第261話 戦力拡充


 ペラの食事の様子ようすを見たくはあったが、そろそろ冒険者学校からおいとますることにした。ペラが初めての食事で失敗しないかは少し心配だったがアスカが大丈夫だいじょうぶだというのなら大丈夫なのだろう。今度ここに来た時に様子を見よう。これでペラもこの冒険者学校に限らず、みんなとの食事時しょくじどきに別行動をとる必要が無くなってよかったと思う。


 冒険者学校の方は『鉄の迷宮』内での実習が始まるまでは落ち着くだろう。俺もここのところ、働きづめで少々気疲きづかれしたのでここらで少し休養でもしようと思う。



 休養前にすっかり失念していた置時計を商業ギルドで手に入れることができないか聞いてみることにした。時計くらいといっては時計職人さんに怒られるかもしれないが、おそらくアスカに頼めば作ってしまいそうだ。しかし、作る過程を楽しむわけでなくお金で買えるものなら、お金で買った方が安上がりだと思う。


 一応の目安として、置時計一つ大金貨10枚でできれば二つ、出物があれば仕入れてもらうよう商業ギルドに頼んできた。そういったものはそのうち安く出回ることもあるだろうから気長に待っていますとは言っておいた。それでも、リストさんはいつも最大限俺とアスカのために力になってくれているので今回もある種のパワーが発揮はっきされてすぐにそういったものが手に入るかもしれない。


 そろそろ、商業ギルドに対して負債ふさいの方が大きくなってきている気がするので、これまでの恩をなにがしかは返す必要があるな。覚えておこう。


「アスカ、そういうことなんでよろしく」


「了解しました。覚えておきます」


 覚えておいてくれるそうだ。





 その日はそれで終わり、次の日。


 今日は朝から何だか疲れが出てきた感じがする。昨日きのう、生徒たちの前で少しはしゃいでしまったのがいけなかったか? フッ。俺もまだまだ若いな。生徒たちのうち数人は俺より年上だったはずだがな。


「マスター、今日は最近になく暇そうですね」


 アスカにまで言われてしまった。


「そういえば、アスカの方もほとんど冒険者学校がらみで必要そうなものは作ってしまったんだろ?」


「多少はあるかもしれませんが、たいていのものはすぐ作れますから大丈夫でしょう」


「そういえば、『ボルツン・ワン』の2号機、『ボルツン・ツー』がそろそろ完成するけど、これを予定通り運航に使ってしまうと、うちの四人娘の仕事が増えてしまうな」


「最初からそのつもりの四人だったと思っていました。実際、それほど仕事量は多くありませんから問題なく回せるとは思います。病気やけがなどは、ポーションで何とでもなりますから、2号機を稼働かどうさせても問題ないと思います」


「もう二人位パイロットがいた方がいいんじゃないか?」


「『ボルツン・ワン』の3号機については、騎士団の強い要望がありますので、そちらにおろすにしても、パイロット、整備士など騎士団の担当者を一から育てなければいけません。整備士の方はボルツさんの方で対応するとして、パイロットの教育係は私しかできませんので、その教育にこちらの人間も入れて一緒に教育してはどうでしょう」


「それはいいな。三、四カ月の間は、四人娘に頑張ってもらってその後、二機、三チームで回していくか。それでいいな」


「それでは、四人に伝えておきます」


「そろそろ、騎士団の方の教育というか操縦訓練を始めた方がいいんだろうが、こっちも、後二名揃えなくちゃな。四人娘たちは、いまは乗合馬車で飛空艇の発着場まで通っているけど、結構時間もかかるし、王都の西門あたりりに家を借りてしまうのも手かもしれないな」


「ですが、毎日通う訳でもありませんし、そこは今のままでいいんじゃないでしょうか。食事もここなら決まった時間に食べることもできますしお風呂にも毎日入れますから」


「それもそうか。それならあとは、新しく二人用意することだな。となると、またハットン商会かな?」


「それが、一番手っ取り早いと思います。ここの部屋はまだ四人部屋が空いていますし、飛空艇の教育は騎士団からもそれなりの人数を出してくるでしょうから、それが二人増えようが四人増えようが私にとってはさして差はありませんので、この際四人補充しますか?」


「アスカが教育係なんだし、アスカがいいんなら問題ないだろう。食事やその他については四人増えても余裕はあるんだろ?」


「ハウゼンさんに確認はしてみますが、問題ないでしょう」




 アスカがハウゼンさんに確認したところ、うちに四人増えても全く問題ないようだったので、ハットン商会にアスカと向かうことにした。


 俺もしばらくゆっくりしようと思っていたはずなのに、また仕事を始めてしまった。もはや病気なのかもしれない。とはいえ、動き回るくらいではあまり疲れることのない体だし、誰にとやかく言われることもないご身分みぶんなのでそこまで大変ということもないのは事実だ。




 そういう訳でアスカとともにハットン商会を訪れたのだが、今回は、ハットンさんも俺たちの求めるリディアのような孤児奴隷を用意ができなかったようで、アスカと二人やむなく店を後にして、いつものカフェ・レストランで一息入れることにした。


「困ったな」


 アスカは運ばれてきたショートケーキをフォークで器用に切って口に運びながら、


「こういうこともあります」


「どうする?」


「スチュワーデスの雇用の件もありますから、商業ギルドで人を探してもらえばどうでしょう。商業ギルドならすぐに人を見つけることができると思います」


「そうだな。それじゃあ、ここでしばらく休憩したらそっちにまわってみよう」



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