第395話 宇宙船状況確認


 冒険者学校にも顔を出して、こちらも順調だと確認できた。


 いつもなら、ここから高速走行で屋敷に戻るのだが、今日はマーサがいるので『スカイ・レイ』で屋敷まで帰ることにした。


 訓練に邪魔にならない場所に『スカイ・レイ』を出してすぐに乗り込み、屋敷に。



 今日はかなり動き回ったので、帰宅後風呂に直行して、湯舟でしばらくぼーとしてから自屋に戻った。


 風が通るように扉を開けたまま窓を開け、机の後ろの椅子に座って夕食を待っていたら、マーサと一緒に風呂に入っていたらしいラッティーがマーサを連れて俺の部屋に入ってきた。


「ショウタさん、失礼しまーす」


 これは、あれだ。


 目の前で、ラッティーがフーの前までやって来て、例の礼拝を始めてしまった。それを湯上りのマーサが横で見ている。ラッティーの髪はまだ乾いていないようで頭にタオルを巻いていたが、マーサは髪が短いせいかもう乾いているようだ。


 風呂の中で、ラッティーがマーサに何を言ったのか分からないが、ラッティーの動きに合わせてマーサが二礼二拍手一礼をしてしまった。いいのか? 宇宙人を信者にしてしまっていいのか?!


「失礼しましたー」


 そう言って、ラッティーがマーサを連れて部屋を出ていった。


 心配になって、フーの額を確認したら、俺の目には『8』に見える模様が浮き出ていた。ここのところ確認していなかったのだが、ちょっと前は『7』だったはずだ。


 まさか、本当に宇宙人のマーサが信者になってしまったのか?


 ラッティーの甘言かんげんに乗せられマーサが信者になってしまった可能性が高い。


 マーサから見れば、奇跡にも近い幸運で命を取り留めた上、彼女にとって大切な受精卵を何とか四分の一でも生かすことができそうなわけだ。彼女から見れば異星の神であろうと感謝の気持ちを示したくなるということも分かる。


 しかしその気持ちに巧みに付け入るラッティーは、将来とんでもない為政者いせいしゃになりそうだ。ラッティーがいる限りあの国アトレア安泰あんたいだ。



 その日の夕食後。居間でアスカと二人。


「アスカ、マーサの宇宙船のことはどう思う?」


「現状宇宙船を騒ぎにならないように外に出すには、あの島にいって出すしかありません。一番大切なはずの受精卵のコンテナが四基中三基も故障したほどの衝撃を内部で受けていたわけですから、内部はその他にもかなり破損していると思います。推進剤を兼ねた動力用の燃料はおそらく水素でしょうから補給は可能でしょう。また、たった三人で長期間のミッションに送り出されたわけですから、何らかのトラブル対応策が取られていると思います」


「それはそうだよな。修理用のロボットくらいありそうだよな」


「修理用に限らず、汎用性の高い工作ロボット的なものもあるかもしれません。原材料とエネルギーさえあれば自分自身を含めて何でも作ってしまうような」


「もしそんなものがあれば相当すごいな」


「ダンジョンが生れるまでまだ一年あります。じっくり修理して機能を回復させていけばいいと思います。明日にでもマーサに確認してみましょう。それはそうと、マスター、体の調子が悪いとかありませんか?」


「いや、何ともないけど」


「一日、二日では何かの病原菌に感染していても症状は現れないでしょうが、マスター、もし何かしらの症状がある場合は、すぐに『万能薬』を服用してください」


「ありがとう。そうするよ。マーサは他所よその星から来た異星人だからそういった危険がありそうだと気付けるけれど、この世界にとっては勇者たちを含めて俺なんかは異星人と同じだろ? 特にあの勇者なんかは病原菌の塊なようなものだし」


「過去にも勇者は召喚されていたようですが、こうして人類がこの星で何事もなく繁栄はんえいしていますから、召喚ではそういった危険はあまりないのかもしれません」


「勇者召喚したら疫病えきびょう蔓延まんえんして世界が滅びましたじゃマズいじゃ済まないものな」




 アスカとそんな話をした翌朝。


 もちろん俺の体調は万全で、アンドロメダからやって来たような変な宇宙病原体に侵されているということはなさそうだ。




 朝食後、昨夜アスカと話してことについてマーサの意見を聞くことにした。


「マーサたちの定住地は一応提供できる見通しが立ったけれど、宇宙船の方はどうする? かなり内部が傷んでいるんだろ? ある程度修理できるなら修理してしまった方がいいんじゃないか? 別途収納している生きてるコンテナも宇宙船の修理が終わった後にあそこにセットしなければいけないんだろ?」


「はい。コンテナについては、ソルネ4の全機能が回復してからセットした方が無難です。ソルネ4のメインコントロールと動力は生きていましたので、修理プログラムを起動すれば自動で修理可能です。

 その際修理用の原材料や動力用燃料が不足するようなら、そういったものを補給する必要があります。近くの海が私の星の海と同じような組成のものなら、海水からほとんどの必要資源が回収できます」


 マーサの宇宙船は俺の想像以上の能力がある宇宙船だった。


「分かった。そしたら修理にはどのくらいの時間がかかる?」


「はい。修理プログラムの前段階の診断プログラムを走らせなければ正確には分かりませんが、短くても数週間は修理に必要になると思います」


 さすがに、なん週間もあの島に宇宙船を出しっぱなしにしておくわけにはいかないだろうな。



「だいたいのことは分かった。それじゃあ、今日はその診断プログラムというのを走らせて修理期間を確認しよう。近くで人目のないところといったらまたあの小島になるけれど、『スカイ・レイ』に乗っていけばそんなに時間はかからないから問題ないだろ」



 ということで、また、あの小島に『スカイ・レイ』で向かうことになった。





[あとがき]

『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020 の続編

『常闇(とこやみ)の女神 ー目指せ、俺の大神殿!ー』

https://kakuyomu.jp/works/1177354055372628058 よろしくお願いします。

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