第21話 ポーション作成


 錬金道具を購入し、薬草も大量に手に入れて、拠点いえに帰って来た。


 夕食までにはまだ時間があるので、さっそく作業台の上に錬金道具の入った箱を取り出し、


「アスカ、これ使いやすいように並べてくれるかい」


「はい。マスター」


 てきぱきと並べられてゆく道具たち。一応どれが何かは俺でもわかるけど、アスカさんの手つきはまさに本職ほんしょく


「終わりました」


「じゃあ、さっそくだけど、一番簡単そうなスタミナポーションから作ってみるか。材料の薬草は何だっけかな?」


「スタミナポーションの材料は純水と黄躁草きそうそうです」


「そう、純水と黄躁草きそうそうだ」


 俺は、黄躁草きそうそうを収納庫から一本取り出して、作業台の上に置く。


「水は台所のたる汲み置くみおきがありますから取ってきます」


 アスカはそういって、台所から発泡スチロールの箱を持つように軽々と樽を持ってきた。俺のステータスでもまねできるかもしれないが、しないぞ。


 樽の水をビーカーですくい、蒸留器にゆっくりと注ぐ。


「水はこのぐらいですか。次に、コンロに点火し水を蒸留します。

 その間に、先ほどの黄躁草を薬研やげんで細かくすりつぶします。

 ……、すりつぶしてできた青汁を、こちらの布製の濾器こしきします。この際、液がされて自然落下するのを待ちます。これは、黄躁草きそうそうの繊維には、効能を阻害そがいする成分が入っているためと言われています。濾器こしきで使った布は、廃棄します」


 どこの料理番組だ。アスカが説明を交えながら、手際よく作業を進めていく。


 蒸留器も沸騰し始めて、少しずつ蒸留水がビーカーに溜まり始めた。


「蒸留水がこれくらいできたら、いったんこの蒸留水でビーカーと攪拌かくはん棒を洗浄します」


 そういってビーカーをくるくる回してから、水を攪拌かくはん棒にかけ、用意した空桶からおけに捨てる。


 その洗浄したビーカーを蒸留器の受け口に置き、蒸留水が溜まるのを待って、蒸留器の中の水が少し残ったところでコンロを切り、蒸留器を自然冷却させる。


「蒸留水の入ったビーカーを錬金板の上に置き、濾過ろかした青汁をゆっくり入れながら攪拌かくはん棒で混ぜていきます」


 攪拌かくはん棒を使いゆっくり混ぜる。


攪拌かくはん速度が一定になるように注意します」


「だいたい、攪拌かくはんを一分ほど続けますと、混合液にわずかに粘り気が出てきます。……、そして液の色もこのように薄黄色になります。完成です。スタミナポーションが出来ました」


 どれどれ、鑑定してみるか。受け取ったビーカーを手に持ち、


「スタミナポーション、ランク3相当」


 ビーカーいっぱいで五百ccくらいだから、これだと、四百ccくらい。ポーション瓶は五十ccだから八本分が出来たようだ。


 サービスでもらった空のポーション瓶を一本取り出し、ビーカーからポーションを注いで栓をする。製品版では、栓を蝋で固めるようだ。残りはふたつき瓶に入れ収納しておいた。


「スタミナポーション、ランク3相当 一本、 スタミナ25回復」


 売ってるのはランク3で回復量が20だったはず。それより回復量が多いよ。


「すごいなアスカ、もういっぱしの錬金術師だ」


「器具が良かったことと、黄躁草きそうそうの鮮度が高かったことで、高い効能のポーションができたのではないでしょうか」


「そうなのか。謙遜けんそんする必要はないんだぞ」


 俺はアスカがポーションを作る間、黄躁草を一本収納庫から取り出して、でき上がりを鑑定しただけだ。


 俺がそんなことを言っている間、アスカは器具を洗って、片付けていた。


 今回かかった時間は、正味三十分。これだとちょっと効率が悪いな。


 一番時間がかかったのは、蒸留水を作るところだった。他は五分くらいだろう。何かいい方法がないかな。


 どこかに、蒸留水を作る魔道具を売ってればいいんだがな。それと、青汁の方は、濾過方法を工夫すれば、ある程度まとまった量で作っておけそうだ。


 後の問題点は、攪拌かくはん方法か。中学の時、理科室にマグネットを使った溶液の撹拌機があったよな。何かそれらしい魔道具売ってないかな。もしそれがあればミキサーも出来るな。薬研やげんなんかですりつぶすより速いんじゃないか?


 くるくる回るもの、くるくる回るもの、何かないか?


「アスカ今日はご苦労さん。今日の夕飯は外で食べよう。ところでアスカ、何か食べたいものはあるか?」


「はい。昨日いただいたケーキをもう一度いただきたいと思います」


 女の子してるなー。


「あのケーキはないかもしれないが、デザートでケーキがあれば頼んでみようか」


「はい。お願いします」


 それなら、行くのは、そこらの食堂でなくレストランだな。


「アスカ、デザートを出すようなレストランを知ってるか?」


「はい。ご案内します」


 愚問ぐもんでした。



 今着ている服は、ポーション作りの前にいったん着替えたもので、今回の作業では汚れてないようだから、着替えなくてもいいだろう。


 向かった先は、庶民しょみんでも利用可能なレストランで、二人お願いしますというと、案内されたのは個室で、天井に照明の魔道具を使っているらしいシャンデリアがあった。


 料理はコース料理。テンペラ宮にいた時の方が高級な料理だったのかもしれないが、今回食べた方がおいしく感じた。


 デザートは、驚くべきことに昨日のケーキと紅茶だった。どうも、昨日の喫茶店きっさてんは、このレストランの系列で、デザートをここにおろしているらしい。


 さすが、アスカさん。サスアス。


 値段は、二人で小金貨二枚でした。庶民でも利用可能なレストランの庶民とは、貴族ではない超富裕層ふゆうそうの人のことでした。



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