第384話 空き地
[まえがき]
まえがきやらあとがきをくっつけた上ですが、今回で100万字達成しました。ここまでやる気をもって続けられたのは皆様のおかげです。ありがとうございます。
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水泳教室もお開きになったので、もう一度バーベキューセット?や調理道具を出して、本格的な昼食をとることにした。
このころになると、みんなの肌がかなり日に焼けて赤くなっている。いまはまだ痛くはないだろうが、風呂に入ったりしたらきっと痛くなると思う。
その時はお薬の世話になってください。
「せっかくだから、スイカ割りとかそういったゲームができればよかったな」
みんなが食事している
「スイカは八百屋かどこかで探せばあったのでしょうね」
「思い付かなかったんだから仕方がなし、屋敷でも食べたことはないからあまりおいしくないのかも知れないな。さて昼からは何をして遊ぼうか?」
「3時くらいには『シャーリン』に乗り込んでいたいですから、それまでにできることになります」
「それだと島の中の空き地を整地して『スカイ・レイ』が発着できるようにしてしまうか?」
「みんなも、マスターがまじめに仕事をしているところをあまり見たことはないでしょうから、それはいいかも知れませんね」
俺は仕事をしているときはいつだって真面目だぞ。ただ、仕事が少ないだけだろ。
「それじゃあ、みんなの食事が終わって少し落ち着いたら行ってみるか」
「はい」
みんなもお腹いっぱいになったようなので、バーべーキューや調理関係の物は収納してしまい、後はジュース類だけテーブルに並べておいた。
ラッティーのお腹の膨らみ具合から言って、だいぶ休憩時間は必要そうだ。今の時間が12時半くらいなので、これから一時間休憩して1時半、作業にとれる時間は一時間ちょっとしか取れなくなる。とはいっても5分も島の森を進めば広場だし、地均しするくらいなら、砂利もあるし砂虫の輪切りもあるので簡単な作業だ。すぐ終わるだろう。なので時間がないというほどではない。
一時間くらい食後の休憩をとれば、ある程度みんなのお腹も落ち着くだろう。
「森の奥に空き地があるようなんだけれど、『スカイ・レイ』が離着陸できるよう整地して整備して来ようと思うんだ。よかったらみんなも作業の様子を見てみるかい?」
休憩中に、みんなにそういったところ、
「見たいです」そうみんなの顔がそう言っていたので、
「ようし、それじゃあ、もう少し休憩してそれから行ってみよう」
森の中には小道のようなものはないので、俺が先頭に立って
本当は俺は一番後ろを歩いて、みんなの後ろ姿を眺めていたかったのだが、アスカが「『なんちゃってエアカッター』の練習にちょうどいいですね」と言うものだから仕方なく先頭を歩いている。
そうやって砂浜の海岸から200メートルほど森を進んだら、森が急に開け、すぐその先には空き地があった。
異変に気づき、急いで最後列から俺の隣にやってきたアスカに、
「アスカ、目の前に見えるあれは何だと思う?」
「普通に考えて、宇宙船? でしょうか?」
SF映画に出てくるような銀色の宇宙船?が目の前の空き地に横たわっていた。
盛り上がった土砂と倒木で前の方が埋まっているので全長はどれくらいあるのかはわからないが、地上に見えている部分の長さは200メートルほどだった。
長さ的には砂虫ほどなのかもしれないが、太さが違う。上下の厚さで20メートルほど、横幅はミニマップで見ると幅のある所では40メートルはあるようだ。
初めのうちはぺちゃくちゃおしゃべりして俺の後をついて来ていた女子たちは、巨大な物体を目にして、一様に固まってしまった。
「やっぱりこいつは空から来たんだよな」
「
強行着陸と不時着の違いはよくわからないが、その結果は目の前にあるわけだ。
宇宙船?に近づくには、土砂と倒木が邪魔だし、その上を歩いて崩れたりしては危険なので、ある程度の幅を持たせて土砂と倒木を収納してやった。
邪魔ものがなくなったので、宇宙船?に近づいていく。
近くでよく見ると宇宙船?の表面は鉄やアルミといったおなじみの金属で作られたものではなく、銀色というよりやや青みを帯びた灰色のなんだかわからない謎金属でできているように見える。
これほどの着陸をしたにもかかわらず、外面には目立った損傷は見受けられない。
明らかにただの宇宙船ではない。
「一通り周りを見回ってどこかに入り口がないか調べてきます」
そういったアスカが、宇宙船の上に飛び乗って、あっちに行ったり、こっちに行ったりしてしばらくして帰ってきた。
「ざっと目には、入り口は確認できませんでした。それに内部からの音も拾えませんでした。完全に停止しているようです」
残念なことに、この宇宙船?の内部は俺のミニマップでは見えないので、中に
これくらいの大きさのものなら余裕で収納してしまうこともできるが、それをやってしまうと中に生物がいた場合、いきなり空中から地面に落っこちるわけで、ファーストコンタクトとしては最悪なシチュエーションとなることは簡単に想像できる。なので、そういった試みはこの宇宙船が無人だと分かるまでは行わないつもりだ。
「今日はこれ以上どうしようもないな。ここは、最初の予定通り整地して、あした『スカイ・レイ』でもう一度ここに来て調査しよう」
「はい」
いったん目の前の宇宙船?のことは忘れて、
「アスカ、『スカイ・レイ』の離着陸には50メートル四方程度を整地しとけば十分だろ?」
「もちろんです」
うちの女子たちは、アレが何なのか分かる者はいないだろうという共通認識を持っているらしく、宇宙船について誰も俺たちに聞いて来る者がいなかった。
「整地作業を今から始めるから、みんなはもう少し離れて見ててくれ」
女子たちに少し離れてもらい、いったん50メートル四方の表土を底が平らになるように剥ぎ取ってやる。深さ20センチほどの窪みが一瞬でできたわけだ。
たったそれだけでも、見ていた連中は、口を開けて何も言わなくなってしまった。俺は重機ではないが、土木作業というのは見ていて飽きないよな。
次は、とっておきのロードローラー、砂虫の輪切りの登場だ。
直径10メートル、厚さ10メートルと言えばそこそこ大きいと感じるかも知れないが、近くで見ればそこそこどころか、怖いぐらいの迫力がある。その輪っかがゴロリゴロリと転がるわけだからまさに迫力満点。とはいえ、後ろの宇宙船に比べれば
輪切りが転がるたびに女子たちがキャアキャア、ワイワイとはやし立てるので、アスカもいい気になって、あっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロと転がしていた。
少しやり過ぎたようで窪みの深さが全般的に30センチから40センチくらいになってしまった。
一度輪切りを仕舞い、まだ収納に残っていた砕石を
そして、アスカがあっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロと転がして一応工事は完了。最終的に20センチほど窪んでしまったので、目の前の宇宙船が着陸時に作ったと思われる入り江の方に簡単に溝を掘っておいた。これで雨が降っても大丈夫だろう。
正味作業時間は10分。思った以上にあっけなく終わってしまった。
「これで一応工事は完了した。そこの妙な
それじゃあ、今日はここまでにして、そろそろ帰ろうか」
女子たちを先頭に海岸の方へ戻って行った。帰りは俺とアスカが一番後ろを歩いた。
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