第186話 大みそか2、対戦結果


「それじゃあみんな、適当な対戦相手を決めて、試合を始めてくれ」


 みんなわいわい言って対戦相手を決めたようで、そこかしこで、試合が開始された。


シャーリー--〇

       +--×

ラッティー--×  |

          +--〇

ヨシュア---〇  |  |

       +--〇  |

マリア----×     |

             +--優勝

リディア---×     |

       +--〇  |

エカテリーナ-〇  |  |

          +--×

アメリア---〇  |

       +--×

マリナ----×




 結果はごらんの通り。ヨシュア優勝、4人娘の一人エカテリーナが準優勝となった。まあ、順当な結果だろう。どの試合も接戦だったようで、俺のようなパーフェクト負けはなかったようだ。


 俺は、みんなの対戦を後ろから眺めながら、ひそかに仲間が増えるのを待っていたのだが、そこまで実力差がある試合がなかったようで残念だ。われながらセコイ考え方だと思うが、俺一人パーフェクト負けだよ。仲間ソウルフレンドが欲しいと思うのは普通だと思うよ。



「それでは、優勝はヨシュア。優勝者のヨシュアには、これだー! 拍手はくしゅー」


 パチパチ……


 この日のために用意したのは、どうせ、参加者は女子しかいない大会なので、女の子の喜ぶもの限定で考えた結果、洋服のお仕立券したてけんを用意した。例の仕立て屋さんで気に入った服を一そろい、仕立ててもらうことができる券だ。あとで、請求がうちに来るようにしているので、少々値の張る服でも問題ない。


「ヨシュア、この前うちに来た仕立て屋さんの店の仕立券だ。値段を気にせず好きな服を仕立ててくれ」


「ありがとうございます」


 嬉しそうに、両手で仕立券を受け取ったヨシュアがそれを胸に抱いて頭を下げた。


 パチパチ……


「それでは、準優勝のエカテリーナには、これだー! 拍手はくしゅー」


 パチパチ……


 準優勝の賞品は、例のテラスのあるレストランでの食事券だ。4枚組なので四人組の一人のエカテリーナにはちょうどいいかもしれない。


「エカテリーナには、レストランでの食事券4枚だ。四人娘でそろって行ってもいいし、一人でこっそり4回行ってもいいからな」


「うれしいです、もちろん四人で行きます」


「ありがとう、エカテリーナ」。パチパチ……


「そして、3位以下のみんなには、これだー! ヨシュアとエカテリーナにもあるけどな。ようは、参加賞だな」


 テーブルの上に8体の銀色に輝くフィギュアを収納から出してやった。


「すごい」「アスカさんに、そっくり」どよめきとともにそんな声が聞こえて来た。


 アスカフィギュアは、ミスリル製で身長30センチ、例のフード付きコートを着たアスカが、両手に持ったブラックブレードを左右斜め下に構えて、一歩前に出ようとしているところをフィギュア化したものと、『ブラックブレード+3』を両手で持って正眼せいがんに構えたもの2種類各4体ずつだ。しかもこのフィギュア、関節部分は可動式で、ポーズを変えることもできるし、手にしたブラックブレードは、鞘に納めることもできる。まさに大きなお友達も欲しがるようなフィギュアの王道だ。


 このフィギュアは売り物ではないが、全ミスリル製なので金属的価値だけでも先ほどの優勝賞品の数十倍はする代物しろものだと思う。


「ショウタさんの執務室の机の上にあったのと同じだ」


 そう、俺の机の上にはすでに、二種類のアスカフィギュアが各一体ずつ飾られている。


 リバーシ大会の参加賞としてフィギュアを作ってくれるようアスカに頼んだ時、アスカは動物のフィギュアを作ろうと言っていたのだが、俺が無理を言ってアスカフィギュアを2ポーズ各五体つくってもらい、先に二体をいただいて机の上に飾っていたのだ。マスター特権というヤツだ。


 今回の参加賞用とは別に、贈答用ぞうとうようとして何体かのフィギュアを作ってもらった。内輪うちわならアスカフィギュアでいいが、よそに持っていくにはアスカも嫌がりそうだし、問題があるので、受けの良さそうなドラゴン像をポーズ違いで何体か作ってもらった。


 この際だと思って、動物フィギュアもついでに何体か作ってもらい俺の収納庫に収納している。


「そして、最後に特別賞として、ラッティーに、これだー! ラッティーこっちに」


「えっ! わたしに?」


「ラッティーには、……」


 アスカの勧めで、本屋さんから取り寄せた「付属校入試問題集全10巻」を収納からテーブルの上にドンと出してやった。王都の富裕層ふゆうそうや、近隣諸国きんりんしょこくの王族などにけっこう売れている本なのだそうだ。


「……、えええーー!」ラッティー以外のみんながどよめいた。


「明日からの三日間がラッティーが付属校に入学するまでの最後のお休みになるから、心ゆくまで、いのないように過ごすように」


 アスカ教官の力強いお言葉。そのお言葉とは裏腹うらはらに、みんながラッティーを先ほどのアスカとの模範もはん対戦のあとの俺を見ていたような目で見ている。


「アスカさん。ありがとうございます。がんばります!」


 ラッティーが力いっぱいアスカにお礼をいって、力強く『がんばる』と言い切ったのには俺も含めてみんな驚いてしまった。


 ひとり、アスカだけ頷いていた。ラッティーの勉強を見ていただけはある。何でもアスカにはお見通みとおしなのだ。



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