第401話 ワイバーン3、撃破
『スカイ・レイ』は針路を北にとるため、ゆっくり右旋回していき、それと同時に遠く
「あの山並みのどこかだな。今日はまだ空には何も見えないけれど、近づいていけば現れるだろう」
「前方一時の方角。小さく見えてきました。スミスさんの地図の方向とややズレていますがいまのところ誤差と思います。そちらの方向に向かいます」
軽く『スカイ・レイ』が旋回し、正面にケシ粒のようなものが見えた。
「どれ、……、俺にも見えてきた。動いていて数えにくいな。ミニマップではまだ見えない」
操縦席で前方を見ながら俺とアスカが話をしていたら、マーサも座席から立ち上がって俺たちの後ろから前方キャノピーをのぞき込んでいる。
「ワイバーンというのはどういったモンスターなのですか?」
「一言で言えば
「はい。分かります」
「口から火の玉を
「その危険なモンスターを
「まあな。俺は相手がモンスターなら簡単に
「『ミニマップ』ですか?」
「探知機の映像みたいなのが俺の視界の隅に見えてるんだよ。それを『ミニマップ』と言っているんだけれど、それで見えた生き物以外は収納できちゃうんだ」
「ショウタさんは不思議な能力をたくさん持っているんですね。まるで、私の世界にあった子ども向けのお話の主人公みたいです」
「主人公ではないけどな。運よくそういった能力を手に入れることができたから今こうしてるわけだ」
「私も、運よくショウタさんとアスカさんに助けていただいたからこうしてここにいます。そう考えると不思議です」
「そういうものだよ。
アスカ、先に目先のワイバーンを斃しちゃっても営巣地を見つけるのに支障はないかな?」
「今見えているワイバーンも群れですから、同じ営巣地から飛び立ったのだと考えれば、近くを通れば簡単に営巣地は見つかるのではないでしょうか」
「それじゃあ、サクッとワイバーンを
「マスター、ワイバーンもこちらを見つけたようで接近してきます。『スカイ・レイ』はこのまま飛行を続けます」
「了解。『ミニマップ』で
マーサ、真正面に黒い鳥みたいなのが見えるだろ?」
「はい。見えます。まだだいぶ距離があるようですが、かなり大きいのですね」
「いまから全部退治する。いくぞ! 魔石奪取からの収納、8連」
目の前に迫りくる、と言っては大げさだが、翼をバタバタさせてこっちに向かってきていた8匹がほぼ一瞬で視界から消えた。
「アッ! 消えた!
ショウタさんの収納も含めて収納では非生物しか収納できないと聞いていましたが、今のは生きてましたよね?」
「収納する寸前に殺してたんだよ。モンスターという生物は体の中に魔石というエネルギーの塊のような不思議な石をもっているんだけど、それが体の中からなくなった瞬間死んでしまうんだ」
「ということは、モンスターの体の中から魔石を収納して殺したあと、すぐにその死体を収納した?」
「まあ、そういうこと。今は、直接モンスターを見ていなくても『ミニマップ』に映っていさえすれば全方位のモンスターを
「今見たわけですが、信じられないようなスキルです。私が読んだことのあるお話にもそこまでの能力のある主人公はいませんでした」
「お話の中の主人公が俺みたいだと、戦っても苦戦しないだろ? そうしたらつまんないから、そのお話を作った人も手加減したんじゃないか?」
「そういう見方をしたことはありませんでした」
「それに、お話の中で苦戦するのは結構だけれど、実際の命を賭けた戦いで苦戦などしたくないだろ?」
「そうですね。私もできれば戦いは楽勝したいです」
「ということで、俺は主人公になれないんだよ」
うまくまとめることができた。実際主人公になりたいわけでもないしこれからも楽に戦い、楽に生きていくんだ! こんなことを考えていたら、なんだかスローライフ系の主人公にはなれそうだな。何にせよアスカ以外の人には迷惑をかけないつもりだがな。
「マスター、ワイバーンが最初にいた位置あたりに差し掛かりました。これよりS字旋回を続けながら
「了解。俺も『ミニマップ』を注意しておく」
『スカイ・レイ』はまず大きく左旋回して西に進路をとった。しばらく直進し、今度は右180度旋回して東に。それの繰り返しで、20分ほど飛行を続けていたところ、『ミニマップ』にやや大きめのモンスターを表す赤い点が4つ映った。
「アスカ。見つけたみたいだ」
「確認しました。どうします?」
「飛び上がってこないところを見ると、俺たちにまだ気づいていないか、飛べない理由があるんだろうな。理由はどうあれ請け負った仕事は
『魔石奪取からの収納』!
「よし。4匹とも斃した。降りて営巣地の様子を確認してみよう。
アスカ、近くに着陸できそうか?」
「今の4匹は岩場の上にいたようで、直接岩場に着陸できます」
「それじゃあ、頼む」
「了解」
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