第222話 冒険者ギルド


 ペラを連れて王都に戻り、すぐに冒険者ギルドに向かった。


 俺の顔も最近は売れてしまっているので、王都の冒険者ギルドで俺にからんでくるような骨のあるやつはいなくなったようだ。少しつまらない。


 ギルド一階のホール内も人の数はそれほどでもなくすいていた。スミスさんを呼んでもらおうと窓口での方に向かって歩いていると、どこからともなく、スミスさんが現れた。


「スミスです。ショタアスのお二人。あれ? 今日は三人」


「おまけで今日は一人連れてきました。とりあえず、先日の依頼案件については達成しました」


「ええっ! もうですか?」


「はい、何とかなったと思います」


「分かりました。申し訳ありませんが、ギルマスが執務室にいますので、ご一緒願います」


「了解です」



 スミスさんの後について、階段をぼり、その先のギルドマスターの執務室にやって来た。


「ギリガンさん、ショタアスのお二人ともう一人お仲間の方をお連れしました。例の案件片付いたそうです」


『入ってもらってくれ』


 ギルマスのギリガンさんの部屋に入り、勧められるままにソファーに座った。アスカとペラは座らず、俺の後ろに立っている。アスカが俺の左、ペラが俺の右のようだ。


「今日は三人なのかい? それで、そっちの見慣れない子はなんて名だい?」


「ペラといいます。いろいろあって、これからアスカと俺とペラとで行動することもあるかもしれません」


「それじゃあ、ショタアスペラ?」


「そこは、ショタアスでもういいです」


「わかった。それで、今回の任務も早々そうそうに達成したそうだが、どうだった?」


「いちおう、鉱山の調査坑道ちょうさこうどうとその先の空洞に行ってきました。そこには、話にあったように巨大アリがいましたが、大きいだけでモンスターではなく、いたっておとなしいアリでした。人に危害きがいを加えるような感じではありません」


「ふーん。おまえさんたちがそういうんならそうなんだろう。で、それから?」


「はい。そのアリの住んでいる地底の洞くつの中にダンジョンの出入り口ができてしまったようで、アリたちがそこから湧き出てくるモンスターを抑え込もうとしていたところでした。それなりに被害を出しながらもモンスターを抑え込んでいたようですが、かなり苦しい状況だったらしく、われわれに助けを求めてきました」


「なに? アリと話しをしたのか? いや、その前にダンジョン?」


「こちらからは話すことはできませんでしたが、アスカがアリの言葉を何とか理解できたようです。どういうわけか、地下にダンジョンが新しくできたようです。

 それで、アリにダンジョンの出入り口まで案内されて、ダンジョンの中に入りました」


「新しいダンジョンか。うーむ、……。

 しかし、よく見ず知らずのダンジョンに入ったものだな」


「そこは、アスカもいますし、何とかなるだろうと思って」


「おまえさんたちなら、何とかなるんだろうな。それで?」


「いろいろあったんですが、なんとかダンジョンの出入り口を調査坑道の坑口こうぐち近くにまで移動させ、中からモンスターが勝手に外に出て行かないようにしてきました」


 ダンジョンを完全攻略してダンジョンマスターに成ったと正直に言う訳にもいかないので、そこらへんは軽く流しておいた。


「にわかには信じられない話だな」


「誰か人をやって確認してください。それでは、そのダンジョンの中にいたモンスターを一匹ここに出してみましょう」


「この前の砂虫みたいなことはないんだよな?」


「今出そうと思っているのは背丈が2メートルほどのただのゴーレムですからここでも問題ないと思いますが、アイアン・ゴーレムですのでそれなりに重いと思います。ここのゆか大丈夫だいじょうぶですよね?」


「いや、大丈夫じゃないかもしれない。わかったからここには出さないでくれ」


「あと、ダンジョンの中で冒険者の装備のようなものを見つけました。行方不明のパーティーのものかもしれないと思い持って来ました」


「それなら、そこらの床の上に出してくれるか」


「わかりました」


 ダンジョンの宝物庫の中で見つけた決して上等とは言えない冒険者の装備を床の上に排出した。


「うーん。はっきりしたことは私じゃ言えないが、今回遭難そうなんした連中の物のようだな。

 スミス、これを下に運んで、確認をしてきてくれるか?」


 部屋の入り口に待機していたスミスさんがすぐに持てるだけその装備を持って部屋を出て行った。


「今までの話をまとめると、アリの方は人に危害を加えるようなモンスターではない。いやもとよりモンスターではないということと、ダンジョンの入り口が、坑道の坑口近くにできたということだな」


「鉄鉱石の鉱体の採掘は、アリたちを刺激する可能性も高いので控えた方がいいと私は思います。鉄ならば、今回のダンジョンを冒険者に開放すれば、中のモンスターは、鉄鉱石系から、鉄や鋼鉄系のゴーレムばかりですから、かなり鉄不足が解消されるんじゃないですか?」


「Bランクのパーティーが遭難するようなダンジョンだと、おまえさんたち以外で無事にダンジョンから出てくることができるパーティーはうちのギルドにはいないよ。まあ、その件については、私の方から役人の方に伝えておこう。しかし、ダンジョンか。うーん」


「こういうことを言うと、語弊ごへいがあるし、反発も出るんでしょうが、冒険者の全体的なレベルが低すぎるような気がするんですが」


「ショウタの言いたいことはわかるし、正直私もそう思っている。だけれども、生活のかかっている冒険者は無理ができないんだよ。名前だけは冒険者かもしれないが冒険できないのが冒険者なんだ」


「すみません。生意気なまいきなことを言ってしまって」


「いや、何とかしたいと私も思っているんだがな。それはそうと、今回の依頼料は大金貨50枚だそうだ。下で受け取ってもらってもいいし、商業ギルドの口座に振り込むこともできる」


「それは、便利になりましたね。それでしたら、口座の方にお願いします」


「大金貨10枚以上の時だけのサービスだ。世の中すこしずつ進んでいっている中でここだけ取り残されるわけにはいかないからね」


「そういえば、今回のように新しく見つかったダンジョンはどうなるんですか?」


「ここ数十年そんなことがなかったのではっきりとは分からないが、他の国内ダンジョン同様所有者は王国で、冒険者ギルドが管理を任されるのだろう。はっきりしたことは今のところ言えないがダンジョンの発見者にはなにがしかの謝礼しゃれいが国から出ると思うぞ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る