第106話 追い詰める
アスカによって切り裂かれた
「すみませーん。門を開けてくださーい。すみませーん。この屋敷に
門の前で大声を上げてやった。そうしていると道行く人が何事かと振り向くし、中には立ち止まって俺たちの方を見てる人もいる。
ガタゴト音がして門の脇の
「門前で騒がれては困りますので、お引き取り願えませんか。仰るような
おお、これは、セバスチャンさんではないでしょうか。
「私、先日子爵位を
相手が貴族であると知りセバスチャンが幾分ひるむかに見えたがさにあらず。そうそう
「確かに頭を私のように坊主にした女がこのお屋敷に逃げ込むのを見たんですが。門を開けて通してくださいませんか?」
「そのような女は一度も見ておりません。いくら子爵さまでも当ボルマン
それは脅しですか?
「そうですか、おかしいな? そういえばその女、坊主頭の上の方は丸く剃った上に、残した髪で『
さらに、ポケットに入れていた女の目だし帽を取り出してセバスチャンに見せる。
「これはその女がかぶっていた目だし帽なんですけど、ほらここのところにマークがついているでしょ。これは、お宅の侯爵家の
目だし帽の何もないところを指さしセバスチャンに見せる。さすがのセバスチャンもこれにはぎょっとしたみたいで
「ほら、あそこに見えるお屋敷の三階の
三階の隅の部屋に女がいることはミニマップで見えているが、別に女が顔を出してこっちを見ているわけではない。セバスチャンが後ろを振り向いた。そのすきに目だし帽をポケットにしまう。
ここからが面白いところだ。アスカと二人で強引に通用口を目指す。それを押しとどめようとするセバスチャン。ほかに使用人が何人か出てきて様子を見ているがセバスチャンに
良い判断だ。俺とアスカならいつでも簡単に押し通れるのだが、そこはほら、セバスチャンにも立場があるだろうから、少しは押し返されたりしながら結局、通用口を潜り抜け、なおも押しとどめようとするセバスチャンを引き連れて玄関の方に歩いて行った。
「ところで、その女というのは仲間と
ご存じでしょう? 私たちは、リリアナ殿下と親しくさせていただいてますからね。それと、あなたはわれわれをただの
そういって二人で冒険者カードをセバスチャンに見せてやった。
さすがに、これは
「それでは、こちらのボルマン侯爵家のご
玄関前でセバスチャンと大きな声で押し
「最近子爵になられたというお二方が、当家の玄関口で女を
このおっさんいい顔してるよ。
「私がこの
「それで、われわれがお宅にお
「はて、三階のあのあたりに人はおらんよ。もしそちらがおっしゃるようにその女がいるのなら、お渡ししますが、いなければどうします?」
おうおう、このおっさんすごむねー。
俺は、収納からエリクシールを一本取り出す。
「もし、
白く光を放つポーション瓶を見せ、近くの
「しかし、もしお宅に女がいた場合はいかがされますか? このお屋敷を中身ごと私が貰ってもいいですよね? それでどうです?」
「わかった、それでは三階を勝手に
「断っておきますが、女の特徴は坊主頭でその上の方は丸く剃って、残した髪で『×』印のついた一風変わった女ですからね。連れて来た女が違う女だと
「それもわかった。それでは、中に入って調べてもらおうか」
おっさんが道を空ける。
「それには及びません。少しお屋敷が傷みますがどうせ私の物になるならいいでしょう? アスカ、頼む」
そういうと、アスカが、玄関の横の建物の土台らしき部分を斜め下にぶち抜き、上がる
それを見たおっさんは顔を引きつらせている。
しばらく待っていると、先ほどあけた穴から、女を担いだアスカが現れた。
担いだ女の坊主頭にはちゃんと『×』印がある。
「どうです? いましたね。『×』印の女」
エリクシールを
「ぐぬぬ! そんな女はわしは知らん。勝手に地下室に隠れていたんだ」
「そうであれ何であれ、賭けは私の勝ちですよね?」
「なにを言う! 女が三階にいるかどうかの賭けだったじゃないか」
「いえいえ、私は一言もそんなことは言ってませんよ。言ったのは、
ミニマップを見ると、家の中にはあと二十人ほどいるのが分かる。どうせ屋敷ごと収納などできはしないと思って出てこないんだろうな。
「何をいうかとおもえば、家を持って行くだと?」
「そうですよ。先日、商業ギルドの倉庫一棟分の資材を
それを聞いた、セバスチャンが慌てて屋敷に向かい外に出てくるように
「あと三分待ちますから急いでください」
二分経ったころ、玄関から大勢の人が出て来た。体つきから言ってこの中には俺達を襲った
「全員出て来たようですね。それじゃ
『収納!』
屋敷が土台と地下室を残して消えてしまった。
「地下室と馬小屋は残しときましたから」
これで、このおっさんも俺たちにちょっかい出さなくなるだろう。
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