第402話 ワイバーン4、依頼達成


 ワイバーンの群れを簡単に魔石奪取アンド収納でたおし、そのあと上空から付近を捜索そうさくして営巣地えいそうちではないかと思われる場所を見つけた。


 岩場の上が平たく台地のようになった場所に『スカイ・レイ』が着陸できたので、俺たちは、すぐに外に出て周りの確認を始めた。


 地元の冒険者がここを見つけたのだろうが、ここはかなり切り立った断崖の上の台地だ。大したものである。その台地の上には食い散らかされ腐敗した動物の死骸や骨や皮などが散乱して、かなりの異臭が漂っている。ブラッキーとホワイティーのいたようなしっかりした巣は見当たらい。ここがワイバーンの営巣地なら、ワイバーンは随分適当で不衛生な生き物のようだ。


 そういった中で、ちょっとしたくぼ地の中に、鼠色のボーリングの球のようなものが五、六個転がっていた。


「あれは、やっぱりワイバーンのたまごかな?」


「おそらく卵だと思います。私はモンスターは繁殖しないと思っていましたが、ダンジョン外のこういった自然の中ではモンスターにもかかわらずワイバーンは繁殖するようですね」


「そうみたいだな。種類によっては性別が後から変わる生物もいるし、自然の中で性別が生れた可能性はあるな。モンスターの生態なんか研究している人も少ないだろうし、新たな発見かもしれない。だからといって、何か問題もないだろ」


「いえ、自然界に出たモンスターの寿命がどの程度か分かりませんが、こういった生態系の上位のモンスターで新たに生まれる個体数が多いようだと、生態系が壊れる可能性もありますので、野放しにはできません」


「それもそうか、現に被害も出始めてるわけだしな。卵を壊してしまうのはなんか忍びないから、一応収納しておくか?」


「そうですね」


「それじゃあ、『収納』

 あれ、何も考えずに収納したけど、この卵は生きてなかった?」


「いわゆる無精卵ということでしょうが、相手はモンスターですから無精卵から生まれてくるかもしれません。邪魔にならなかったことを幸運だったと思いましょう」


「そうだな。ただ、ブラッキーとホワイティーの仇ではあるから、こいつらがかえってもうちでは飼えないな」


「そのうち『なんでもMONちゃん』に譲ればいいかもしれませんね。ヒナなら多少ランクの高いモンスターでもテイムできるかもしれません」


「それはいいな」


「あのう、『なんでもMONちゃん』とは?」


「テイムしたモンスターを売ってるそういう名前の店が王都にあるんだよ。そこで、うちのシローも買って来たんだけど、店長さんがテイムってスキルを持っていて、そのスキルでテイムされたモンスターは人に従順になるんだ」


「面白いスキルがあるんですね。そのうち私にも何かスキルが生れてくれば楽しそうです」


「何でもいいから、一つのことをやり続けているとそれ関係のスキルが生れてくるらしいよ」


「そうなんですね。頑張ってみます」


「マーサはどんなスキルが欲しいの?」


「まだ何も考えていませんが、じっくり考えてスキルを自分のものにするよう頑張ります」


「それはいいことだな」



「マスター、ここは地図で見た4つの営巣地ではないかもしれません。位置もだいぶずれていますし、この崖を上るのは、訓練され、近代的登山装備を持った者でないと無理と思います。

 それに、飛び立ったワイバーンが上空から見れば登山中の冒険者を簡単に見つけられるでしょうから、ここまで登れたとしても生還は難しいと思います」


 俺もだけど、アスカの冒険者に対する評価はかなり低いものな。やっぱり彼らでは無理だよな。となると、まだ4つ以上の営巣地があると思った方が良さそうだ。



「確かにその通りだな。アスカ、ここはどうする? なにもないけれどやっぱり破壊しておいた方がいいのかな?」


「依頼内容には営巣地の破壊もありましたが、壊すものが何もないようなので、『スカイ・レイ』に乗り込んで、上空から瞬発爆弾数発ここで爆発させておけばいいと思います」




 ここにいても嫌な臭いがするだけなので、そうそうに『スカイ・レイ』に乗り込み、適当に上昇した『スカイ・レイ』から、瞬発爆弾を台地の岩の中に無理やり数発送り込んでやった。


 ドドドドーン!


 上空にも腹に響くような音が伝わってきた。


 この前石畳の上で爆発させたときは舗装の石が割れた程度だったが、今回はかなり大きな石の塊も飛び散った。


 粉塵ふんじんがおさまったあとアスカに『スカイ・レイ』の高度をいったん下げてもらって確認したら、台地には四カ所大穴が空き、いたるところ大きな亀裂が走っていた。


 とてもじゃないが、はぐれのワイバーンがやって来ても、ここで寝起きはできないだろう。とりあえず一丁上いっちょうあがりだな。



「いまのが瞬発爆弾ですか? すごい威力があるものですね」


「収納を介して爆弾を岩の中に排出してやったんだが、爆発力が直接岩に伝わってそのまま破壊力になったんだろうな」


 瞬発爆弾を敵の体にねじ込んだことはないが、そんなことをしようものなら、敵の体が粉みじんになってしまって、形が残らないんじゃないだろうか。


「すごい破壊力とは思うけれど、マーサの世界だともっとすごいのがたくさんあるんじゃないか?」


「あるにはありますが、これほどの破壊力をもつ個人用携帯武器はありません」


「そこまで、すごい?」


「はい。凄いです」


 やる気が出てきた。俺も自分が単純な男だと自覚は多少はあったが、自覚していた以上にチョロイのかもしれない。


「そこが、マスターのマスターらしさです」


 今のは確かに口に出していなかったのにもかかわらず、アスカから的確な答えというか相づちのようなものをもらった。やっぱり俺とアスカは一心同体なのかもしれない。それと、いままでひとり言を知らないうちに漏らしていた気になっていたが、実は独り言など漏らしていなかった可能性もある。


「いえ、ちゃんとひとり言は聞こえていました」


 やっぱりそうなのか? いやそうではないのか? これでは全く判断できないじゃないか?


 まあいい。どうしようもない。


「それじゃあ、次にいこう」


「はい。ここ以外にも地図で漏れている営巣地があるかもしれませんから、これまでのように蛇行しながら北上を続けます」



『スカイ・レイ』はアスカの操縦でやや右旋回し、進路を東に取ったようだ。それからしばらくして左旋回し北に、そしてしばらくして西に。ミニマップの表示範囲に漏れがないようにくまなく山並みの上を飛行していった。




「マスター、前方にワイバーンらしきもの発見しました」


「確かにいるな」


「接近します」


「了解。俺はミニマップを見てる」



 ミニマップに入ってきたワイバーンを順次撃破して収納していく。今回は12匹もいた。


「マスター、前方に岩場を発見しました。ワイバーンの営巣地ではないでしょうか?」


「一応着陸して、卵があれば回収しておくか」


「了解」



 大型動物の死骸の残骸のようなもののほか、やはり窪みに卵が6個ほど見つかった。



 すぐに飛び立って、前回と同じように台地部分を爆破してやった。


「おそらく、ここは地図に載っていた営巣地の一つだと思います。あの地図は正確だったようです」


 あと三つの営巣地の位置はつかめているということだな。


「それじゃあ、回り道をせず、後三つ地図の順に回っていこう」


「了解しました」



 その後は艇内で昼食をはさんで、順調にワイバーンを見つけて撃破していき、その付近で営巣地を見つけては卵を回収して最後に爆破していった。やっていることは、自然破壊そのものだ。結局ワイバーンの卵は30個ほど見つかった。


 これで一応今回の依頼内容は達成できたのだが、ワイバーンが街道近くまで進出してきた理由も予定通り探ってやろう。



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