第203話 再度アトレアへ
翌朝、日課のランニングは中止して、早めに朝食を取りアトレアに向かうことにした。ラッティーの荷物は、昨日中にアスカがまとめてくれていたのですでに収納済みだ。
きのうから草地に置きっぱなしにしていた『スカイ・レイ』はきのうのうちにアスカが整備を済ませ魔石も交換している。
俺たち三人が『スカイ・レイ』に乗り込もうとしたら、屋敷の中からうちの連中がぞろぞろと全員出て来て『スカイ・レイ』の横に並んだ。
「ラッティーちゃん、よかったね」「たまにはこっちに遊びに来てね」……
シャーリーがみんなにラッティーのことを話したようだ。やはりちゃんと
「それじゃ、ラッティー。みんなに一言、言ってやれ」
「みなさん、短い間でしたがありがとうございました」
最後の方は
「それじゃあ、行こう」
『スカイ・レイ』での空の旅では、名まえだけの副操縦士の俺は、副操縦士席に座っている必要もないので、ラッティーの座っている座席の後ろに座って、いろいろ話をした。
やはり、アスカの予想通り、アトレアの王さまの
ブレゾで働きながらラッティーの
それと、ラッティーの本当の名前も本人の口から教えてもらった。『リリム・アトレア』、アスカは知っていたようだが、これが、ラッティーの本当の名前なのだそうだ。女の子にラッティーはないと最初は思っていたのだが、言い続けているうちに、やはりラッティーにはラッティーしかないと思っている自分がいたようで、逆に『リリム・アトレア』に
どちらにせよ、俺にとってはラッティーはラッティーだからそれでいいんだ。
出発が早かったおかげで、アトレアの近くに『スカイ・レイ』が着陸したのはちょうど正午だった。昼食は早目に艇内で済ませている。
「それじゃあ、行くか」
三人で、アトレアの門をくぐり街に入った。門では、門衛の人が俺たちを認めて敬礼して来た。とっさに俺も敬礼のマネをしておいた。
少し驚いて、門をくぐると、そこはアトレアの街だ。ラッティーの生まれ故郷なのだが、5歳までしかいなかった街なので、そこまでは感慨はないだろう。珍しそうに街を眺めながら歩くラッティーを連れ、通りをまっすぐ行くとアトレア王の
「ラッティー、いいか」
「はい」
「コダマ子爵閣下、エンダー子爵閣下、陛下をはじめ
「殿下をお連れしました。陛下に会っていただく前に殿下の
「はい、どうぞ、こちらにおいでください」
通された部屋でラッティーが着替えを済ませることになり、俺は隣の続き部屋でラッティーの着替えが終わるのを待っている。
「できました」
アスカがラッティーを連れて俺のいる部屋に来てくれた。アスカに連れられたやや頬を染めたラッティーは殿下と呼ばれるにふさわしい気品を
緑色のベルベット
飾り物はつけていなかったがそれでも、いやそれだけに
「ショウタさん、アスカさん。このご恩は一生かかっても返させていただきます」
「ラッティー。
「ラッティー、おまえがアトレアの王女になって、やがて女王になっても私たちはいつまでも家族だ。家族のあいだには恩や
「はい」
われわれはハンナさんに連れられ、アトレア王の執務室に行った。もちろんそこでは、俺とアスカに対する王さまからの感謝の言葉があった。そしてその後は親子の涙のご対面となった。
俺とアスカはすぐに部屋を後にし、いったん貴賓室に引き上げることになった。
貴賓室の居間で、アスカとお茶をいただいていたら、しばらくして、扉をノックする音が聞こえてきたので、
「開いていますので、どうぞ」
「ショウタさん、アスカさん」
そう言って、ラッティーが部屋に入って来た。ハンナさんが部屋の入り口に控えているのが見えた。
「父とさきほど話をしました。ここアトレアでは教育機関が発達していないため高等教育を受けることができません。父も昔はアデレート王国の付属校からセントラル大学に進んだそうです。私もその道を進みたいと言ったら父は二つ返事で許してくれました。できれば今まで通り、ショウタさんとアスカさんのお屋敷に住まわせていただけませんか? どうかお願いします」
その日は、アトレア王と、ラッティーと俺とアスカ、四人で
「リリムをよろしくお願いします」
「はい、お任せください」
翌日昼過ぎ、俺たちはラッティーを連れ、アトレアを後にした。
「ラッティー、良かったのか? もう数日お父さんと過ごしていても良かったんだぞ」
「大丈夫です。ここに帰ってくればいつでも父に会えますから」
「そうか。そうだな。それじゃあ、『スカイ・レイ』発進!」
「『スカイ・レイ』発進します」
[あとがき]
アトレア編はここまでです。ありがとうございます。
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