第29話 呼び出し


 一方こちらは、ショウタのきょてん



 俺とアスカでお茶を飲みながらヒギンスさんとシャーリーが帰ってくるのを待っていると、


「マスター、表に誰か来たようです」


「二人が戻って来たか?」


「いえ、ヒギンスさんたちではないようです」


「誰だろうな?」


『ごめんください。ショウタさんのお宅でしょうか? ショウタさんいらっしゃいませんか?』


「はーい。ショウタは私ですが、どちらさまでしょうか?」


 どこかで聞いたことのある声がしたので、ドアを開けると、冒険者ギルドの受付嬢うけつけじょうが立っていた。


「冒険者ギルドのジェーンです。良かった。ショウタさんがいてくれて。アスカさんもいらっしゃるようですね」


「どうかしました?」


「うちのギルドマスターがショウタさんとアスカさんをお呼びです。至急、冒険者ギルドにお越し願いたいのですが?」


「俺たちに用ですか? 何かギルドマスターに呼ばれるようなことがありましたっけ?」


「詳しいことは、私では何とも」


「いま、家の者を買い物にやっているんで、少し待っていただけますか。もうすぐ戻ってくるでしょうから」


 まてよ、書置かきおきしとけばいいか。鍵はシャーリーは持ってるし。あっ、そういえば、うちには書く物が何もなかったな。


「それでしたら、私がここでその人が戻るまで待って、ショウタさんたちが冒険者ギルドに行っていると伝えます。ショウタさんたちは先にギルドの方へ行ってもらえますか? 着きましたら、ジェーンは遅れて帰りますと伝えておいてください。お願いします」


「分かりました。ヒギンスさんというお手伝いさんとシャーリーという女の子が戻ってきますので、お願いします。

 それじゃ、アスカ、急いでいくか」


 急ぎなら、駆け足で冒険者ギルドに行くか。今日は良く走る。




 冒険者ギルドまでやって来て、受付のカウンターで受付嬢に声をかけた。


「えーと、ショウタとアスカといいますが、ジェーンさんていうギルドの人に言われて来たんですけど。それと、ジェーンさんは今うちで留守番るすばんしてもらってるんで、遅れて帰るそうです」


「しばらくお待ちください。ショウタさんとアスカさん」


 しばらく待っていると、バタバタと上の方から女性が階段を下りてきた。


「お二人が、ショウタさんとアスカさんですね。お待ちしておりました。さっそくですが、ギルドマスターの部屋までご案内します。申し遅れましたが、私は当冒険者ギルドのギルドマスターのギリガンの秘書をしておりますローザと申します。こちらにどうぞ」


 ローザさんについて、階段を三階まで上がる。階段の上がった先の廊下の先がギルドマスターの部屋だった。


「ギリガンさん、ショウタさんとアスカさんがみえました」


「ようやく来たか。すぐに入ってくれ。ローザはゴランを呼んできてくれ、休憩室きゅうけいしつにいるはずだ。あと、茶を頼む」


 部屋に入ると、まさにいわおのような巨人がこっちを向いてソファーに腰かけていた。声もでかいし、顔も怖い。


 やはり、ギルドマスターは只者ただものではないようだ。


 以前の俺なら、ビビってたろうけど、アスカの付いてる俺には怖いものはない。


「ショウタとアスカだな、まあ、そこに座ってくれ、いまゴランも来るからちょっと待っててくれ。ゴランは知ってんだろ?」


 俺はうなずいて、ソファーに座り、アスカはいつものように俺の後ろに立って控えている。


 待っていると、いきなりみぞおちのあたりが、引っ張られるような嫌な感じがした。このじじい、勝手に俺のことステータス鑑定したな。


 おっさんがちょっと、驚いたような顔をしてこっちを見てる。


「こりゃまいったぜ、俺の鑑定じゃステータスが見えなかった。お前ら、いったいなにもんだ」


 そこは、勝手にステータス鑑定したことをびろよ。まあ、勝手にするぐらいだから詫びるわけないか。


何者なにものと言われましても、Eランク冒険者のショウタとアスカです。ショタアスと縮めてもらっても結構です」


 ボケをかまして、腹立たしい気持ちを落ち着かせる。以前絡んできた連中に対してしたように、暗黒面に落っこちて、になっちゃいけない。ついでに深呼吸、フッフッヒー。



「ゴランさんをお連れしました。お茶は少々お待ちください」


「ゴランは、そっちの空いた椅子に座ってくれ」


「そんじゃ、そこのゴランが、お前たち二人組が駆け足しながらジェネラルまでいるゴブリンの集落を殲滅せんめつして、しかもゴブリンどもの小屋も吹き飛ばしたって言うんだが、本当なのか?」


 長い文章、よくまずに一息で言えました。


「その通りです」


「どうやってやったんだ? ゴブリンどもが勝手に消えていったっていうのも本当か?」


「勝手に消えたんじゃなくて、このが消したんですけどね。なんなら、ここに証拠を出しますか?」


「証拠があるんなら見せてくれ」


「ほんとに出してもいいんですね。全部出しちゃいますよ?」


「全部?」


「全部でゴブリン120匹にジェネラル2匹」


「そんなのどこにあるんだ? アイテムバッグにゃそんだけの量は入らんだろう。それともそんなにすごい国宝級のアイテムバッグを持ってるのか?」


 俺は、返事をせず、


「まず、ジェネラル2匹」


 空いてた床の上に、出してやった。


 まだ、できたてのほやほやだから、さっき切り取った耳の付け根から血が垂れて来た。臭いもきつい。


「うぉっ! 分かった、わかったから、ここに出すのはやめてくれ」


「出せと言われたから出したんですけどね」


「疑ってすまなかった。こいつら、確かにジェネラルだ できたら仕舞しまってくれないか? 臭くてかなわん」


 俺も臭かったんで黙って収納する。


「で、どうやってゴブリンどもをたおしたんだ?」


「それは秘密です!! ところで、ゴブリンジェネラルだと、死骸は買い取ってもらえるんですか?」


「ああ。ジェネラルは結構需要のある素材になる。俺じゃ値段は分かんねーけどな。それと、ゴラン、お前を疑ってすまん。依頼は完了だ。下で達成報酬を受け取ってけ」


「そんじゃ、俺はこれで」


 ゴランさんがほっとしたような顔で部屋を出ていこうとする。そこに、お茶を入れたお盆を持ったローザさんが帰って来た。


「あら、ゴランさんお茶を飲んでいったらどうですか?」


「いや、俺はこれで帰らせてもらうわ。じゃあな」


「そうですか? あれ? 何ですか、この嫌な臭いは?」


 鼻をひくつかせるローザさん。


「何でもない。あとで、誰かにき掃除させておいてくれ。

それと、ショウタとアスカ、さっきも聞いたが、お前ら何なんだ?」


「ですから、Eランク冒険者パーティーのショタアスです」


「わかったからもう行ってくれ。 

 ローザ、ゴブリンの集落討伐用に用意した金があったろう。こいつらに半分やってくれ。それと、ショタアスの二人は今日からCランクだ。手続き頼む。

 おーい、ショタアス。受け取りで金を受けとってけよ。それと一般窓口で新しい冒険者証をもらってけ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る