第259話 ペラ改造2
武器屋さんの荷馬車が冒険者学校の玄関前にとまったので、数量を確認して受け取りにサインしておいた。
受け取りの終わった荷馬車の上の荷物を一度に俺が収納してしまったので馬車で荷物を運んできた店の人はかなり驚いていたが、荷下ろしの手間はなくなったので喜んでくれた。代金は商業ギルド経由ですでに支払い済みだ。
受け渡し書類を受け取った武器屋さんの荷馬車はすぐに坂を上って帰って行った。
その間、生徒たちは前を向いてメイスを真面目に振っていたようで、一連の防具類の受け渡しの様子はわからなかったのだろう。
今回、生徒たちに
そうこうしていたら、メイスの訓練は一応終わり、昼食時間になった。
生徒たちが食堂に向かったところで、ペラは自室にいったん帰るようだったが、確かに見ていて少しかわいそうだ。これは気付いてやれなかった俺が悪い。
「ペラ」
「はい、マスター、何でしょう?」
「生徒たちの食事が終わったら玄関前で防具を渡そう。さっき受け取った防具類は玄関前のひさしの下に並べておいてやるから、おまえから生徒一人一人に手渡してやれ」
「はい」
毛布を数枚収納から取り出し、玄関先のひさしの下に敷いて、その上に一人分
その後俺たちは、そろって一階にあるペラの部屋で、適当に時間を潰すことにした。
ペラの部屋は、本来四人部屋のため、かなり広いうえ、二階と違って生徒用のベッドなどないがらんどうの部屋なので、また違った意味でペラが
ちょうど、ベッドも椅子も俺の収納庫の中にあったので、寝具と一緒に一つずつペラの部屋に置いてやることにした。
なんだか気になってしまうと気になり始めてしまうもので、俺もアスカも結局その日の昼は抜くことにした。
「マスター、時間ですので、生徒たちに防具を渡してきます」
「名前がちゃんと書かれているはずだから間違えないようにな」
「はい」
俺とアスカがペラの部屋で待っていると、玄関先で生徒たちの歓声が聞こえてきた。新人冒険者の彼らから見ればそれなりに立派な防具を手にしてはしゃいでいるのだろう。革鎧の胸のペラマークそれなりにカッコいいのは確かだ。
ひとわたり歓声が止んでしばらくして、校舎の中が騒がしくなったようだ。生徒たちが受け取った防具を自分の部屋で身につけにいったのだろう。これから先の訓練では防具付きでの訓練になる。今の季節なら問題ないが、二期生が入学する真夏にでもなればかなりつらい訓練になりそうだ。そのころにはまた何か考える必要があるかもしれない。
ペラが部屋に戻って来て、
「生徒達には、午後は防具を着用して、体になじませるよう指示を出しておきました」
「ご苦労。それじゃあペラ、服を脱いでそこのベッドに
マスターはそこの
さすがに、手術まがいの作業をしている横で串焼きは食べれないぞ。しかも、すでにペラは真っ裸になってベッドに寝てるし。やけに行動が早いな。
俺が横にいて何かの役に立つわけでもなさそうな作業なので、
「それじゃあ、アスカにペラのことは任せるからしっかりやってくれ。俺はしばらく外に出ているから」
「了解しました。おおよそ三時間ほどで作業は完了すると思います」
アスカは、たとえ失敗してもペラなら大丈夫などと口では言っていたが、アスカが仕事を引き受けた以上、失敗することなどありえない。それでも今回の作業に三時間かかるということはアスカにとってもかなりの難かしい作業なのかもしれない。
ペラの部屋を出て、扉を閉めて廊下を玄関に向け歩きだそうとしたところで、ペラの部屋からアスカの声が聞こえてきた。
『ペラ、面倒だから、ちょっと頭を胴体から外すぞ。……、頭だけで口を動かしても、声が出るわけないだろう、……』
本当に大丈夫なのだろうか? 子どもみたいに、おもちゃを分解したけど元に戻らなくなるようなことはないよな。
そのあと、厨房で少し話をした後、玄関を出て生徒たちの様子を遠目に観察することにした。
防具に慣れるため、生徒たちがフル装備で走り回ったり、メイスを振ったりしている。新品の防具がどこかちぐはぐな感じがするのだが、卒業まであと二カ月半。その前にはしっくりくるようになるだろう。
監督者がいなくても、ちゃんと自主練ができるあたり一期生は結構真面目な連中が集まったようだ。そういえば、この連中を最終的に選んだのは冒険者ギルドのギルマス、ギリガンさんだ。やはり、あそこまでになる人だけあって人を見る目がちゃんとしているようだ。
俺について、ギリガンさんがどう思っているかは分からないが、Aランクにもしてもらっているし、悪い印象は持たれてはいないんじゃないかな。
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