『虚空に伸ばす手』
かきはらともえ
『虚空』
戦争は技術を進歩させた。
戦争と言っても形は様々だ。
国と国の争いだけではなく、国内での争い。
もっと小規模にしてしまえば、学校と学校の争いなんてものの戦争と言えるだろう。
この戦争と呼ばれる争いは、負ければ失うことになり――勝てば得ることになる。何かを欲しようとして、話し合いをしていて――それが過激的になっていったというのも歴史を紐解けば少なくない。
戦争に意味があるのかどうか――それはさておくとして、技術が圧倒的に飛躍して進歩するきっかけになるのも事実である。
それは間違いない事実である。
その最たる
人員や資金をふんだんに注ぎ込め、倫理観を取り除いて物事に取り組めるから――だろう。
人類は、絶体絶命の状況に瀕していた。
それは環境問題だったかもしれない、食糧問題だったかもしれない、人口問題だったかもしれない――いずれにしても、人類は『更なる果て』を見なければならないときがきていた。
二十世紀半ばの冷戦期、アメリカ合衆国とソビエト連邦で起きた宇宙開発競争。
これ以降、宇宙開発は随分と穏やかになってしまったが――着実に宇宙開発は続いていた。
そんな最中、問題は少しずつ浮き彫りになってきた。
いくつもの対策を講じて、いくつもの手段を発案してきたが、問題を先延ばしにする程度でしかなかった。
絶体絶命の危機が、人類に近づいてきていた。
これは、人類の生存競争――戦争だ。
人類は生き延びるために、戦う。
数々の手段は
これに方向転換してからの人類の行動は、極めて迅速かつ的確なものだった。
先進国が打ち上げていた太陽系各地に点在している人工衛星――国際気象人工衛星『フロンティア』。
これを用いた
真っ先に始動したのは『月移住計画』と『火星移住計画』だった。これらの
『新天地』を手に入れた人類は、更に求める。
技術の進歩を遂げ、更にその先が見えるようになった人類は――残る地球型惑星に目をつけた。
水星、金星――火星や月ですら人間が住むには困難な環境だった。だというのに移住してみせた。それは人類にとっての自信につながった。
だから、更に先を望んだ。
それを
ならば――更なる発展を望む。
戦いは――技術を発展させる。
一歩一歩と先進させる。
人類は――『人類絶滅』という戦いから得た叡智を更に発展させた。
更に『その先』にまで手を伸ばす――それは、人間が住み着くことができない木星型惑星や天王星型惑星の――
木星、土星、天王星、海王星。
これらの
地球型惑星と木星型惑星、天王星型惑星には明確な違いがある。それは惑星としての性質である。
地球型惑星の特徴は、地球のような岩石惑星である。
一方で、この木星型惑星の特徴は、惑星の中心核を周囲が液体もしくは気体によってなりたっている惑星である。
天王星型惑星の特徴は、メタンやアンモニアを含んだ氷や水を主体とした巨大な惑星のことである。
これらの
人類は絶体絶命の窮地をこうして脱したのだった。
太陽系全土に広がった人類は、更に『先』に挑もうとする。
人類は、更なる先――太陽系の外に広がる虚空へと手を伸ばそうとした。
そして。
それは、圧倒的なまでの虚空に阻まれた。
『虚空に伸ばす手』 かきはらともえ @rakud
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