第38話 ドラゴン戦
翌朝、空が白み始める前に俺はテントから起きだした。
「アスカ、おはよう。
「おはようございます。マスター」
たき火に使った丸石は
「よーし。行くぞ」
「はい。マスター」
三時間ほど街道を南に下ると、クエストマーカーが視界の左の端にきた。そろそろ左折した方が良いだろう。
「アスカ、ここから森に入ろう」
森の中は
森の中を進むこと二時間。森が途切れて河が見えて来た。思った以上に街道から河が近かった。
河幅がずいぶんあるので、多分この河がユリア河なのだろう。目の前の河と、その先を流れる川が、すぐそこで合流している。フレデリカ姉さんの言っていた場所に間違いない。クエストマーカーは、目の前の河を渡った先をさしている。ミニマップで見ると、やや大きめの赤い丸が一つ。だいたいあのあたりと見当をつけて河の先の林を見たが、ドラゴンは
「まいったな。あっちへ渡れないぞ」
「目的のドラゴンは、すでにわれわれに気付いているはずです。少し
「それじゃあ、高速弾でも何発か打ち込んでみるか。ドラゴンならそれぐらいじゃなんともないだろ?」
「そうですね」
「それじゃあ、行っくぞー」
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ……。
とりあえず十発。適当に河向こうのそれらしいところにばらまいてやった。
それと同時に、羽ばたきながら、黒くて縦長の塊が浮き上がって来た。見上げるその姿は、鼻の先から、しっぽの先まで五十メートルではきかないだろう。
でかい! これがドラゴンか。そいつが
バグウォーーーン!!!
「声だけ大きいただのブラックドラゴンのようですね。上位種かどうかは今のところ分かりませんが。かなり高いとこまで上がってますから、とりあえず、手を振っておきましょう。こちらを見つければ多分下りてくるでしょうから」
アスカさん、何もそこまでしなくても。
ブラックドラゴンがこっちに向かって下りてきたよ。
『おい! 貴様たちか?
ドラゴンがバリトンで喋ったように感じたがこれがあの念話ってやつか?
アスカが小声で俺に、
[マスター、ここは私があのドラゴンの相手をしましょう]
俺も小声で、
[任せた]
「そうだ。われわれがここにきたというのに
『なぜ、
ドラゴンは、大きな目玉をぎょろりと動かし、ゆっくり翼を羽ばたかせながらわれわれを見下ろしている。
「お前には、われわれの力が感じられないのか? お前の目の前にいるのは、マキナドールとそれを従えるマスターだぞ。おまえこそまさに図体のでかいだけの羽虫だな」
[マスター、やはり、最上位ドラゴンならば知っているはずのマキナドールの名をあのドラゴンは知らないようです。大きさだけ最上位の、ただのドラゴンのようです。最上位のドラゴンなら、いずれ役に立つこともあるかと思ったのですが]
『なにを。
[体だけは大きいので、肉は大味かもしれませんが、それ以外の素材は大量に取れると思います、この程度のドラゴンなら、素材取りに殺してしまっても問題ないでしょう。マスターが魔石を取って殺しますか? それとも、私が首を落としましょうか?]
[そうだな。何か、大仰な喋り方が逆に哀れだな。俺からも聞きたいことが有るから少し話してみる]
「おーい、ドラゴン、30年くらい前に、このあたりにあったエルフの村を知ってるか?」
『ドラゴンではない。我の名は、黒龍ソーンダイク。この名を聞いて恐れ
「偉そうな名前ということだけは分かった。それじゃあソーンダイク、どうなんだ?」
『そういったものがあったかも知れんな。この近くでお前たちによく似た羽虫をたわむれに殺した覚えがある。泣きわめいてうるさかたから手足をむしったら、すぐ死んでしまう。
遊ぶにはもろすぎたから、四、五匹で、すぐに飽きたぞ。残った羽虫と一緒にまとめてブレスであぶってやったわ。これは、火加減を調節すると少し楽しめたな。
お前たちはもう少し楽しませてくれよ。どうだ、少し怖くなったか? フッ、ファッファッファ!』
「そして、河を通る船もお前が襲ったんだな」
『その通り。貴様らの言う船とかには、光る宝物があるからな。五つ六つ沈めたら、やって来なくなったな。我は暇になったので、お前たちに起こされるまで寝ておったのだ』
「わかった。ソーンダイク、何か言い
『言い遺すこととは何だ?』
「お前が死ぬ前に言う
魔石奪取アンド収納。しかしこいつの魔石、やけにでかいな。
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