第16話
朝起きていつもとは違いウィッグを被らずにワックスで固めた。
プロの方に比べたら酷いだろうけどワックス歴5年目突入だからまぁ、イケてるのではないだろうか。
いつものメガネとマスクをつけてスタジオへ向かった。
「おはようございます。一花さん。」
一花さんの姿を見つけて挨拶をした。
「おぉ!澪くん!おはよう。」
ニコッと挨拶を返してくれる一花さん。
めっちゃ可愛い…。
「今日の企画面白そうだよね。」
「はい。自分の行きたいところに潜入する、ってちょっとロマンありますよね。」
なんて今日の企画について話していた。
「オープニング撮ります。」
と指示がプロデューサーから出されたので
撮影が開始した。
「こんばんは村山澪です。」
「神田一花です。」
「カット!」
の声がかかり俳優スマイルをやめる。
一花さんはずっと笑顔だ。
次撮りますの掛け声で撮影が再開する。
番宣と意気込みみたいなのを言った。
まぁ、そこら辺は他の出演者さんと同じ感じていいと思う。
やる気満々オーラをね、醸し出す。
あと、俳優スマイルをね忘れない。
これで多分大丈夫。
今日2人で行きたい場所について言うところで、俺と一花さんどっちもが渋谷を選んだので2人で一緒に回ることになった。
一花さんはギャルに、俺はメガネとウィッグをかけて根暗になりバレないだろうが、これじゃあいつもと同じだ。
学校のクラスメイトと会わないか心配していた澪。しかしそれが現実になるとも知らずに事は進んでいた。
***
着替えとopを終えた俺と一花さんはロケ車で現場へと向かっていた。
「あのね澪くん」
「なんですか一花さん」
「実はね…」
と話された内容はこうである。
プロデューサーさんからちょっとバレそうかなって感じのドッキリっぽいことをして欲しい、との事。色々考えた結果一花さんは歩いている人を捕まえて道案内をしてもらいカミングアウトしようという考えが思いついたらしい。
一花さんが考えてくれたし何よりもそれよりもいい案を出せる自信がないのでOKの返事をした。
***
現場につくと一花さんにお腹空いたしなんか食べよ!と言われたのでお誘いにのり普段は出来ない食べ歩きを楽しんだ。
「お腹いっぱいー」
とお腹をぽんぽんと叩いて言う一花さん。やっぱりギャルっぽいけど一花さんって分かってしまうんだよな…。
「どうしたの?」
「なんでもないですよ。」
「あのさ、プリクラ撮ってみない?」
「プリクラ、ですか?」
「うん。プリクラ」
あれだよな。撮ったら目がでっかくなるやつ。
「いいですけど…。どうしたんですか?」
「いやぁ、撮れないから撮れる機会に撮っておきたいし?番組のホームページとかTwitterで載せてくれそうじゃん。私もTwitterとかに載せたいし。」
「あぁ、なるほど。」
「てか澪くんTwitterもインスタもFacebookもやってないよね?」
「はい。」
妹も幼馴染もガンガンにSNS使ってるが俺はそういうの得意じゃなくて実はやってなかったりする。
「この機会にやってみたら?あれだったら教えてあげられるし。」
周りには勧められてるし一花さんにも教えて貰えるならありがたい。
「アカウント作ってみますね。」
「おう!」
ニコッと満面の笑みで返事する一花さん。
この後陰キャとギャルはプリクラを戸惑いながらも撮り終えた。
「そろそろ行くよ澪くん!」
「…はい!」
腹を括り一花さんと共に1組目のターゲットの元に行く。
…腹を括りと言っているもののそこまでの緊張感もないのだが。
「あ、あのここに行きたいんだけど、場所分かる?」
強気に出る一花さん。
ちゃんとギャルのキャラは意識しているみたい。さすが。
「えっと…ここならそこを左に曲がって2つ目の信号機を…」
「ごめんね、うち頭悪いから案内して貰えると嬉しいかなって」
「あ、はい。聞いてみます。」
この子優しいな、優男くんと命名しよう。もう1人の子は…ちょっとオタクっぽい子だな。俺みたい…!!同志と呼ぼう。
ん?なんか争ってる。
お、なんか決心した時の顔を我が同志が…。
「あの、女優の神田一花さんですか?」
めっちゃ緊張してる。
てか、早くね?!めっちゃ早いじゃん。やばぁ
「なんで分かったの?」
「えぇと、どことなくいっちーでした。あ、すみません本人様の前であだ名なんて…」
あ、、この人ファンクラブの人ね…。(推測)
「そっかそっか…やっぱり私っぽいのかな澪くん。」
「…はい。まぁ分かります。」
そんなさ、あからさまに残念な顔しないでください。
「澪くん?!」
2人はびっくりしていたがそんなことはスルーする仕掛け人達。
「て、まさかあの。」
気づいたターゲット達。
「はい。俳優やってます村山澪です。」
「あ、あのファンなんですけどサイン頂いてもいいですか?」
俳優トーンよーし。
俳優スマイルよーし。
「いいですよ!」
サラサラっと書き終え
「どうぞ」
「ありがとうございます、妹の分まで…。写真もいいですか?」
「いいですよー」
一方一花さんは…?
こちらも同じくサインを貰っていたようだ。
「ありがとうございます。」
「いえいえ」
「あ、あの、しし、ししゃ、写真もよろしいでございましょうか?」
同志くんはというと、未だに落ち着きが取り戻せずあわあわしていた。
一花さんはいいよいいよー、と軽く流してニコニコ微笑んでいる。
この行動は本人にとっては当たり前で特に意識もしていないのだろうがそれをされる側はたまったもんじゃない。理性ぶっ壊しマシンである。
いやでも、一花さんをマシンと呼ぶのは失礼な気が、いやでも…
と考えてるうちに1組目のターゲットも終わった。
やっぱり撮影って結構疲れるもんだな…。
時間も残り少ないので次がラストのターゲットということになった。
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