第254話 こうなったら機関車作っちゃいますか?
「マスター、機関車の動力として魔導加速器を考えていますので、早めにボルツさんを通じて注文してしまいましょう」
冒険者学校からの帰り道。
機関車の話をしながら駆けている。アスカの考える機関車は、石炭を燃やす
屋敷に帰る前に、ボルツさんの工房に寄って、アスカの指定する魔導加速器を購入してもらうように頼んでおいた。今回はボルツン3号艇用に早めに注文しているものがあるので、それを回しても問題ないということで、納期は一週間で何とかなるだろうということだった。今ボルツさんの工房では、『ボルツR2型2号艇』愛称は『ボルツン・ツー』の建造が最終段階に入っているようで、ボルツさんはじめ
今日はそのくらいで、屋敷に戻って、夕食前に時間がまだだいぶあったのでアスカに機関車の動力部分の説明を受けた。
「基本的には蒸気でピストンを動かしてそれで
なるほど、アスカによると、そういうことなんだそうだ。なるほどなー。
俺としては、材料と魔石を収納から出してやれば機関車がそのうちできるということだけは分かった。
「それでアスカ、材料は何と何が必要なんだ?」
「鋼鉄でほとんどの部品を作ってしまいますので、大型部品はスチール・ゴーレム、小型のものは
「どこで作る?」
「
さっそく、造船建屋にまわり、『シャーリン』用の
その日は、そのあたりでいい時間になったのでレールの脇にアスカの指定していた
夕食前に一番で風呂に入っていたら、隣の女風呂に人が入った気配がした。この時間に自由に風呂に入っているのは俺とアスカしかこの屋敷にはいないので、アスカなのだろう。
「マスター、じきに機関車が完成すると思いますが、この世界もすこしずつマスターの世界のようになっていくんでしょうか?」
「そうだなー、よくは分からないが、この世界の人たちは俺のいた世界の人たちと比べても優しい人間が多いような気がするんだ。大きな戦争だってあんまりないようだし、いま争いごとの基本は『魔界ゲート』がらみなんだろ? 技術の進歩はやっぱり野心のある連中が必死になって努力していかないと新しいものなんかは生まれにくいんじゃないか?」
「それでも、マスターのような召喚された人たちが新しい考え方や知識を少しずつでもこの世界に残していけばこの世界も少しづつ進んでいくんじゃないでしょうか?」
「それはそうだが、俺の場合はアスカがいてくれたからこそだし、他の勇者たちといった連中はそれなりに訓練なんかで忙しいんだろうからなかなか思うようにはいかないと思うぞ」
「マスターはあまり気にしてはいないようですが、『スカイ・レイ』にしても、マスターがボルツさんを援助していなければでき上らなかった物でしょうし、今回もマスターの思い付きから機関車がこの世界に登場します」
「アスカは何がいいたいんだ?」
「私が思うに、マスターは勇者召喚に巻き込まれて召喚されたということですが、実は、この世界そのものに呼ばれたのかもしれないと思いました」
「この世界そのものか。それだと、『魔界ゲート』がどうなっても俺は元の世界に戻れそうもないな。とはいっても、両親にだけは悪いとは思っているが、俺自身この世界に来て以来やっていることに不満は何もないし、このままやっていきたいとも思っているから逆に丁度いいかもな」
「マスター、これからもよろしくお願いします」
「急にどうしたんだか知らないが、俺からもよろしくな」
アスカが良く分からないことを言っていたが、俺がこの世界そのものに呼ばれてやって来たのなら、もしかして俺が主人公? ないな。
翌日は朝の日課を終わらせ一休みしてから、アスカの機関車製作を見学することにした。
車輪は大型のものが左右に一個ずつ、その後ろに小型のものが左右に三個ずつ並んでいた。大型のものはおそらく機関車の動輪になるのだろう。
その動輪の一カ所に外側に向けて円柱形の短いシャフトがくっついていて、反対側の動輪にはその180度の位置に同じシャフトが外側に向けて突き出ていた。ここに前後するピストンから伸びる、先端が輪になった大型のシャフトをはめ込んで動輪を回転させるのだと思う。
鋼鉄製と思われる各車輪も、内側に
俺の記憶だけではここまで作れないだろうから、アスカがいろいろ考えて造ったのだと思う。
台車の脇には、太めのシリンダーが二つと細めのシリンダーは二つ、それぞれ用にピストン。先ほどいっていた、ピストンと動輪を繋ぐ先端が輪になった大型シャフトも二本できていた。
「動力部分は、
知らぬ間に、機関車の大まかな部分はでき上っていたようだ。
[あとがき]
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SF・コメディー、2020年9月4日16:18より投稿開始
『法蔵院麗華~無敵のお嬢さま~』 「宇宙船をもらった男~」の外伝に当たります。
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