第17話 錬金術


 思わぬ失敗もあったが、四十枚もの大金貨をゲットした。日本円にして、おおよそ四千万円。これで一生……、は無理か。



 日銭ひぜにを稼ぐため、錬金術師に俺はなる!


 ということで、やって来ました図書館! 今回の情報源は、なんと宿屋のおばちゃんではなく、商業ギルドの受付のお姉さんでした。


 キルンの街は結構な大都市で、王都から派遣された代官だいかんが治めているそうな。代官の名は覚えられなかったが、なんでも貴族で、伯爵位はくしゃくいの人らしい。いや、らしいではなく伯爵です。この迷宮都市、金回りもいいらしく、普通の地方都市にはないような立派な図書館があるそうだ。それに大学なんかもあるらしい。というか、この図書館はその大学の経営で、図書館の裏手が大学につながっているそうだ。


 外から見るとかなり立派な建物の図書館に入ると、カウンターの中に何人かの司書ししょの人がいる。


「すみません。図書館の利用方法を教えてください」


 この『すみません』よく考えたらいかにも日本人だよな。なにも始まってはいないから済まないのだろうか? そうじゃなくて、ご迷惑をかけるので『すみません』と先に謝るのだろう。


「図書館を利用するには、一人当たり、一日、銀貨一枚の利用料と保証料が小金貨ではなく、金貨で一枚必要となります。保証料は問題がなければ退館時に全額お返しします。一階と二階の書架しょかに出してある本は自由に閲覧えつらん可能です。また、一階と二階に無い書籍でも、奥の書庫にある可能性もありますので、読みたい本の名前などが分かればお持ちします」


 いかん。小銭がほとんどない。申し訳ないけど、ここは大金貨で払うしかないな。両替にもなるし良いだろ。


が、これでお願いします」


 また『すみません』と言ってしまった。大金貨でも特に問題なく、おつりを受け取った。今度は目立たないよう、ポケット中にジャラジャラと入れておいた。


「あのう、読みたい本は具体的にはないんですが、錬金術について書かれた本を見たいんですけど」


「そうですか。それでしたらA-3からA-5までの棚にある本が錬金術関連の本になります。そこの角を右に曲がってすぐのところです」


 どこに何があるのか覚えてるのか、やはりプロは違うな。


 言われた本棚を見つけて、表紙を眺める。「錬金術」、「錬金術の初歩」、「ポーション作成」、「金属錬成れんせい」、…… いっぱいあるよ。


 とりあえず、目的の「ポーション作成」を手に取ってみた。アスカには、「錬金術の初歩」と「錬金術」を渡す。それにしても司書以外の人がいないんじゃないか? この図書館の経営大丈夫なのか?


 四人掛けの机にアスカと二人並んで、本を読み始める。


「ポーション作成」は黒表紙の非常に大きな本で、色付きの挿絵も入ってかなり読みやすい本だった。何の紙でできているのかわからないが、それなりに厚い紙でできており、字も大きく、ページ数はそんなに多くはない。が、情報量はそれなりに多い。しまった、メモ帳がないや。


 アスカの方を向くと、すでに「錬金術の初歩」と「錬金術」は読み終わったらしく、じっとして座っている。アスカが隣でページをめくるスピードが尋常じんじょうじゃなかったからな。どこの速読だよ。


「アスカ、読み終わったならこの「ポーション作成」も読んどいてくれるか? ちなみに、アスカは今読んだ本の内容分ったかい?」


「どちらの本も問題なく理解しましたし、内容は全て記憶しています。ただ、私には魔力が無いので、中級以上の錬金術の実践じっせんはできないようです」


 そうですか。今の俺にはよく分からない返事だった。


「「ポーション作成」を読み終えたら、適当に他の錬金術関連の本を読んでおいてくれ。俺は「錬金術の初歩」を読んでるから」


 俺の方は、適当に流し読んでおけば良いのか? 必要なことは必要な時にアスカに聞こう。


 俺が「錬金術の初歩」を何とか読み終えるころには、アスカはすでに十冊以上読み終えていたらしい。


 そろそろいい時間か。


「アスカ、今何時だ?」


「午後二時三十分です」


 結構時間が経っていた。ここらで宿屋に帰るか。昼飯がまだだから、途中の屋台で何か買って立ち食いで済ませるか。


 司書の人に言って、保証金を返してもらい、図書館を出る。ミニマップがあるので道は迷わない。迷ったとしても、高性能のアスカさんのこと、きっと道は覚えてるだろう。


 途中の屋台でホットドッグみたいなのがあったので、二つ買い、一つをアスカに渡す。カラシが欲しいところだったが、まあまあの味。この国にもソーセージがあったんだな。パンも熱々だったせいか、それなりに柔らかかった。いや硬くはなかった。そのうち大人買いして、収納庫に入れておけば温かいまま食べれるしね。


 順番は前後したが、次はポーションの市場調査だ。たしか冒険者ギルドの食堂兼酒場の横に売店があったはずだ。あそこならポーションを売ってるだろう。レッツ・ゴー!





 ポーションもいろいろあるな。


 ここはくだんの冒険者ギルドの売店。いろいろな消耗品しょうもうひんを扱っているらしい。主な商品はやはりポーションみたいで、売り場の四分の三がポーションだ。実際、そのほかの商品は、たいていの人はよそで買っているらしい。


「PAポーション、 ランク1」がかなりの数が棚に並んでいる。主力商品なのだろう。


「PAポーション、 ランク2」は数本。


 ランク3は仕入れてないのか存在しないのかはわからない。


「PAポーション、 ランク1」一本、 銀貨一枚。


「PAポーション、 ランク2」一本、 銀貨五枚。



 一本手に取っていったん収納して鑑定してみると、「PAポーション、 ランク1」で、PAが10ほど回復するらしい。万引まんびきにならないようすぐに棚に戻しておく。


「PAポーション、 ランク2」でPAが15回復。


 ここらにいる冒険者のPAは多くても、40くらいだから、ランク1を数本持ってればいいのか?


「スタミナポーション、 ランク1」一本、大銅貨二枚。 スタミナを10回復

「スタミナポーション、 ランク2」一本、大銅貨五枚。 スタミナを15回復

「スタミナポーション、 ランク3」一本、銀貨一枚。 スタミナを20回復


「ヒールポーション、 ランク1」一本、小金貨一枚。体力を10回復し、それに見合った傷を治し、止血等も出来る。


「ヒールポーション、 ランク2」一本、小金貨三枚。体力を20回復し、それに見合った傷を治し、止血等も出来る。


「エキストラヒールポーション、 ランク1」一本、金貨一枚。体力を40回復し、それに見合った傷を治し、止血等も出来る。一般的な骨折なら治すことができる。


「エキストラヒールポーション、 ランク2」一本、金貨五枚。体力を80回復し、それに見合った傷を治し、止血等も出来る。骨折を治すことができる。末端まったんならば、部位欠損ぶいけっそんも再生できる。


「エキストラヒールポーション、 ランク3」一本、大金貨一枚。体力を120回復し、それに見合った傷を治し、止血等も出来る。骨折を治すことができる。死亡していなければ、部位欠損も再生できる。脳も再生されるが失った記憶は再生されない。


「エキストラヒールポーション、 ランク3」。すげーよ。


「キュアポーション、 ランク1」一本、銀貨五枚。風邪などの軽い病気を治す。

 

「キュアポーション、 ランク2」一本、小金貨一枚。やや重い病気を治す。


「キュアポーション、 ランク3」一本、金貨五枚。大抵の病気を治す。


「キュアポイズン、 ランク1」一本、銀貨一枚。軽い毒を中和する。


「キュアポイズン、 ランク2」一本、銀貨二枚。重い毒を中和する。


「キュアポイズン、 ランク3」一本、金貨一枚。致死性ちしせいの毒を中和する。


 ポーションの卸値おろしねはこれよりだいぶ下がるんだろうが、自分で作れればウハウハじゃん。


 あらためて、錬金術師に俺はなる!!!


 後で聞いたのだが、ポーションの価格は、ほぼ卸値おろしねで、冒険者ギルドが利益度外視で販売しているそうだ。


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