また逢える日まで

@Ryujta119

第1話 見定め

「ねぇ、浮気って何処からだと思う?」


聞いてきたのは、いかにもモテそうな右腕に如何にも高そうな腕時計をしている修二という男だ。逆に不自然なのではないかと思える程に、女性に好感が持たれそうな服装と髪型でキめて今回の合コンに参加して来ている。修二の右左に座ってる男も同じような見た目で同じようなこと話してくる。いつからだろう。こんな男にすぐに見定めができるようになってしまったのは。

「私は、やっぱり他の女の子と2人で食事に行っちゃうと浮気かなぁ。だって彼女がいるのに2人で会う用事なんて理解できないもーん。」私の左で友人の美咲が口を開いて返事をした。真ん中にいる麻里奈も同意見と答えた。「で、香奈ちゃんはどうなの?」と修二が言う。合コンの暗黙のルールは、誰かぎ答えると他の参加者も順番に質問に答えなければいけないことだ。

「…んー、相手に隠し事しだしたら浮気かなぁ。」

私は、一度目を逸らした後に考えたふりをしてから答えた。隠し事したら浮気になるなんてそんなこと口走ってる自分に嫌気がさしてくる。そもそも人は嘘をつかないことが正しいなんて概念が通用するのは10代の教育までだ。誰かを傷つけないための嘘というのは大人になっていく上で必要だし、2人の関係を崩さないためにも恋愛においては必要不可欠だ。では、何故こんな答えをしてしまったのか。それはどんな理屈よりも男は自分よりも勘が鋭い女には一線置いてしまうからだ。

もうかれこれ5年くらい男からの質問に関してはデフォルトのような返事しかしていない。

来年で30になるのに合コンをしてしまっているのは、男を求めているからではなく友人の頼みで今合コンの開催場所の居酒屋に来てしまっているのだ。そもそも私自身は、結婚願望は無く子供も欲しくない。

ただ産まれた時から見た目に恵まれており、自分で言う程のことでは無いが人並み以上に男に困っては無かった。合コンで女は友達を自分より可愛い女を連れて来ないと言われてるがあんなのは女心を知らない童貞の迷想でしかない。類は友を呼ぶという一種のヒエラルキーのもと、安心感と余裕が生まれるので自分と同じくらいもしくはそれより少し上くらいの可愛い女を呼ぶように出来てる。美咲と麻里奈も大学時代からの友達だが決して不細工ではなく可愛い顔をしている。

「そうなんだぁ!まぁ俺なんか浮気したことないけどさ。一度聞いとかないと付き合った後に価値観の違いとかで言い合うの嫌だし。」笑顔で修二が答える。他2人の男も同じようなことを答えながらハイボールのグラスを空けて、店員に注文を頼んでいる。

「あ、女の子達は次何飲む?カシオレ?」陽気に話しかけてきたのは、修二の友人の和也だ。私達は、異論無くカシオレを注文すると、好きなタイプの話や仕事の話で盛り上がっていく。

美咲と麻里奈は楽しそうに男達と話しているがこの合コンでもし付き合うことになるなら幸せになれないからやめとけといち早く言いたい気持ちで一杯だ。そもそも浮気は何処からかなんて質問してくる男を信用するのは、絶対に良くない確証があった。

本当に良い男なら、浮気のボーダーライン等いちいち聞かないしそんな浮気かどうがのギリギリを確認する必要が無いのだ。

「今後浮気するかもしれないけど、許してくれる範囲は何処までですか?」と質問してるようなものだ。質問の意図をよく読んでみると男が如何に愚かなのか分かる。

だが、だいたいの女は、いや麻里奈と美咲も例外では無いが相手の年収や見た目で判断し会話の本当の内容が頭に入ってこない。

異性との会話で、冷静になることがどれほど難しいかということが生きてれば嫌という程分かってくる。

私が結婚願望が無く、恋愛できないのは何事にも冷静になり過ぎてしまっているからだ。

それがどれほど人生においても損してるかは自覚している。少し鈍感なくらい人生は楽しく過ごせる。

そんなこんなで、合コンが終わりLINEの連絡先を交換しその日は普通に解散した。


1人になり帰宅した後、重いジャケットを脱ぎ、下着になりソファーに横になってタバコに火を付けた。今日の合コンで香奈ちゃんは清楚だし素敵だね。なんて言われてたが、実際は1人になれば清楚なんてもんじゃない。

大人になるに連れて何かを目指すことより、何かに魅せようとすることのが上手くなっていくものだ。

タバコを吸い終え、灰皿を見ていた時。 

LINEが鳴った。修二からだ。


「今日はありがとう。今度良かったら2人で飲みにでもどうかな?」というありきたりな内容だった。「是非。」とだけ返事を返した。

修二のことが好きだとかは、全く無いが

私は夜の行為に関して嫌いでは無かった。

いずれそのような機会があるのなら、断る理由もなかったのだ。


疲れていたせいか、その日はすぐに眠ってしまっていた。朝起きた時、自分の手の感触に違和感があった。

明らかに誰か別の手を握っている。目を開いた時、その予感は確信に変わった。

修二が目の前で裸のまま横になって寝ていたのだ。そして、何より驚いたのが此処が私の部屋ではなく、明らかにラブホテルの部屋だったことだった。

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