第297話 ドラゴン実食2

[まえがき]

2020年10月17日

45000♡達成しました。ありがとうございます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ところで、ショウタさま、この肉はいったい何の肉だったんですか?」


 ゴーメイさんもミラも当然のことドラゴンの焼肉など食べたことはなかったようだ。


「なにをかくそう、この肉は」


「この肉は?」


 あんまり、引っ張ても仕方がないので、


「レッドドラゴンの肉です」


「またまたご冗談を」


「冗談じゃなくて、以前、ヤシマダンジョンに行ったときにって来たレッドドラゴンですよ」


「マスター、あれはまだ、屋敷ができる前だったからみんな知らないと思います」


「えっ! アスカさまがそういうんだったら、本当にドラゴン。ドラゴン食べちゃったんですか? 私も、ミラも」


 大きく驚くゴーメイさんとミラ。しかし、この二人、アスカの言うことだと信じるんだ。


 食べたことのないものを食べて心配する気持ちも少しはあるのかもしれないが、俺も食べてもなんともないし、珍しい肉だと思って食べればいいと思うよ。


「ゴーメイさん、夕食の支度したくまでまだ時間ありますか?」


「はい、まだ大丈夫です」


「それじゃあ、アスカ、今度はヒレ肉を焼いてみるか」


「はい」


 ヒレ肉の塊をアスカの前のまな板の上に出してやる。だいたいこれも10キロくらいで比較的・・・小さい塊だ。


 すぐに、ヒレ肉の塊もさくに切り分けられ、一つの柵が二十枚くらいにスライスされ、塩コショウがふりかけられた。


「スライスした手ごたえは、先ほどの肉よりかなり軟らかいようでした」


 アダマンタイトの包丁で切ってしまえば、少々の差異は分からないと思うが、常人じょうじんではないアスカなら少しの差でも気付くことができるのだろう。


「それでは、焼いていきます」


 先ほどのカルビよりもやや赤みが薄いヒレ肉がフライパンの上で焼かれて行く。


 なんだか、こっちのヒレ肉の方がさっきカルビよりも『ジュー』が大きい感じもする。


「あまり焼き過ぎても硬くなりそうですからこのくらいで止めておきます」


 アスカが皿に盛ったヒレ肉を、また四人で試食する。

 


「ウグ? これはかなり柔らかい。これなら、ステーキでもいけそうだ。あっさりしているので、味の深みから言えばさっきのカルビの方が上かもしれない」


 まず俺が、一枚ヒレスライスを食べた感想はこんなところだ。


「そうですね。食べやすさからいえばこちらのヒレ肉でしょうが、やや味が淡泊たんぱくのようです。その辺はソースで何とでもなりますので大丈夫です」


 さすがは料理人、自信のほどがうかがえる発言だ。


「これなら、たくさん食べることができます。厚めに切っても問題なさそうです」


 二人の意見は参考になるな。今日きょうの夕食の献立こんだてはもう決まっているようだから、明日あしたにでも夕食に出してもらうとするか。


「それじゃあ、カルビとヒレをこのまま置いておきますから、明日の夕食にでも出してください」


「了解しました。ステーキを中心に考えてみます」


「よろしくお願いします」


 そういって、アダマンタイトの包丁もゴーメイさんに渡し俺とアスカは厨房ちゅうぼうを後にした。





 そのあと居間でくつろぎながら、アスカといつものように駄弁だべっているのだが、


「マスター、ドラゴンの肉は何か特別な効果を持っているかもしれませんから、鑑定してみてはどうでしょう」


「しまったな、食べる前に鑑定すればよかった」


 妙な効果があるとすればもはや手遅れだが、最悪エリクシールを飲めば元に戻るので何とかなる。どれどれ、まずは肋骨ろっこつあいだから取ったカルビだな。


「レッドドラゴンのバラ肉-A」

レッドドラゴンの肋骨ろっこつの間の肉。

やや硬いが、むことによって独特の風味ふうみと味が出る。

少量食べるだけで、暑さ、寒さに対する強い耐性が一時的(約1日)に得られる。

高カロリーなため、腹持ちはらもちが非常に良い。


 次はヒレ肉


「レッドドラゴンのヒレ肉-A」

レッドドラゴンの大腿骨だいたいこつ骨盤こつばんを繋げている肉。

軟らかい。むことによって独特の風味と味が出る。

少量食べるだけで、暑さ、寒さに対する強い耐性が一時的(約1日)に得られる。

高カロリーなため、腹持ちが非常に良い。


 そして、心臓。


「レッドドラゴンの心臓-A」

レッドドラゴンの心臓。

やや硬い。噛むことによって独特の風味と味が出る。

少量食べるだけで、暑さ、寒さに対する強い耐性が一時的(約1日)に得られる。

少量食べるだけで、体力が一時的(約1日)に上昇する。

乾燥して粉末化したものは、錬金術の素材となる。

高カロリーなため、腹持ちが非常に良い。


 最後は、肝臓。


「レッドドラゴンの肝臓-A」

レッドドラゴンの肝臓。

非常に軟らかい。独特の風味とにがみがある。

少量食べるだけで、暑さ、寒さ、毒に対する強い耐性が一時的(約3日間)に得られる。

少量食べるだけで、体力が一時的(約2日)に上昇する。

乾燥して粉末化したものは、錬金術の素材となる。

非常に・・・高カロリーなため、腹持ちが非常に良い。


 変な効果はないみたいだし、付いている効果も期限付きなので安心だ。ただ、さきほど少量食べただけだが、確かに今は何も食べたくない。かなり腹持ちはいいようだ。今回は肝臓レバーは食べていないが肝臓レバーを食べると丸一日くらい何も食べずに済みそうだ。


 それと、名称の後ろについているAは鮮度のことらしい。Cまでは可食でD以下になると食べられないようだ。これについては、Aは何の意味だろうと考えていたら『A』を鑑定してしまったようでいきなり、ポップアップで説明が出てきた。便利機能だわ。


 ついでに、レッドドラゴンの血も鑑定しとくか。


「レッドドラゴンの血-A」

レッドドラゴンの血液。4立方メートル。

たいていの病気やケガを治す万能薬ばんのうやくの素材となるドラゴンの血。

そのまま飲んでもある程度の効能はあるが、万能薬と比べかなり劣る。


 えーと、さすがはドラゴンといったところか。どうも万能薬は、エリクシールに次ぐ薬と考えてもよさそうだ。ドラゴンの肉をお土産みやげにフレデリカ姉さんか、アルマさんに聞けばレシピは教えてくれるだろうからな。なにかと目立つエリクシールを作るより、作るのが簡単そうな万能薬を量産する方が実用的かもしれない。



 アスカにいまの鑑定結果を聞かせてやったのだが、


「この腹持ちがいいというのは、いいですね。味付けして乾燥肉にしてしまえば、携帯食料けいたいしょくりょうとして最適ではないでしょうか」


「ドラゴンジャーキーか。それはいいな。冒険者の荷物が軽くなるに越したことはないものな。今はドラゴン肉がたくさんあるといっても、売り出してしまえば今の肉程度はあっという間になくなるだろうな」


「とりあえず、冒険者学校の生徒たちにでも無償むしょうで配れば喜ばれると思います」


「それもそうか。なにもいまさらお金儲けする必要もないし、うちでは食べきれないのも確かだしな。商業ギルドで、燻製屋くんせいやさんでも紹介してもらうか?」


「一般的な肉屋でもベーコンは売っていますし、うちの厨房でも作れるようですよ」


「そういえば、さっきもそんなことをミラがいってたな。試しに作ってもらうとするか」


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