第51話 突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀
防具屋を追い出されたアスカと俺は、『さて、どうするか?』と考えながら歩いていた。歩いている俺たちを見るのがそんなに珍しいのか? こっちをじろじろ見るな!
「マスター、防具はあきらめて、武器を何か
「武器なら『盗賊のダガー』を持ってるぞ」
「でも、あれは、私から見ても強そうな武器には見えませんが」
「そうだな、俺から見てもそうだもの」
「もう少し、大きくて見た目の派手なものがいいんじゃないですか?」
「そうだなー」
「例えば、
「大剣はなー、何か嫌な思い出があるんだよなー。個人的に」
「それでしたら、メイスなんかはどうですか?」
「メイスは、何か
「それでは、杖はどうですか? 『突かば槍、
「あのな、『何でもできる』は、『何にもできない』なんだぞ」
「それでしたら、私がマスターを
「アスカに言われると、何かそんな気もしてきたな。アスカは何でもできるけど、
「何でもはできません。現に私は杖術なるものを知りません」
「えー! それじゃあ、どうやって俺に教えるんだよ」
「教えるとは一言も言ってません。
「何だよそれー」
「どのような闘いでも、状況による最適な動きというものがあるのですが、私はその最適な動きに
さらりと『体に教える』って言っちゃたよ。アスカ、こえーよ。
それでもアスカに言いくるめられた俺は武器に杖を選んだ。収納庫の中にちょうどよさげな棒があったので取り出して鑑定してみたところ、
『
アーティファクト
形状:長さ百八十センチ、神木から削り出された八角棒
不壊、巧みさ+50、腕力向上、(
破砕:十分なステータスの者が振るうと、対象を破砕する。
ドラゴン召喚しそうなすごいのあったよ。
持ってみると、見た目ほど重くはないがとにかくゴツイ。色はこげ茶で、光沢がある。俺のステータスでそこそこ重みを感じるくらいだから普通の人では振り回せないくらいの重みがあるかもしれない。
アスカにうながされ、わが家の裏庭に行く。井戸もあって、結構狭いがここでいいのか?
「マスターはその棒で、思いっきり私に攻撃してください。私はこの丸で囲んだ内側から出ませんし素手で対応しますから安心してください」
アスカが指を伸ばして描いた丸は結構狭くて直径二メートルくらい。
だけどアスカの素手なんて凶器の塊じゃん。絶対に俺に攻撃しないことを約束してくれないと訓練しないぞ!
「問題ありません」
間違ってアスカが攻撃して来たら、俺はどのみち
「トリャー! トウ! ヤアー! フンッ!」
丸の内側で器用に立ち回るアスカに向かい、俺は八角棒を振り回す。八角棒の巧みさ+50と腕力向上ブーストで、何とか形になってる?
「マスター、そこで止まらず、引いた勢いで右から左へ
「地面にそのまま八角棒を打ち付け、その勢いで切り上げる。飛び散った土くれは気にしない。それから左。右!」
「腰は上げない。そう、すり足で、
……。
「
俺が円の中に踏み込んだ右足を引こうとしたところ、巧みに左足を添えられ、転んでしまった。これで何べん転がされた?
あれ、台所の窓からシャーリーの顔が見える。シャーリーが俺たちを見てるよ。どうすりゃいいの。俺の
「アスカ、ちょっと休憩。フー、フー、……」
あのスピードで走ってもなんともなかったのに、八角棒を振り回すだけでずいぶん疲れた。アスカに全く当てることができず、ことごとく空振りしてしまう。その分、体が泳ぎ、体勢を整えるため普段使わない筋肉を使っているのが地味に
しかもそういう時は必ず転がされる。八角棒をいったん収納し、草の上に
汗はそんなにかいてなかったが、礼を言ってありがたく受け取る。さすがシャーリーええ子や。
一通り、乱取りっぽい訓練の後で、アスカ先生から
「まず、腰が高いです。次に
おっしゃる通りなんでしょうが、シャーリーもいるのに
「今までのところで、悪いところが分かりましたので、次は
ええー、まだ続けるの?
結局、昼食で休憩を取っただけで夕方まで特訓が続いてしまった。
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