第11話 目覚め
【明星のスルド】が約一年ぶりに【深淵】から館に戻り、彼女の
「スルド様、このオネット、お召しにより
「もうっ、堅苦くるしい挨拶は抜きにしてって
「これは失礼致しました……」
少女の姿の【明星のスルド】が自らの
「この度の眠りは
「時間は短かったけど、良い夢を見れたよ。それよりも、【
「タカユキ様の事でしたら、スルド様の
オネットにとってそれは別段気にする程のことでは無い。平穏無事に暮らす事を望んだ隆之がこの世界で伴侶を見つけ、共に支え合って生きていくことにオネットとしても祝福したい気分だ。
「問題なんてもんじゃあないよ、オネット! 君は分かっているの? あの【
普段の彼からすれば、この時の主の興奮ぶりに理解が及ばない。人間が人間と結ばれることに問題があるとは彼には思えなかった。
「もう、分かったよ、説明するから。あのね、今まで我らが王が【
熱弁する主の言葉からオネットは先を見通してから発言する。彼女の
「それはほぼ同時代に王が二人誕生する恐れがあると言うことですかな?」
「その通り! ほら、想像したらワクワクしてくるだろ! 我らを統べる王が二人も君臨されるかもしれないなんて……本当に夢のようだよ!」
「それは宜しゅうございました。おめでとうございます、スルド様」
主の楽しみを邪魔する気の無いオネットはスルドに祝いの言葉を述べる。
「オネット、君の人選の良さには全く恐れ入るよ。くぅぅ、子どもを宿すまで護ってやりたくなるよ……」
「それはスルド様の初志である【宝探し】の制約に反するのではございませんか?」
オネットが主の興奮を
「分かってるよ。でも、惜しいなあぁ……だって、【暴虐ベアトリス】がモールで熱心に【
少女の姿のスルドは本当に子どものような無邪気さを持つ。これで子ども扱いすると
「スルド様はそれよりも【勇者】の召喚をそろそろなされなくても宜しいのですかな?」
「うーん、そっちねぇ……こっちの世界で英雄が【ライオネル】に覚醒しそうだから、【勇者】は【モール】に持っていく予定だけど……正直に言うと、僕は気が進まないんだよね」
「何か問題でもございますか?」
「嫌なんだよね。相手をしたくないんだ。【
「タカユキ様の魔力制御は中々見事でございましたが……」
「【
スルドが人間を褒めるかのような言葉を言った為、オネットは今日の主の機嫌が全く分からなくなってくる。間違っても下賤な人間を褒める性格では無かったのに……
「これだけ楽しい事が続いているのに、何か水を
「スルド様、お言葉ではございますが、【勇者】をどのようにして送り出せば良いやら私には全く見当もつかないのですが……」
オネットに面倒なことを普段から丸投げする傾向にあるスルドだが、
「適当で良いよ。神の使いを名乗って、人間最強の力を以ってして魔人の
人間たちの希望である【勇者】をそのように扱うスルドを見たオネットは一礼の後で退出し、部屋の外で軽く溜息をついた。
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