第160話 帰還1、さようならハムネア
「『スカイ・レイ』 発進!」
「『スカイ・レイ』 発進します」
パルゴール帝国の皇女、アリシア殿下と侍女のハンナさんをアデレート王国にお連れする任務を請け負ったアスカと俺は、無事に二人を帝都から救い出すところまで成功した。
今は、二人を飛空艇『スカイ・レイ』乗せて、王都セントラルに帰還の途中である。
「着陸脚収納」
「高度1000。『スカイ・レイ』水平飛行に移ります」
「アスカ、その前に一度、360度旋回してくれるか?」
「はい。マスター。『スカイ・レイ』旋回します」
「アリシア殿下もハンナさんも、窓の外をご覧ください。明かりが広がっているのが、帝都です」
「あれが
先ほどまで
「ショウタ殿、本当にありがとう」
「殿下、お顔をお上げください。礼など不要です。まだアデレート王国まで距離がありますが、この『スカイ・レイ』で10時間ほどで王都セントラルに到着します」
「最低でも2カ月はかかる距離を10時間ですか? 飛空艇とはうわさ以上のものなのですね」
二人がしきりに感心している。俺としても
「旋回終了。速度250まで加速します」
パルゴール帝国の二人はキャノピーに張り付くようにして後方に遠ざかる帝都の明かりを見つめ続けていた。
「アスカ、今何時だ?」
「午後11時ちょうどです。現在、『スカイ・レイ』は時速250キロで東進しています」
ハムネアの明かりも見えなくなり、時刻は午後11時。おそらくあと9時間ほどで王都セントラルに帰り着けるだろう。今回の飛行距離は5000キロ。『スカイ・レイ』の航続距離いっぱいなので、どこかで着陸して魔石を交換した方が良さそうだ。
「お二人とも、夜食を召し上がりますか? 簡単なもので良ければご用意しますが」
「お願いします。食事はいただいていましたが、どうしても緊張で
「サンドイッチですが、できたてですのでおいしいと思います」
「すごく、おいしい。いままでいただいたサンドイッチのなかで一番おいしいんじゃないかしら。それに、本当にできたてよ。ハンナも
「本当です。すごくおいしいです」
「おほめにあずかり
「ショウタ殿の料理人の方がお作りになったのですか? それはうらやましい」
「まだまだありますので、お出ししましょうか?」
「いえ、もう結構です。できたてのサンドイッチだったのはショウタ殿の収納魔法のおかげだったんですね」
「そんな感じです。夜が明けますと、燃料の魔石を交換するため一度着陸しますのでそれまではこちらの毛布をお使いになってお休みください」
「ありがとうございます」
収納庫から新しい毛布を取り出し二人に渡して俺は助手席に戻った。
「アスカも何か食べておくか?」
「いえ、今は結構です。マスターもお休みになってください」
「いや、俺はそんなに疲れていないから、アスカと一緒に起きておくよ」
そうして、星空の下の飛行を続けること7時間。飛行方向の東の空が白み始めた。下の方はまだ暗いが街道が走っているのが見える。
「アスカ、もう少し明るくなったら着陸して魔石を交換してしまおう」
「はい。マスター。15分ほど進んで、そこで着陸します」
『スカイ・レイ』が着陸したのは、街道から少し外れた平らな草地で見晴らしのいい丘の上だった。艇内は暖かいが、朝も早い時間帯なので外はかなり寒いと思う。
アリシア殿下と侍女のハンナさんはやはり疲れていたのか、まだ目覚めていないようだ。このまま寝かせておこう。
アスカは、床のハッチを開けて、ほとんど空になった魔石を各加速器から抜き出していき、俺が手渡した魔石と交換していった。ものの5分で点検も含めて作業は終了してしまった。空になった魔石はシローのおやつにちょうどいいのでちゃんと
「それじゃあ、あと2時間あまり、気を引き締めて行こう」
「はい。マスター」
アリシア殿下と侍女のハンナさんも草地への着陸やその後の作業などの音で目が覚めたようで、
「ショウタ殿、アスカ殿、おはようございます」
「おはようございます。お目覚めでしたらこちらの濡れタオルで、お顔をお拭きください」
そう言って、水を含ませ固く絞ったタオルを二人に手渡した。
「あと2時間少々でセントラルです」
タオルを回収して、
「朝食は昨日と同じサンドイッチですがいかがですか?」
スチュワード気分になりました。
「いえ、昨日夜遅くいただいたものですから、今は結構です」
「殿下、私は殿下をセントラルにお連れするようにとセントラルの冒険者ギルドより依頼を受けているのですが、セントラルではどちらにお連れすればよろしいでしょうか? アデレート王国への亡命ということをうかがっていますので、王宮へお連れすればよろしいですか?」
「はい。そのようにお願いします。できれば、その前に身だしなみを整えたいのですが」
「分かりました。それでしたら、私の屋敷で一度お湯にでも入られ、さっぱりされてから王宮にお連れしましょう」
「お風呂に入れるのですか?」
「はい。温泉という訳ではありませんがいいお湯ですよ」
「これまで体を
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