第383話 海水浴6、水泳教室3
調子に乗って沖に向かって無呼吸で泳いでいたら、危うく
「それでは、なぜか沖の方まで泳いで行っていたマスターも帰って来たことですし、次は
別に行きたくて行ったわけじゃないんだけどね。
「最初はその場で立ったまま前かがみになり、頭を海に浸けて、息をゆっくり鼻から吐きだしながら手だけ先ほどの動きをする。そしてその手の動きに合わせて、顔を横にして口で息を吸う。
それでは、始め!」
立ったまま顔を海に浸けてクロールの手の動きで左手を前に出しながら、右手を引いて、そこで顔を右に向けて息をする。
これを何度も繰り返す。
1、右手を出しながら左手を引く。鼻からゆっくり息を吐いていく。ブクブク。
2、右手を引きなが左手を出して、右手が顔の脇を通ったら顔を右に向けて口から息をする。プファ。
この1、2をしばらく繰り返していたら、ちょっとずつ慣れて来たようだ。これならいけそうな気がしてきた。
手足の動きだけでなくいろいろ意識しなくてはいけないところが増えてきたが、スムーズに体の各部分が動けば泳げるようになるに違いない。要は練習あるのみ。
こうやって、海の中で
「よーし、それでは、実際に泳ぎながら、息継ぎをやってみよう」
前回は沖に向かって泳いで行ったからまずいことになったので、今度は岸から離れないよう横に向かって行こう。
まずは、息継ぎなしでしばらく泳いでいく。
そして、鼻から息を吹き出して、左手を出しながら、右手を引く。
そこだ! プファー。
うまく息継ぎができたと思ったら、バタ足が停まっていた。
体全体に注意しながら、もう少し息継ぎなしで泳いで。
よし、鼻から息を吹き出して、足にも注意。左手を出しながら、右手を引く。
ここだ! プファー。
おおっと、うまくできたぞ。これならどこまでも泳いでいけそうだ。
いい気になって泳いでいたら、横波をかぶって思い切り海水を口に入れてしまった。少しむせてしまったので、立ち上がって休憩。海水は思った以上に
後ろを振り返ると、ずいぶん遠くにみんなが見える。
俺の泳ぐ速さって、実はすごいのかもしれない。アスカに計ってもらおう。さっきまで水が怖いと思っていた俺が、いっぱしのスイマーみたいなことを考えるようになった。エライ進歩だ。
冒険者学校でもペラの教育で生徒たちがメキメキ強くなったし、教育者だかコーチだかわからないが、二人とも大したものだ。
さて、方向転換して、みんなの元に戻るとしよう。
今回は、いっぱしのスイマーのつもりで、カッコよく泳いでやろうじゃないか。
海面を抜き手を切って進んでいく。スピードが出ると不思議なもので、先端の頭の先部分が海水が盛り上がった分、口のあたりの水面が少し下がるようで、そんなに首を回さなくても息を吸えるようだ。新しい発見だ。
「ほとんどの者が泳げるようになったようだから、水泳教室はこの辺で終了しよう。
みんなは岸に上がってしばらく休憩しておいてくれ」
意外とスパルタではなかった水泳教室が終わり、あからさまに四人娘はほっとした顔をしていた。
ただ気になるのは、ほとんどの者ということは、まだいくらかは泳げないものがいるということだろう。誰だかわからないが、元カナヅチの俺からするとかわいそうな気がする。
と、思っていたら、アスカが、
「シャーリー、泳げるようになりたいなら、ここからは私とマンツーマンで特訓だ。どうする?」
シャーリーが泳げなかったのか。
シャーリーの場合、運動神経が特別いいという訳ではないので、仕方ないのかもしれない。
「シャーリー。シャーリーが特訓をするなら、俺も特訓に付き合おう」
「ショウタさんありがとう。
アスカさんよろしくお願いします」
「よく言った。シャーリーの場合、体の動きがぎこちないのでリズムが取れていないのがうまく泳げない一番の要因だと思う。水に対する恐怖心はないようなので、練習して慣れさえすれば、間違いなく泳げる。息継ぎはまだいいから、もう一度無呼吸で泳いでみよう。大切なのは手と足のリズムだ」
シャーリーがアスカの指示に従って泳ぎ始めたので、俺もその横を泳いでいく。水中からシャーリーを見ると、確かに手足のリズムがズレているような気がする。
今泳いでいるクロールは
四拍子と言ったら、タンゴじゃないか? おお、こんなところでダンスの特訓が生かされたわけか。ということは、アスカはこれを見越して俺にタンゴを教えたのか? いやいやそれはまさかないだろう。
一度、シャーリーが立ち上がったところで、
「シャーリー、ダンスでタンゴの練習もしてるだろ? タンゴじゃなくてもいいけれど四拍子のリズムを思い出して手足を動かせばいいかもしれないぞ」
「やってみます」
大きく息を吸い込んだシャーリーがまた泳ぎ始めたので俺もその横を泳ぐ。
もちろん最初からうまくいくわけではないが、しばらく横目で見ていたら、わずかずつ手足の動きが連動してきたようだ。これならもう少し練習すれば何とかなる。
岸に上がって、俺たちの特訓を見ていた連中も、またやって来て、
「シャーリー、頑張って」
「シャーリーさん、良い調子です」
などと、シャーリーを励まし始めた。
あまり長い時間の特訓は逆効果なので、結局15分ほどで特訓は終わったが、最後に、シャーリーが息継ぎの練習で泳いだクロールは、間違いなくクロールだった。
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