第253話 投擲(とうてき)訓練用ポール
まだ屋根の工事は始まっていないが、資材などを運ぶ荷馬車が何台も坂道を下っていた。そのうち工事の人たちもやってきて作業を始めるのだろう。
そこらは工事の人たちに任せておけばいいので、俺たちは、ポールを立てる場所を決めることにした。
露天掘り跡地のすり鉢の底は、奥行き150メートル、幅が50メートルほどあり結構な広さがある。
その中で、
俺たちがやってきたことに気づいたペラが軽く
学校の反対側の三分の一を倉庫やレールも含んだ
いまのところ、メイスを使った訓練や体操などは、冒険者学校の前の広場で十分なので、ポールは10メートル間隔で六組、真ん中の広場の斜面側にくっ付けて縦に並べることにした。
「マスター、20センチ径で深さ1メートルほどの穴を私が指定する場所に空けてください」
アスカが指先を使って器用に直径20センチの円を地面に書いてくれるので、そこを真下に1メートル分収納していく簡単なお仕事だった。
すぐに穴が完成したので、まず柱として十二本、先ほど伐採した針葉樹を出してやった。枝は払っているが、まだ
「樹皮が残っていますと、雨の乾きなどが悪くなり、木が
と、アスカが言っている端から、丸太の樹皮が
すぐに十二本の柱が立ってしまった。生徒たちも見ている前での作業だったので、みんなかなり驚いたと思う。
「それでは、横木を取り付けていきます。横木は先ほどの針葉樹一本で二本作りますから、全部で三本お願いします」
その場に出した針葉樹は、いったん皮をむかれそれが真ん中で縦割りにされたうえ、やや厚めの二枚の板に加工された。樹皮や
それで、これからどうするのかと思ったところ、
「塗料を先に塗ってしまいましょう」
ああ、そうだった。
ここに来る途中に買っておいた黄色い塗料と
「それでは、横木を柱にはめてしまいます」
アスカが髪の毛で切り取ったのだろうが、柱の上の方から
この作業をあと五回続けて作業は終了した。
「今立てたポールの木材は生木なので、一カ月くらいしたら、横木が
一度少し離れて全体のでき上がりを確認したが、確かにダンジョンの幅と高さが再現されていると思う。
今回は全長50メートル分だが、実戦では、30メートルから40メートルは
実物の
まだ練習中にもかかわらず俺を注目していた大勢の生徒たちが、俺の今の石の
ということでもう一投。
エアー野球帽のひさしに軽く手をやり、左手に持った石を右手に持ち換えて大きく振りかぶり、
『青虫が飛んで、青葉にとまった』わけではないので投げた石は消えることもなくそのまま普通に飛んで行った。自分で言うのもなんだが、なかなかの投球フォームと球速だったと思う。投げたのは野球の球ではなくただの石なんだけどね。
ちらっと生徒たちの方を向くと、先ほどペラに注意されていたようで今度は誰も見ていてくれなかったようだ。
「マスター、私
こういうこともある。
ちゃんとよそ見している生徒を
投球ごっこはそれくらいにして、訓練を続けている生徒たちの横で、ペラを呼び、一応ポールの説明をしておいた。そのとき、
「ペラ、ここ
「マスター、生徒たちの訓練については問題がないようですが、基礎的なものが不足しているようです」
「基礎的なものとは?」
「冒険者としてというより、社会人としてこれから暮らしていくうえで、読み書き、足し算、引き算は必要と考えます」
「みんなそんなに読み書きできなくて、計算も
「読むことはできますが、書くことは苦手のようです。数は数えることはできますが、ほとんどの者は足し算ですら二
「なるほど、それは何とかしないといけないな」
「マスター」
「なんだ、アスカ?」
「読み書きについてはヒギンスさんに、算術についてはヨークさんに頼んでみませんか? ヨークさんは昔算術の家庭教師だったそうですし」
「その分給金を増やせば問題ないだろうが、二人が引き受けてくれればいいけどな。
それじゃあ、ペラ、これから二人に頼んでみるから、今は生徒たちを見ていてくれ」
「よろしくお願いします」
その後
そのことをペラに告げて俺たちは、学校を後にした。
[あとがき]
昔、某野球漫画に大リーグボールというものがありまして、つい。
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