第270話 アスカ、昔語り
アスカによると、重い列車が、振動しながらレールの上を走ることで、
その砂虫の輪切りだが、ヤシマダンジョンの手前まで転がしてきたところ、やはり大勢の人が驚いたようだ。一個目の輪切りは、アスカが転がしているうちにへたってきたので、もう一つの輪切りに取り換えてここまでやってきている。この輪切りもそれなりにへたってしまった。一応投げ捨てる訳にもいかないため収納しておいた。へたった分だけ肉が柔らかくなっているはずなので、食用には少しレベルアップしたかもしれない。
レールを
ここまでくる間、街道上には宿場町が二つほどあったが、邪魔にならないように路線のルートが作ってあったようで、少し南寄りに路線が曲がった程度で畑などを横切ることもなく路線を延ばすことができている。
ヤシマの終着地点からアスカがレールをある程度西向き、王都方面に伸ばしたところで、枕木や金物を乗せた台車を収納からレールの上に出してやった。ここからは、俺は資材を台車に
食べながら、
「この世界には月がないのに、
「月の動きと暦は普通連動しているわけでしょうから、そういった疑問は当然です。実は、この世界にも月はあったのです」
「アスカは月を見たことはあるのか?」
「いえ、私は見たことはありません」
「それじゃあ、人づてに聞いたってことか?」
「はい。私が作られる過程で、大きな質量が必要だったため月を
「ええっ! 潰した?」
何だか、アスカがとんでもないことを話し始めた。
「私の機能を十分に
「それって、収納とブラックホールなんじゃないか? しかしすごい話だな」
「亜空間格納庫内にはある程度の物品を収納することはできますが、マスターの収納ほど便利なものではないようです。月の質量については、おそらくマスターのいうブラックホールに
アスカは、すごいとは
「前々から、
「いえ、その方の名前は、ニコラ・ドライゼンという名前で、その当時この世界の半分を
皇帝なのか。どんどん話が大きくなる。
「それじゃあ、エンダーというのは?」
「ドライゼン皇帝は
アスカの生みの親の姓だったわけだ。どおりで、子爵になるとき迷わずエンダーという
「エンダーさんの方の名を取ったと言うことは?」
「はい。私の母のような存在でした」
うん? いまアスカの顔が明らかに変わった。母親のような人のことを思い出して、悲しんでいるのか?
最初は笑い顔が見たかったんだがな。アスカには悪いが悲しそうにしている顔もなかなか新鮮だ。
「マスター、そろそろ作業を再開しましょう」
「そうだな」
アスカが笑うのはどんな時で、今後アスカが泣くのはどんな時なんだろう?
「笑う時はまだわかりませんが、泣くのはマスターが寿命を終え別れる時だと思います」
マスターだと言っても名ばかりなこんな俺でも、アスカは死ぬまで付き合ってくれるらしい。ありがとうアスカ。
[あとがき]
今回のアスカの昔語りは、
『ASUCAの物語』https://kakuyomu.jp/works/1177354054916821848 の設定となります。
なお、第268話 200万PV達成記念SSは、
『法蔵院麗華~無敵のお嬢さま~』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054904992245
第5話 接触、一条佐江 に連動したものになっています。
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