第393話 ヤシマダンジョン見学
『百聞は一見に
夕方までには屋敷に戻ると、ハウゼンさんに告げてさっそく『スカイ・レイ』に乗り込み出発した。
20分もかからずヤシマ上空に到着し、
ダンジョン前の冒険者たちの人ごみを
「人が出入りしているこの黒い渦がダンジョンの出入り口。初めて入るときは少し怖いかもしれないけれど、大丈夫だから」
普通は未知のものに入っていくには勇気というよりも
「それでは、マーサ、私たちと並んで中に入りましょう」
三人横並びで、渦から出てくる大きな荷物を背負った冒険者たちを
ダンジョンの外はそれなりに気温が高かったが、一年中同じ気温だか室温、それに適度な湿度のダンジョンの中はある意味過ごしやすい。
「ここがダンジョンの中。光源がないけれどなんとなく明るいのは周囲を囲んでいる岩がわずかに発光してるから。じゃあ、他の連中もさきに進んでいるようだから、俺たちも先に進もう。
アスカ、フィールドのある層は何層だったっけ?」
「5層でした」
「特に注意事項もないし、そのまま人の流れに乗って2層への階段に向かおう」
2層への道すがら、
「5層までだとおそらくモンスターとも出くわさないだろうし、様子見だけだから急ごうか。このまま、他の冒険者にくっ付いて進んでいくと、時間がかかるが、それでも、二時間もかからないだろ?」
「1層から4層の各層は20分はかかりませんから、一時間半程度で5層まで
「あのう、このダンジョンというのは地下何階もある構造物なんですか?」
「今のところ俺たちが確認した最下層が51層かな。まだまだその先も続いているはず。だれがどういう目的でこんなものを作ったのかはわからないけれど、現にこうして存在してるわけだ。そうそう、ダンジョンはなくならない限り大きくなっていくらしい」
「マーサも深く考えても無駄だから、こういうものだと思っておけばいい。ただ、マスターはいろいろあって、このダンジョンを作ることのできるアイテムを1つだけ持っている。マーサのためにそれを使って専用のダンジョンを作ろうと思っているわけだ」
「ここなんかはタダの洞窟だから、さすがにこんな場所では生活はできないと思うだろうけれど、これから行くフィールド型のダンジョンを見れば、考えも少し変わると思う」
話しながら進んでいたら、2層への階段にたどり着いた。そのまま階段を下りて2層へ。
2層、3層、4層、進むにつれて通路を行き来している冒険者の数は減っていったが、どの層も同じような洞窟型ダンジョンだしモンスターも幹線通路付近にはいないのであまり面白いものではない。
4層から5層に続く階段を下りていたら、5層の光が階段を照らして前方がかなり明るくなってきた。
階段を下りきったら、階段の長さからはとても考えられないような、天井の高いドーム型の空洞が広がっている。
マーサも半分口を開けて見上げている。天井の一部が眩しいくらいに輝き、空洞全体を照らしているのだが、まさに謎空間だ。
「ここの広さはいくらくらいだったっけ?」
「今のところ直径10キロですが、わずかずつ広がっているようです」
「これが、フィールド型ダンジョン。足元には草も生えて、灌木もところどころに生えている。ここが地下とは思えないようなまるで別世界。あっ! そよ風まで吹いてる」
「ここまで、ダンジョンが育つにはかなりの時間が必要と思うけれどな。最初のうちは、宇宙船がすっぽり入いればいいだけだし、ダンジョンの促成栽培は可能だろうから心配は要らないと思う」
俺の魔素を新しいコアに注入してやればかなりの速さでダンジョンを拡張できると思う。
「マーサ、どうだい?」
「はい。素晴らしい環境です。ですが、ここではなく、どこかにこういった環境を作るというお話でしたが、そんなことが可能なんですか?」
「ここに来る前に言ったように、少なくとも1年はかかるけれど、逆に言えば1年しかかからない」
「マーサ、マスターはこう見えてできる男なんだ。任せてみないか?」
どうアスカが俺のことを見ているのかは分からないが、俺だってやるときはやるよ。できることしかしないれどな。
「はい。お願いします。こういった環境なら、もともとこの星に住んでいる人たちとの
「まあ、いまは、受精卵を入れても4000人余りしかいないわけだけれど、新しい国を作るようなものだから、妙なところに作ればそれこそ国際問題になるしな。それじゃあ、マーサ、見学はこれくらいでいいか?」
「はい。十分です」
「了解。それじゃあ、少し早いけど、そこらで昼にしようか」
「そうですね」
階段下から少し移動して、地面にいつもの四角い布を敷いて、そこに適当に食べ物を出していく。サンドイッチや串焼きはかなり予備があるのでいつも同じようなものを食べていることになるが、おいしいものはおいしいのであまり気にせず食べている。今回も、サンドイッチと串焼きがメインで、飲み物はピッチャーに入れた冷たいジュースだ。
いくら人が少ないといっても、たまには目の前を冒険者のグループが通りかかるのだが、普段着姿の三人が布を広げた上で寛いで、それなりに豪勢な食事をしている姿を見ると、驚くよりもあきれた顔をされた。
食事を終えて片付けも終わり、三人でダンジョンの出入り口への帰り道。
「アスカ、どのあたりにコア・シードを
「マーサに場所を与えたから後は好きにしろとは言えませんから、継続的な援助が必要となると思います。なるべく王都の近くが望ましいと思います」
「そうだよな。とはいっても、うちの屋敷の中というのはマズそうだしな」
「さすがに王都内にダンジョンを作ることはあとあと面倒そうですね」
「そしたら、冒険者学校の近くかな? コア・シードは使わずに、いっそのこと『鉄のダンジョン』の中にフィールド階層を作ってしまうか?」
「生徒たちの訓練の邪魔にもなりますし、他の一般冒険者も受け入れるようになればいろいろな意味で面倒になりますのでそれはやめましょう」
「そうか、そうだよな。それじゃあどこがいいかな?」
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