第3話 出逢1 人はそれを災厄と呼ぶ
……女の子は起きない……
まぁ、そうだろう……5mは離れている、起きていても聞き取れるか微妙な音量だった……
しかし良いのだ……
僕の長所はリスクマネジメントだ……
出来る限り不要な危険は避けたい、仕事の際もそれを最重要課題にしている……今は危険な状況だった……
相手が動揺して叫ぼうモノなら痴漢騒ぎ、
対象が女の子になっただけで、僕の有利は消えた……
いきなり、近寄って肩を揺するなんてバカはしない……
……懐中電灯の明かりで彼女の顔を照らす……
……起きない……
……照らしてみて分かる、化粧気の無い顔、口紅も塗って無いかも……眉も今時の女の子にしては太い……そのままなのだろう……
ジーンズにスニーカー、上着は裏起毛のグレーのパーカー
サイズや服のシルエットから女性用では無いことが分かる、まぁ、このサイズの女性用は早々無いだろう....
数歩近づいて、懐中電灯の先で、女の子の肩をつつく。
……女の子の眉間にシワが入る……
……直ぐに、後方に退いて、彼女の動向を見る……
「……んんっ」女性としては低いアルトの声を出して彼女は右手で目を擦る。一重まぶたの目が開く。少し三白眼……
「大丈夫ですか?」僕は心配を装って、丁寧に訊く。
「あっ、もう朝ですか……」彼女は僕には訊く。
「えっ、いやまだ夜中の一時過ぎです」と言うと。
「なんだぁ、へへ……すみません、もう少しで寝てても良いですか?」と彼女。
「いや、寒くないですか……この季節」ネジの緩い女の子か……僕は辟易して答える。
「こんな外で、朝まで寝てたら下手したら凍死です」僕は追加ダメージを与えるべく言う。
「……そ~ですか、暖かいです……」彼女は半開きの口で返答する。
彼女は道端に寝転んだままで、僕を見上げる。
「すみませんが、こんな所で寝られて、何かあったら、ウチが迷惑なんです、解ります?風邪引かない内に、帰った方がイイですよ!」僕なりのダウン攻撃を見舞う。
「い”ぎゃ~わだじ、ざむいのーーーだいじょーーーぶぃ!」と大声で叫ぶ!
可憐な小さい子が言えば萌えるのかもしれないが、彼女が言うと、据わった瞳と巨体で、フ◯ンケンシュタインが蘇生の電撃喰らっている時の喚き声に聞こえる。
『ビッ、ビッックリした!!!』僕は声になら無い声を心の中であげる。同時に、彼女の吐息から酒臭さを感じる……
「酔っ払いかよ……」僕は彼女を呆れながら見て、
「最悪だよ、こりゃ警察だな……」思わず声に出る。
これなら呼んでも来てくれるだろうと僕は納得した。
店に入り、早速📞をしようと勝手口に戻ろうとすると、
「警察って言ったの?ポリーーーース呼ぶの!!!ダメdeath!Yeah!」 と言いながら彼女は機敏に立ち上がって、勝手口の扉を押さえ込む。このエセ外国人が……
彼女との対戦を自らリングアウトで負けようとした僕を彼女は全身で遮った……
「デカっっ……」思わず声に出た……
その言葉に彼女が大きな身体をくの字に曲げて
「……デカイ……デカイ……チョット背が高いだけだろーーーが!!!」
「声がデケーよ」と思わず、乱暴に言ってしまった。
「……えっ、えぐっ……デカク無い、チョット背が高いだけ」と、えずきながら僕と勝手口の間に膝を捩じ込んで、そのまま膝を曲げて勝手口の前で正座してしまった。
『その、デケーじゃねぇ……』僕は言うの諦めた。
「イヤだ……イヤじゃ……警察いやぁん……」彼女は言うが、頭は真下の歩道に頭突きするかの如くお辞儀をしていた。
「歩道と話しときなさい……」僕は言うと、勝手口を塞いでいる、このデカイ漬物石を退けようと、足先で彼女を押す。
「良い子だから退いてくださいねー」
「……」漬物石だから当然喋らない。
「退けよ!俺は忙しいの!」段々、敬語が無くなって来ている。こんな事早く終わらせて、家でAVでも観ようという想いが強くなる。
早く帰って長身女優のAVでも……いや……今日に限っては無い。
頭で妄想しながら、彼女に言葉と足で攻撃するが、微動だにしない漬物石……或いは、御利益の無い奈良の大仏様状態。
……足で押すのを止めて、静かに訊く。
「頼むよ、ホント貴女どうしたいの、オウチに帰りなさい……」
「もう、やだぁ、何でこんなに大きいの!!!」僕の秘蔵コレクションでたまに聞く台詞に『ビクッ!』としたが、努めて冷静に彼女に訊く。
「背が高いのがイヤなの??」
「死ぬ気で初めて合コン行ったのに!!行ったのに!!最初に身長訊かれて……それで終わり、the end……」
「他にも訊きゃ良いじゃない!!おっぱいとかお尻のサイズとか!!」
「揃いも揃ってチビッ子ばっか!!『モデルみたいだね……』とか言いながら、私の横の150センチの巨乳ロリばかりと話盛り上がりやがって……」ケッと言いながら、やっぱり歩道と話している。
漬物石に言う。
「ここに居ても、貴女の身長は小さくならないし、今はオウチに帰ってお風呂にでも入って寝たら良いんじゃない」
「明日になったら、突然変異で男性が皆2メートル級の巨人に成ってるかもしれないよ、さぁ、帰ろう……」僕は『バカ野郎早く帰れ!!』と内心思いながら、優しく言う。
「貴方、好い人でしゅね……」彼女はこっちを初めて観て言う。
「好い人でしゅ~」と言いながら、両手で僕をハグしようとするが、僕には、肉食獣に捕食されているシマウマ🦓の気持ち……思わず後退る。
「逃げんなよ!!!!!!でしゅー」ドスの効いたアルトが僕の脳天に響く。最後に可愛くしても逆効果だろう……
僕を支えに彼女は立ち上がり、
「さぁ、行こうか……」と良く響くアルト、先程の赤ちゃん言葉から急に宝塚の男役に切り替わった。
怖ええよ……
彼女は自分から勝手口を開け、そして僕の肩を鷲掴みにして、店内に入って行った……
僕は、捕獲された宇宙人👽の様な風体で引きずり込まれる。
……僕これからどうなるの……
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