第405話 探検3、ゲート?


 星空のもと、ワイバーンとレッドドラゴンを収納から出してマーサに見せてやった。モンスターの話をしばらくしたところで、マーサが、


「勉強になりました。そろそろ私はテントに入ります」


 そう言ってテントに帰って行った。寝ますとは言わなかったので俺とアスカに遠慮したのかもしれない。


 そのあとまた、あの台地を見たが、発光はまだそのままだ。何があるのか分からないが何かはあるわけだ。


 俺もそろそろ寝ようと思い、毛布を一枚草の上に広げ、一枚を枕に、もう一枚を上からかぶって、


「アスカ、俺は寝るから後は頼む」


「了解しました」



 翌朝は空が明るくなってきたところで目が覚めた。濡れタオルで顔を拭き、アスカとテントの中から起きだしてきたマーサにも濡れタオルを渡してすっきりしたところで朝食だ。ハンバーガーのようなものをゴーメイさんに作ってもらったものがあったのでそれを三人で食べた。



 アスカの作ってくれた金具を収納したあと、簡易カマドに水をかけて消火し、少し休んで、


「よし、出発しようか」


「はい」「はい」



 明るくなって発光現象が続いているのかどうかはわからなくなってしまったが、どの辺りが光っていたのかは思い出せるので、迷うことなく進むことができる。昨日は気付かなかったが、陽光にあたったせいか、台地の発光していた当たりが陽炎かげろうのように揺らいでいた。


 俺たちは、ところどころ立ち木はあるが腰丈の草原そうげんをほぼ直進して、くだんの台地の方に進んでいく。窪地くぼちに水が溜まって池になっているところに出くわすこともあったが、小川などには出くわさなかった。


 台地にかなり近づいてきて、先方の様子がよくわかるようになってきた。台地の高さは100メーターほどでそれほど高いわけでなく、広がりは見た目ではよくわからないが、だいたいミニマップ上では2キロというところか。


「うん? ミニマップを見ると、台地の真ん中あたりに穴が空いているみたいだ。その穴から夜の間光が漏れていたのかもしれない」


「光を発する穴ですか? なにかの出入り口でしょうか」


「出入り口。まさか、こんなところに『魔界ゲート』みたいなのができてるのか?」


「『魔界ゲート』?」


「この世界は『魔界ゲート』とかいう門で別の世界につながっているんだ。今のところ、来年の6月ころ、そのゲートが開いて、魔族と呼ばれる異界の軍勢が押し寄せてくるというので今各国で協力して防衛拠点を作っているところなんだ」


「そんなことが起こっているんですね」


「マーサのところも大変だったようだけれど、どこも大変みたいだな。ただ、『魔界ゲート』については俺に手立てがあるのでそんなに心配はしていない」


「さすがはショウタさんです」


 今度は俺の方がアスカより尊敬されたかな? まあ、勝負しているわけじゃないんだけどね。


「それはそれとして、穴が何なのかは確認しなくちゃな。急ごう」


「はい」「はい」



 台地のふもとまでたどり着き、そこから斜面を登っていく。草の生えた30度ほどの傾斜だったが登りはそこまで急斜面に感じることもなく登り切ることができた。


 登り切った場所からは、直接穴は見えなかったが、ミニマップでは、前方500メートルくらいのところにこれも直径500メートルほどのまん丸の大穴が空いている。


「こんなところの大穴だ、怪しいとしか言いようないな」


「穴の形状がほぼ真円のようですから、自然にできた穴の可能性は低そうですね」


「人工物とすると、無駄に大規模すぎるよな。とにかく気を抜かないようにして確かめにいこう」


「はい」「はい」



 たどり着いた先の大穴のふちに立ち、非常に怖いのだが恐る恐る穴の底をのぞきこむ。


 大穴は途方もなく深かった。見ているだけで吸い込まれそうな錯覚を覚える。


 立ったまま下を覗いていると怖いので、いったんしゃがんで見下ろすと、大穴の側面の数か所から滝のように水が流れ落ちていて、下の方はその水煙でけむっており、大穴の本当の底は見えない。水煙でその先が見えなくなっているところまでで直径の倍くらいありそうなので、穴の底までは1000メートルは超えるのだろう。



「確かにすごい景色だな。どうやってこんなものができたのか、それとも作ったのかはわからないが、やっぱり底を調べた方がいいよな」


「この台地の上なら『スカイ・レイ』が飛行できそうですから『スカイ・レイ』で行けるところまで下りてみましょう」


「そうだな」


 いったん穴から後ろに下り『スカイ・レイ』を排出して、すぐにみんなで乗り込んだ。


「『スカイ・レイ』発進!」


「『スカイ・レイ』発進します」


 

『スカイ・レイ』は50メートルほど上昇し、そこからゆっくりと穴の中央に向かって前進していった。


 穴の上空に差し掛かったところで、『スカイ・レイ』揺れて不安定になったが、そこはアスカがうまく操縦してすぐに安定した。


「穴の中央上空です。これより降下します」


 1000メートルの降下はいつもの着陸時の降下距離と同じだ。ただ、穴の中は先ほどのような変な気流などが発生しているようなので危険ではある。とはいえ、操縦はアスカなので、先ほど同様問題はないだろう。アスカもその辺は承知しているようで今回『スカイ・レイ』はいつもよりゆっくりと降下しているように見える。


「穴の底までの距離600、550、500、……、100。下には円形に地面が広がってようでその周りをリング状に水が囲んでいます。

 もう少し降下して着陸可能か地盤を確認します。80、70、50。降下停止」


 


『スカイ・レイ』が穴の底から50メートル上空でホバリングしている。水煙で『スカイ・レイ』のキャノピーから外は何も見えないが、アスカは、髪の毛でも下に伸ばして着陸する場所の地盤の強度を確認するのだろう。


「下の地盤、円形の周辺部にかなり大きなコブが何個ももありますが、中央部は砂地ですが平坦でしっかりしていますので着陸できます。

 降下再開します。40、30、20、10」


 コトンと軽い音がして『スカイ・レイ』は穴の底に着陸した。




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