第76話 式のあと
「ショウタ・コダマ子爵
やべー。とうとう閣下になっちまったよ。子爵ではピンとこなかったが、閣下と言われると不思議なものですごく偉くなった気がする。
案内の人に連れられ、もう一度最初の控室に戻ると、さきほど式を仕切っていた人が待っていた。
「こちらが、本日の
それと、お二人とも子爵になられたわけですが、別段義務などはございません。おっと忘れていました、住んでおられる場所をお近くの
また、お二人各々の子爵家に対し年金として一年あたり大金貨二百枚が国庫より支払われます。ですので、商業ギルドに口座をお作りになることをお勧めします」
要するに俺は一生楽できるってわけ? 情けは人のためならず。実感したわ。
「それと、リリアナ殿下がどうしてもお二人にお会いしたいと
減るもんじゃないからいいよ。もう、
そういえば、あの美少女のマリア殿下はいなかったけどどうしたんだろう。
「アスカ、さっきの式にこの国の第二王女がいなかったようだけど、どうしたのかな?」
「あのような公式行事には、王位継承権第一位の者しか出られないようです。しかも、第二王女は勇者その他を連れて、北方諸王国に挨拶回りに
ホント、アスカは何でも知ってるな。
「何でもは知りません。知っていることだけです。これでよろしいですか」お見通しだった。
その後すぐに、式を仕切っていた人が言っていた土地係のおじさんが部屋にやって来た。
控室のテーブルの上に広げられた王都の地図には、太線で囲んだ区画と、それが赤く塗りつぶされた区画が載っていて、塗りつぶされていない個所から選んでくれと言われた。
普通の人は王宮になるべく近い場所を選ぶそうだが、俺はアスカの分も含めて、港に近くヒギンスさんの息子さんの店にも近い区画がちょうど二区画並んで空いていたので、そこを選ばせてもらった。二区画分だからかなり広い。一区画一辺五十メートルほどの正方形が基本のようで、アスカの土地と二つ並べて、五十メートル×百メートルのだだっ広い土地だ。
これで、俺の拠点が出来る。勝手に俺一人で決めてしまっているが、横を見たらアスカもうなずいていた。何にせよ、アスカの物は俺の物だから全くの
リリアナ殿下に呼ばれるまでそのまま控室で待機することになったので、侍女の人にお茶を貰いくつろぐことにした。すぐにトイレに行きたくなったので、侍女の人にトイレへ案内してもらう。
考えたら、アスカに聞いても良かったのかも知れない。まあ、勝手に王宮の中を二人でうろつくのもなんなので、それでよかったのだろう。当然のようにアスカもトイレに付いて来て、入り口の前で待機しているし、侍女の人も部屋に俺が迷わず帰るのを心配してか一緒に待機してくれていた。
エンダー子爵閣下が、そんなところで突っ立ってると、変に注目されますよ。アスカ本人は気にも留めないんだろうけどね。
すっきりして手を洗い、待ってくれていた二人に礼を言って控室に向かっていると、見覚えのある人が前から歩いて来た。知らない振りもできないので、一応
「マーロン先生、お久しぶりです」
召喚された時、座学で魔術を教えてくれた先生だ。今から考えると、収納の仕方もアドバイスしてくれた恩人みたいな人だ。
「はて、貴殿は誰であったかな?」
「テンペラ宮で、先生に魔術を教わった、ショウタです。ショウタ・コダマです」
「おお、勇者さま方と一緒に召喚されたコダマ殿でしたか。見違えましたぞ。何でも、私が王都に戻っている間に、キルンダンジョンで行方不明になられたという
「ええ、一度は行方不明になって
「そうですなあ。あの勇者さま方とは大抵の人が合いませんから。特にあの勇者さまは私も苦手でしたから、仕方なかったのやもしれませんな。われわれも反省いたします。
いま、マリア殿下は勇者さまたちを連れて、北方諸王国の方へ訪問の旅に出ていらっしゃるので、帰られたら私の方からコダマ殿が無事であったとお伝えしましょう。お優しい殿下ですから、貴殿の無事をお喜びなさると思います」
「よろしくお願いします」そういって先生と別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます