第122話 ヤシマダンジョン5-49層


「アスカ、今何時だ?」


 使った毛布などを収納しながらアスカに尋ねる。


「午前三時です」


中途半端ちゅうとはんぱな時間だな。三時間ほど先に進んで、それから朝食にしよう」 


「はい。マスター」




 20層のボスをたおしたあと出現した階段を下り21層へ。


 21層は、20層と同じような迷路めいろ状の通路で構成されていたが、上の階層と比べ、通路がかなり広くて天井も高くなった。出てくるモンスターがこれまでより大きくなるのかも知れない。しかも、通路自体も入り組んでこれまでのようにまっすぐ進めばそのうち下り階段に出くわすような造りにはなっていないようだ。ミニマップで見ても、通路に徘徊はいかいするモンスターの数もだいぶ多いようで、罠の数も多い。ヤシマダンジョンもやっとヤル気を出してきたようだ。


 出会うモンスターは、虫系だとこれまでの蜘蛛くも系、ムカデ系に加え、サソリ系が追加された。それにオーガ系が加わる。


 モンスターをたおし、罠を破壊しながら、迷路の中を進んでゆく。


 ミニマップで位置が分かることと、アスカが移動した通路を全て覚えているので、同じ通路を何度も行き来するということがないのはありがたいのだが、なかなか下り階段が見つからない。

 

「アスカ、なかなか階段が見つからないな。何とかできないかな」


「そうですね。頼みの綱はマスターのクエストマーカーですが、ここは、マスターがクエストマーカーさまにお祈りしてみるというのはどうでしょう」


「そもそもクエストマーカーは『さま』づけして、お祈りするようなものなのか?」


「そこは、いわしの頭と同じですよ。信じる者は救われるのです」


 こいつ、変な言葉をよく知ってるよな。俺の知識が元になってるらしいが、それだけなのかなー?


「じゃあ、アスカの言葉を信じて、

 クエストマーカーさま、そろそろお姿をあらわしください。南無阿弥陀仏なむあみだぶつ。アーメン。ソーメン。ヒヤソーメン」


 そういっている間にも、曲がり角から出て来た大蜘蛛おおぐもの処理はきっちり行なっている。慣れたもんだ。


「クエストマーカーさま、南無なむー。アーメン」


 手をこすり合わせながら、何度かお祈りを繰り返していると、アスカの言った通り、視界にクエストマーカーが現れた。これでいいのか?


「アスカの言った通りクエストマーカーさまにお祈りしたら、クエストマーカー出て来たよ!」


「『深淵の迷宮』でマスターが手に入れた『黒の書』へのつながりは、接続者の気持ちで大きく変わるからではないでしょうか」


「そうなのか?」


「さあ。それらしく言ってみただけです。今はクエストマーカーが現れたことを喜びましょう」


 アスカさんの、おっしゃる通りです。



 それからは、道に迷うこともなく、順調に迷路の中を進み、下り階段を見つけることができた。




「この層でずいぶん時間がかかったなあ。今何時だ?」


「午前五時五十分です」


「少し早いが、ここで朝食をろう」


「はい。マスター」




 22層への階段前で朝食を摂り、食後の一休みも終えた。


「アスカ、そろそろ行くか」


「はい。マスター」



 22層から29層はクエストマーカーのおかげで順調に進むことができた。迷路の中なので、歩いた距離は相当なものになっていると思う。1層あたり四キロ程度の距離を歩いた感じだが、立ち止まることなく、途中で出会うモンスターをたおしていき、罠も破壊して行くことで、一般人の駆け足程度の速度を維持することができたと思う。



 ボス部屋のある30層への階段前。


「今の時刻は午後零時三十分です」


「30層のボスをたおしたら、休憩しよう」


「はい。マスター」


 俺たちは、そのまま30層に下りていくことにした。




 30層のボスは、20層のボスモンスター、オーガ・ロードが三匹と、子分にオーガが十匹だったが、面倒なので、出合頭であいがしらに魔石奪取からの収納コンボできれいに片付けてやった。交通事故だと思ってあきらめてくれ。


 出て来た宝箱の中身は、


「大鬼の金棒」

鋼鉄製の金棒。芯材しんざいにミスリルを使用しているため、魔力の通りが良く。打撃力を損なうことなく軽量化されている。

壊れにくい。

スタミナ+50、攻撃力10%アップ


 かなり良い武器だと思うが、俺には不要だな。もらってはおくけど。



 ボスをたおし宝箱の中身を回収して、昼食のあと午後一時まで休憩し、次のボス部屋のある40層を目指して31層への階段を下った。


 31層は、上の層でもあった広い野原のフィールド型ダンジョンだったが、クエストマーカーがある以上、下への階段に直進できる分踏破とうはが楽になった。


 これまで蜘蛛くもやらムカデといった昆虫以外の虫がでてきたが、31層以降では昆虫型のモンスターが出てくるようになった。しかも大量に。


 キリングアント、ヒュージワスプといった単体ではそれほどでもないモンスターがそれこそ山のように押し寄せてくる。ミニマップで見ても、赤い波が押し寄せてくるようだ。一匹の大きさはどちらも五十センチ程度だが、キリングアントだと黒いじゅうたん、ヒュージワスプだと、黒い壁が押し寄せてくるように見える。


 こちらとしては、まとまってやって来てくれる方がやりやすいので、ありがたくコンボで収納させていただく。時折ときおり、黒い波の中に、別のモンスターもいたようだが、区別なく収納してしまった。後で、収納庫の中を確認したら、キラーマンティス、ファングビートルなどが入っていた。



 39層で、40層に降りる階段を見つけたのが午後六時。


 そろそろ、いていくからな。



 40層のボスは、首の先からしっぽの先まで20メートルはある、四つ足、八つ首のヒドラだった。たおすには、全ての首を再生する前に切り落とす必要があるという話だが、そもそも、魔石を持っている以上何の脅威きょういにもなりえず、魔石を抜かれてそのまま俺の収納庫に収納された。


 ここで、出て来た宝箱の中身は、


「ヒドラのメダル」

濃い灰色。ミスリルと鑑定不能の金属の合金製。

LVL4までの毒無効。



 これは役に立ちそうだ。首にかけるよう銀色の鎖までついている。さっそくかけておこう。久々にステータスを確認しておくとしよう。



名前:ショウタ・コダマ 十六歳

LVL:786

職業:収納士 LVL5/5

種族:ヒト族|(チキュウジン)


物理防御力:789

魔法防御力:789


PA    3925/3925(自然回復+2%/一分)


MP    3985/3985

スタミナ  3960/3960(自然回復+2%/一分)


体力    193/193

精神力   200/200     

素早さ   200+13/200     

巧みさ   207+13/207     


運     163


スキル:収納LVL10/5、走行LVL2/5(1UP)

称号:スキル限界突破者とっぱしゃ、深淵の迷宮踏破者とうはしゃ、第1の深淵の迷宮ダンジョンマスター

加護:収納神の加護かご

特殊:「第1の黒の書」接続済、LVL4までの呪い無効、LVL4までの毒無効


 走行レベルが1上がったのと、あとは今装備したメダルのおかげで毒無効が付いただけだった。



 いったん午後七時まで四十分ほど小休止。


「アスカ。ここまで来たら、一気に行くぞ!」


「はい、マスター」


 41層から49層は、また迷路型ダンジョンで、上の層よりもさらに通路が広く高くなった。出てくるモンスターはバジリスク、三つ首ヒドラ、カメレオンバイパー、ファイヤーリザードといった爬虫類はちゅうるい型モンスターと、超巨大化した蜘蛛くも型とムカデ型モンスター。出会うはしから、さっくり倒してとうとう50層への階段を見つけた。




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