第3話 今思えば悲しむヒマもなかった
「お前には時間というものがなかったな…」
そうこぼすのは父です。
今でも言ってます。よく言ってます。
時間て、なんでしょう?
時間て、自分のために使うものなの?
ふと、父に聞いたことがありました。
「自分に時間をあげれなかったじゃないか」
と、言われました。
まあ確かに、大学生の頃は周囲が就活しているなか母が生きるか死ぬか。
大事な時期には、教授に事情を言ってレポートだけで単位をお願いしたりとかして、
なんとか進級できるように、自分なりに動いて、
母が亡くなったあとも、悲しむヒマも無くバイトに就活に明け暮れて。
異変に気付いたのは梅雨の頃。
眠れない。体も重い。
突然止まらない涙。でも生活はしなきゃいけないので、高校生の頃から続けていたアルバイトにはなんとか出勤していました。
それから、秋口には実習も重なり、ますます「休むヒマ」は無くなっていました。
今思うと、よく生き永らえたなと思うほどの時間の無さ。
いつか切れる糸も切れないでなんとか耐えていたはずです。
その頃の私は、笑っていればなんとかなる。大丈夫大丈夫。平気平気。
本人はそう思っているんです。自覚ないから。
自覚がないうえに、辛いっていう言葉を避けたがる。
症状も出てるのに
強いねって言われることに酔っている
当時の私を殴ってやりたい
いや殴るなよ笑
さて、そのまま就職した私は、障害者施設で支援員として働き始めました。
実習でもお世話になったそこでは、主に重度の知的、精神、身体の障害を持つ方の入居施設で夜勤もこなして働いていました。
ところが、ある日それはやってきました。
からだがうごきません
おともだちは
おさけだけ
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