第363話 セントラル。屋敷に戻って
屋敷の南の原っぱに無事着陸した『スカイ・レイ』だが、着陸してもソニアさんは目覚めなかったので、アスカがお姫さま抱っこして『スカイ・レイ』から出ることになった。いちおう艇内の掃除などをしてもらわなければいけないので『スカイ・レイ』は収納せずにそのままにしておいた。
『スカイ・レイ』から降りると、すぐにハウゼンさんが走り寄って来て、
「ショウタさま。今日の午前2時頃ですが、屋敷に賊が侵入しました。物音が玄関あたりからするものですから、私もすぐに駆け付けたのですが、すでに賊はショウタさまの黒い鎧、フーによって身動きできないよう特殊なテープで縛り上げられ取り押さえられていました」
「フーが、取り押さえた?」
「はい、そのようです。床の上で縛り上げた賊をうえから片足で踏んづけていました」
なんと! フーのヤツ役に立つではないか。
「
「まあ、そんな認識でいいのかな? 何はともあれ誰もケガなどしなかったんですよね?」
「もちろんです」
「それで、賊は特殊なテープで縛られていた?」
「『スカイ・レイ』と同じような砂色のテープでした」
最初にフーの手足を縛った砂虫テープをフーはどこかに持っていたようだ。水につけておかなくては硬くなってしまう砂虫テープがまだ硬くなっていなかったところを見ると俺と同じように時間停止機能付きの収納が使えるのか?
この分だと、フーはうちの守り神に昇格しそうだな。
そのことは、これ以上はおいておき、ハウゼンさんにソニアさんのことを簡単に説明し、風呂と着替えなどの用意をお願いしておいた。
時間的には風呂のお湯は張ってあると思うが、着替えなどを揃えてもらわないといけない。お客さま用の衣服があるかどうかわからないが、ハウゼンさんならどこからか調達するだろう。
アスカは抱き上げたソニアさんをそのまま屋敷まで運ぶつもりだったようだが、まだ臭いも残っているため思い直し、もろもろの用意が整うまでそのまま玄関の前で立っているという。ありがとう、アスカ。
それにしても急激な回復の反動かソニアさんがまだ目を覚まさない。まあ、それはそれで構わないし、どうせ誰かにソニアさんが髪の毛や体を洗う時には手伝わさせなくてはならないだろうから、それまで寝ていてくれてもいいだろう。アスカがこのままソニアさんと一緒に風呂に入ってくれても良いだろうし。
俺は、アスカほどは汚れてはいないが、それでも風呂には入りたいのでしばらくアスカと二人玄関の前で待機していた。
「ショウタさーん、
何だか分からないが血相変えてラッティーが俺のところまで駆けてきた。
「
「フッ。マスター、とうとうきてしまいましたね」
最近、アスカも表情が豊かになり何となく
それとラッティー、いちいちお参りなんかしなくていいんだからな。
そうこうしていたら、風呂の準備が整ったようで、やはりアスカがそのままソニアさんを風呂に入れてくれるようだ。風呂に入ればさすがにソニアさんも目覚めるだろう。
男風呂も入れるようなので、俺も風呂に入ることにした。
男風呂に入ると、隣の女風呂にはアスカとソニアさん、それにヨシュアとヨシュアの助手のマリアが手伝いで入っているようだ。さすがにソニアさんも目が覚めたようでしきりに
俺も風呂に入ってさっぱりしたので、改めて洗いたての普段着に着替え先に自室に戻った。
部屋の隅で突っ立っているフーを見れば、ラッティーの報告通り、額の数字は『7』だった。やっぱり俺なのかなー?
ともあれ、フーがどうやって賊を取り押さえたのかは分からないが、一応お礼は言っておいた方がいいからな。
「フー、ありがとう。これからも頼む。
もう一度、フーの額を確認したけれど、やはり数字は『7』のままだった。
もうすぐ夕食の時間だし、一人くらい夕食の人数が増えても問題ないだろう、というかハウゼンさんがおそらく厨房のゴーメイさんに指示をしてくれていると思う。
しかし、賊は何者だったんだろう? そのうち警備隊から連絡でも来るんだろうか?
まさか、アリシアさんの屋敷で刺客らしき男を捕まえたからその報復か? だとしたら、うちへの襲撃は今回だけとは限らないな。俺とアスカのいないときにフーに頼りきるわけにはいかないし、ここは思案のしどころだ。ペラがいれば問題ないが、今は忙しい最中だろうし。うーん。
やはり困ったときはアスカに相談するしかないな。
椅子に座って思案していたら夕食の準備が整ったようだ。隣りの部屋にアスカも戻ってきているようだからソニアさんも風呂から上がって着替えも終わったことだろう。
食堂に下りて、いつもの席についた。ソニアさんはアスカに伴なわれて食堂に入って来たので、お客さん席として俺の正面に座ってもらい、その分ラッティーが右にずれた形になった。
ソニアさんをよく見るとぼさぼさに伸びていた黒髪も
「ショウタ殿、何度も言うようですが、本当にありがとうございました」
「わかりました。大分元気になられたようで本当に良かったです。ちょっと騒々しいですが、うちのみんなと一緒に食事をしましょう。
みんな、ゆえあってバルゴールからうちにお連れしたソニアさんだ。よろしくな」
ソニアさんが俺の非常に簡単な紹介と一緒に立ち上がってみんなに軽く頭を下げた。
それに合わせて、うちの連中も頭をさげたところで、
「ソニアさんも座って、うちではいつもみんな揃って食事をするんですが、食事の開始の合図として『いただきます』とみんな声をそろえて言ってるんですよ。
それでは、『いただきます』」
「いただきます」
ご
今日の夕食はいつもとあまり変わりばえのないメニューだったが、アスカかだれかが厨房に言ってくれたのか、ソニアさんの前に置かれた皿の上には、肉系統が大量に乗せられていた。むりやり体が再生したソニアさんだから、肉をたくさん食べてもらいたいということだろう。
一応、ソニアさんが落ち着いたら、明日の朝にでも馬車を出して、アリシアさんのところまで連れていかなくてはならないだろうが、そうすると、依頼の荷物のお届け先のソニアさんをアリシアさんにお届けするというわけのわからないことになるわけだが、こればかりは仕方ないよな。あとはアリシアさんたちで何か考えるのだろう。今後どういったことになるのかは俺には見当もつかない。
いずれにせよ、俺とアスカはまたバルゴールに行くことになると思う。
それより、差し迫った問題は、
「アスカ、賊のことはどう思う?」
「やはり、バルゴールのクーデター政府からの刺客だったのではないでしょうか」
「アスカもそう思うんなら、きっとそうなんだろうな。おそらく俺たちはもう一度バルゴールに行くことになると思うけれど、留守中の屋敷が心配だがどうしようか?」
「やはりその間は、ペラを呼び戻しましょう。さいわい、冒険者学校には助手が四名もいますから今の練習メニューからいってペラがいなくても数日程度何とかなるでしょう」
「やっぱりそうだよな」
「心配なのは、四人娘たちでしょうか」
「そうだった。いまフライトのある時には二人が乗合馬車で通っているものな。それも心配だ」
「とはいえ、大通りを走る乗合馬車ですから、賊も襲撃しにくいでしょうし、私の作った護身用の短剣も持っていますから、むざむざ賊に不覚をとるとは思えません」
「あの、対人特化の短剣か。確かに。そこは、仕方ないから目をつぶるしかないか」
一応アスカとの相談はまとまったので俺も安心して食事をすることができた。
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