけではないので断っている。相手から見ればずいぶん
試合場には選手二名の他、審判が三名いて、そのうちの二名が担当選手のPAの状態を選手のダメージなどから判断してその選手の負けを判定するということだ。残った審判が主審で、最終的な勝敗を決定するらしい。
見ていると試合そのものは、そんなに時間がかからないみたいで、10分もかかるような試合はまれで、たいていは5分程度で勝負がつくようだ。
一般的な武器は見慣れているので何ともないが、初めて見る魔術師の試合には興味がある。ちょうど目の前の試合場で、剣士と魔術師の試合が始まった。
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