第126話 ボルツ新工房2


 ボルツさんのところからいったん『ナイツオブダイヤモンド』に戻り、聞いていたフォレスタルさんの事務所に宿屋専属せんぞくのメッセンジャーを送り、明日の朝『ナイツオブダイヤモンド』のエントランスに来てもらうよう言付ことづけた。


 戻って来たメッセンジャーによると、明日の九時に『ナイツオブダイヤモンド』にフォレスタルさんが来てくれるとのことだった。



 翌日、シャーリーを学校に送り出した後、エントランスのソファーに座ってフォレスタルさんを待っていると、じきに箱馬車でフォレスタルさんがやって来た。あいさつもそこそこに、フォレスタルさんの乗って来た箱馬車に乗り込み、行き先を指図さしずしながらボルツさんの屋敷に向かう。


 馬車の中で、建設中の屋敷の進捗しんちょくを聞くと、


 母屋おもやの方は屋根までは出来上がっており、今は外壁工事を行いながらゆかの仕上げを進めているそうだ。厩舎きゅうしゃ関連は既にでき上がっている。完成目途めどは十一月十日を予定しているそうだ。順調そうで何よりである。


 今度依頼する仕事についても馬車の中で簡単に説明することができた。



 普段は半開きのボルツ邸の門を全開にして、箱馬車をボルツさんの敷地の中に入れた。


「ここですね」


 待っていたボルツさんに、建築屋のフォレスタルさんを紹介し、ボルツさんの方から、新しい工房となる建屋たてやの希望をフォレスタルさんがメモっていた。



「お話ですと、ガレージを大きくしたような倉庫っぽい感じの建屋たてやですね。重量物もり上げるとなると、それなりに頑丈な造りが必要ですから土台の方もしっかりしたものが必要となります。

 大体の感じはつかめました。いったん持ち帰って図面を引いてきます。明日の今頃、こちらに図面をもってうかがいますのでよろしくお願いします。午後にでも測量士そくりょうしをこちらにうかがわせますのでそちらもよろしくお願いします」


 そういってフォレスタルさんは乗って来た馬車でさっさと帰ってしまった。 


「ボルツさん、フォレスタルさんに任せておけばきっと大丈夫だいじょうぶと思いますよ」



 その日の午後、四人ほど測量士の人がやって来た。敷地の隅にくいを打ったり、巻き尺で距離を測ったりする人と、その結果を聞いて三脚の付いた板の上に貼った紙の上に図面を書いたりする人で敷地を測量していった。




 次の日、約束通り九時過ぎにフォレスタルさんが図面をもってやって来た。さっそくガレージに置いたテーブルの上に図面を広げてフォレスタルさんが説明を始める。


「これが、新建屋たてやの図面です。概略がいりゃくですが、間口四十メートル。奥行き五十メートルとなります。正門側の塀から、裏の塀まで一杯の奥行きになります。正門側、図面の上側ですが、横開きのスライド式扉となっており、荷馬車などが直接建屋の中に入ることができるようになります。これで大型の物品の搬入が容易になると思います。スライド式の扉の横には、普段、人が出入りするための扉が有ります」


 ここで、いったんフォレスタルさんが話を切り、


「あれがうわさの、飛空艇ですか? いやーすごいものですねー」


 そりゃ目に付くよね。ボルツさんが嬉しそうに笑っている。


「重量物を吊り上げるということなので、柱はかなり太いものを使います。建屋内に露出したはりはどれも十トンの荷重に耐えるよう設計しています。安全率は2で計算していますから、大抵の物は問題なく吊るせると思います。建屋の屋根の中央の一番高い部分で十八メートル。両脇の一番低い部分で十二メートルとしました。


 奥の方から、手前まで、四十メートル×四十メートルの間の屋根はご要望通り、簡単な工事で、折りたたむことができるように設計しています。中間の梁も簡単に移動することが可能です」


 こんなことを昨日二人で打ち合わせてたのか。すごいじゃないか。これで工房から直接空へ飛び立てるぞ。


「先ほどの折りたたみ前提の屋根の下、高さ十メートル位置に、壁に沿って幅五十センチで手すりの付いた回廊かいろうを設けました。これにより、上方から作業状況の確認が簡単にできると思います。従って、主作業場の有効面は三十九メートル×三十九メートルになります。


 外壁は、木板張もくはんばりです。外壁上部には明り取りと通気を兼ねた窓が各所に開いており、手動ですが床からの操作で開閉かいへいできるようになっています。


 こちらが、休憩所です。簡単な台所、食堂、バス、トイレが付属しています。水回りは、現状のガレージにつながっているものを利用します。


 いかがでしょうか? 工期は一カ月ほど見ていただければよろしいかと思います」


「なんや、すごいんが建ちそうやな。使い勝手はよさそうでええ感じやと思うで」


「ボルツさんがいいなら、これで行きましょう。フォレスタルさん、それでは、これで見積みつもってください」


「今回は、あまり変更もないと思いまして、見積りは既に持参じさんしています。総額は大金貨で五十二枚です」


 見積書をアスカが受け取り、ぺらぺらとめくっている。すぐにアスカがうなずいたので、


「それでは、それでお願いします。代金は落成時らくせいじでよろしいですか? 私の方は今でもいいんですが」


「いえ、コダマさまのお屋敷の方の竣工しゅんこうも、一カ月後ですので、その時まとめて商業ギルドの私の口座にお支払いください」


「分かりました。それではよろしくお願いします」


「こちらこそ、それでは失礼します」





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