第121話 ヤシマダンジョン4-20層
20層に下りる階段の前で、少し
「20層のボスを
「はい。マスター」
20層のボス部屋も10層のそれと同じような石造りの部屋で、ここもやや暗い。部屋の真ん中にいるのは、かなりガタイのいいモンスターだ。
片手に
「ここは俺がやってみるから、危なそうならフォローしてくれ」
「はい。マスター」
収納から『神撃の八角棒』を取り出し、構えながら前に出る。前にいるのはオーガのようだ。右手で持った鉈を、ぶらりとたらし俺の方に近寄ってくる。確認のために『鑑定』
『オーガ・ロード』
レベル4相当。
物理防御力:30
魔法防御力:5
PA 65/65
MP 0/0
スタミナ 300/300
体力 180+20/180
精神力 20/20
素早さ 40/40
巧みさ 20+15/20
装備:
「
鋼鉄製の大鉈。
刃こぼれしにくい。
攻撃力が若干上昇する。
巧みさ+5。
「大鬼の
ダンジョン巨大蜘蛛の糸で織った布製の鉢巻き。
体力+10
「大鬼の
鑑定不能の布でできた黒色の胴着。
上下一揃いで、体力+10、巧みさ+10。
見た目通りの物理特化だな。
顔はまさに鬼の
八角棒を両手で構え、やや腰を落とし、すり足で間合いを詰める。こいつ、絶対に俺を
オーガは自分の間合いに入った俺を見て、鉈を振り上げようとしたが、ちゃんと八角棒を構えていた俺の方が
「それ!」
うまく命中。
ゴキ!
素早さ重視の軽い一撃だったが、今の一撃でオーガの手首が折れたようだ。
「ガガガガー!」
いまさら
「ほれ!」
八角棒で軽く足を払ってやったら、オーガがひっくり返った。こいつ、弱すぎないか? これで20層のボス?
これでは訓練になりそうにないし、八角棒で止めを刺したら汚れそうなので、結局いつものように魔石を引っこ抜いて収納してやった。
「マスター、お見事です」
「そうかー? 相手が弱すぎただけじゃないか」
「今のオーガはレベル4相当の『オーガ・ロード』でした」
「そうだったな」
「レベル4のモンスター討伐には、通常Aランクの冒険者のパーティーが必要と言われています。マスターが収納を使わなくても、Aランクの冒険者のパーティー程度には強くなっているということです」
そんなにか? うーん。逆に言うとAランク冒険者の価値が暴落したんじゃないか? 俺とアスカのAランクも何だか
「マスター。ボスのいたところに宝箱があるようです。今度の箱は前回より
「今度は少しは期待に応えてくれよ」『鑑定』
『
金と銀の合金、エレクトラム製。
形状:使用者に合わせサイズが変わる。
速さ-5 巧みさ-5。
特殊:攻撃力が大幅上昇
知能が大幅低下
こいつは、半分呪いのアイテムだな。でも、もらっとこ。
『収納』
そのうちあの
「アスカ、何時になった?」
「午後八時十分です」
「それじゃあ、ここらで夕食にして、一休みしよう」
いつものように、ダンジョンの床の上に例の四角い布を敷き、食べ物と飲み物を並べて置く。ダンジョン内は薄暗いので、魔道具のランタンも一緒に出しておいた。
「はい、アスカ」
並べ終ったので、ナイフとフォークをアスカに渡し食べ始める。
「マスター、ありがとうございます」
ナイフとフォーク受け取ったアスカも食べ始める。まだ湯気の立っている料理はまさに収納さまさまだ。
「13層で冒険者を見た後、全然冒険者に出会わないもんな。このまま50層までこんな感じなのかな?」
「十数年間、最深攻略階層が49層から伸びていないのもそのせいなんでしょうね」
「13層で出会ったあの連中でも、ここだと上位の冒険者なのかもな。俺の場合、レベルとステータスが人の何十倍も高いから何とも言えないけど、アスカに鍛えてもらえば、たいていの人間は、さっきの連中より強くなれるんじゃないか? それもすごく短い時間で」
「そうかもしれません。新しくできる屋敷が完成したら、武術学校でも開いてみますか?」
「それは面白そうだな。ある程度人を集めて、Bランク相当くらいまで鍛えてやったらすごそうだ。それを何パーティーか作ってクランを立ち上げる。良いんじゃないか。パーティー別に、統一した色のシルクハットと仮面を着けるのはどうだ? クランリーダー、
「マスター。そういうのも、マスターの世界では中二病って言うんですよね」
「はい。そろそろ食べた物を片付けるよ」
後片付けをして、俺は毛布を数枚出して横になる。
「六時間くらいしたら起こしてくれ。
例のごとく、アスカに
悪の軍団バッカーに対する正義のカラードシルクハット軍団、いいねー。 クラン名は、クラン・マスカレードだよな。グフフフフ。……
「マスター、時間です。よほど良い夢を見ていたようですね。寝ながらニヤニヤ笑うのは
「……。 それで俺が寝てる間、何もなかったか?」
「はい、今のところリポップもなく変化はありませんでした」
「そうか。俺たちがいると、目の前でリポップすることになるから、モンスターとしてもやりにくいんじゃないか? モンスターもリポップ中に攻撃されたらかなわんからな。それだと、トイレでしゃがんでるとき攻撃されるようなもんだからな」
「……」
変なたとえだったかな? アスカさん返事してくれよ。
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