第30話 日常回


 袋詰ふくろづめしたゴブリンの耳もあれだけあるとグロさ満点だったが討伐報酬はそこそこだったし、ゴブリンジェネラルの死骸は結構高く売れた。


 その二つでも、かなりの金額になったのだが、ギルドマスターの言ってたゴブリン集落討伐報酬の半分というのが大金貨二十枚もあった。ほくほくである。


 シャーリー達が心配だし、早いとこきょてんに帰えろう。



「「ただいま」」


「お帰りなさいませ、ご主人さま、アスカさん」


「ヒギンスさんはもう帰っちゃったかな?」


「買いそろえたものを片付け終わったので、先ほど帰られました」


「そうか。一緒に食事でもと思ったが。シャーリー、俺は着替えてくるから、お前もちょっといい服を着て来なさい。アスカもな」


「はい。ご主人さま」「はい。マスター」


 今日も、大金を稼げたので、晩飯はいつぞやのレストランに行って見よう。



 レストランでは今日も個室に通された。コース料理を三人前。シャーリーには多いかもしれないが、育ち盛りだから問題ないだろう。


「わー。ご主人さま、こんな立派な店に私が入ってもよろしいんでしょうか?」


「シャーリー、気にするな。お金さえあれば、だれでもお客さんなんだ。まあ、ドレスコードとかケチ臭いことを言う店もあるらしいがな。少なくとも清潔で見苦しくない格好してれば文句ないだろう」


「わたしには、よくわかりませんが、うれしいです」


「そうだな。シャーリーは読み書きができるから、勉強をもっとさせてやりたいな。シャーリーはどんなことに興味がある?」


「料理のお勉強を始めたところですので、今は一生懸命いっしょうけんめい料理を覚えていきたいと思います」


「シャーリーはえらいな。アスカは何か興味があることがあるか?」


「私は、この世界を見て回りたいと思っています。今まで、長い間一カ所にいて、この街以外の今の外の世界をあまり見たことが有りませんから」


「そうだな。俺もここしか知らないしな。落ち着いたら旅に出るのもいいな。俺たちには直接関係ないけど、怖いもの見たさで『魔界ゲート』を見に行ってみるのもいいかもな」


「そのようなものがあるのですか? 面白そうですね」


「ああ。二年後にそのゲートが開いて、そこから魔族ってのが押し寄せてくるんだと」


「ご主人さま、魔族というのは何なんですか?」


「俺もよくは知らんが、何でもすごく強い魔物の一種で、頭も人並みかそれ以上に良くて、言葉も話すそうだ」


「マスター、それでしたら魔族というのはドラゴンの上位種に似ていますね」


「ドラゴンの上位種ってのはしゃべれるのか?」


「はい。その通りです。魔法も使えるようです」


「ドラゴンすごいな」


「深淵の迷宮にもいますよ。ドラゴンの上位種くらいになると、相手の強さが分かるので、従順で扱い易くていいんですが、それ以下だとすぐに身の程も知らず戦いを挑んでくるので、鬱陶うっとうしいというか、変なところで死なれると死体の片づけが面倒というか」


 アスカさん、シャーリーが怯えるからそれくらいで。


「ドラゴンの肉ってうまいのかな?」


 俺の方が怯えさせちゃったよ。


「私は食べたことがありませんので何とも言えませんが。マスターが気になるなら、今度ドラゴンをりに行って見ますか? マスターはおびき寄せ用にエサをお持ちですから簡単に釣れますよ。マスターのエサは生きがいいですから」


 山菜採さんさいとりに行くんじゃないんだから。はないだろう。


「あのう、ご主人さまもアスカさんも、冒険者だったんですか?」


「いまも冒険者してるよ。そういえば俺たちはさっきCランクになったんだ」


「おめでとうございます。それで、Cランクの冒険者というとどのくらい強いんですか?」


「Cランクか。そういえば、前に俺とアスカに絡んできた連中もCランクだったな。そう考えると、大したことないか」


「そうなんですか? でもドラゴンなんかも簡単に倒せそうなことをお話しされてたので」


「ああ、アスカならドラゴンぐらい楽勝だと思うぞ。俺でも、おそらくな」


「……」


 シャーリーが目を見開いて、俺とアスカを見比べている。


 ふっふっふ。シャーリーよ、ご主人さまをうやまうがよい。




 シャーリー相手に鼻を高くして悦に入るショウタであった。



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