第366話 乗りかかった舟
ペラのマフラーをアスカと二人、
「あの二人がこの冒険者学校を開いた伝説の冒険者ショタアスの二人なのか」
「すごいよなー、あの若さでAランクの冒険者。実力的には騎士団総長より上だっていうぜ」
「しかも、大陸一の大錬金術師なんでしょう?」
「そのうえ、
「確かに伝説のショタアスだよな。今日はいいものが見れたから、明日はいいことがありそう」
……
「マスター、そんなにゆっくり歩かないでないでそろそろ駆けて帰りましょう」
せっかく
しかし、今回の二期生は実に有望だ。俺的には一押しの連中だ。
ショウタたちがトンネル方向に消えて行った後の生徒たちの会話。
「でも、ショウタさんて、いくら伝説の冒険者と言っても、見た目がちょっと変よね?」
「それは言えてるかも」
「それに引き換えアスカさんはカッコよかったわねー」
「俺はアスカさんのファンになった」「あら、私のほうが先です!」
「みんな、そろそろ次のセット始めるぞー」
「はい!」
……
知覚または認識できないことがらは本人にとって存在しないことがらなわけで、ショウタは気分よく屋敷に帰って行ったようだ。
慌ただしかったその日も終わり、その翌日。
いつものように、朝食後アスカと一緒に居間で
「ショウタさま、アリシアさまが
あれ? 何のご用なのかは分からないが、皇帝陛下が気安く出歩いていいものなのだろうか?
うちに来ちゃったものは仕方がないので、アスカと二人応接室に急いだ。
俺とアスカが応接室に入ると、
「おはようございます」「おはようございます」
立ち上がったアリシアさんに俺たちよりも先に
「おはようございます」「おはようございます」
さすがのアスカもちゃんと
ソファーに座ってもらい、さっそく皇帝陛下自らうちまでいらした用件を伺った。
「どうしてもショウタさんとアスカさんに頼みたいことがございまして、こうしてご迷惑も顧みず参りました」
いきなり、アリシアさんとハンナさんに深々と頭を下げられてしまった。頼みの内容は聞かなくても想像できる。さて困った。
俺が黙っていたものだから、アリシアさんが、
「気分を害しているのなら申し訳ありません。また出直してきます」
そう言って席を立とうとするものだから、俺も慌てて、
「いえいえ、そんなことは全くありませんから、どうぞ私たちへの頼みとやらをおっしゃってください」
言ってしまった。言ってしまったよ。俺って流されるよなー。これって依頼を聞いてしまうと後戻りできないパターンだよなー。
「そう言っていただきありがとうございます。すでに、お
予想通り、ハムネアのクーデター勢力の首謀者を含む首脳部の排除の依頼だった。排除の具体的方法などは語られなかったが、生死を問わないということだと理解してよいだろう。
「うーん。アデレード王国の私がそういった形でパルゴール帝国の内部に
「『魔界ゲート』問題が片付けば遅かれ早かれ、アデレード王国の軍を借りてパルゴールを解放することはすでに決まっていたことですから問題ないと思います。あとで、リーシュ宰相閣下にも確認しますがおそらく問題はないでしょう」
「なるほど、アスカ、どうだ?」
「クーデター勢力を帝宮から駆逐する際、必ず戦闘が発生しますので帝宮はある程度破壊されてしまいますが、それが容認されるならいたって簡単です」
受け加えてアスカが小声で、
『こんなことなら、アリシア陛下を最初救出した際、帝宮を襲撃しておけばよかったですね』
確かに、アスカはそんなことを言っていたよな。それが本当になってしまう訳か。
どうせここで断ったとしても、また何度でもここに来て依頼されるのだろうし、俺とアスカで動く方が最終的な人命の被害は最小限になるのだろう。
もう一度アスカを見ると、頷いた。乗り掛かった舟だ、引き受けよう。
「分かりました。アスカが先ほども言っていましたが、帝宮にはそれなりの被害が出ると思いますがそこはご容赦ください」
「もちろんです。ありがとうございます」「ありがとうございます」
また深々と頭を下げられた。
「作戦の決行については、アデレード王国とのすり合わせ等を行った上になりますので確定しだいお知らせします」
いつかこんなことになるんだろうとは薄々思っていたんだよなー。
そのあと、細かい打合せのようなことを行い、アリシアさんたちは屋敷を後にした。
「マスター、やってしまいましたね」
「反省はしている」
「反省は不要ですが、マスターにとってつらい戦いになるかもしれませんよ」
「ソニアさんのあの姿を見た時、俺はそういったことに対して吹っ切れたと思う。それに、うちまで襲撃されているがおそらく襲撃犯はクーデター側の手の者だと思う。
「マスターがそういった意味で吹っ切れたのなら、マスターが望めば、この世界全てを手に入れることも
「おそらくその通りだろう。だけどそれで幸せになれる保証などどこにもない以上そんなことをする必要はないだろ?」
「もちろんです。言ってみただけです」
「悪魔のささやきのつもりか?」
「そうかもしれませんね」
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