第5話
やってきたのは都内のビーチだ。今は春で夏じゃないから人は居ない。
「じゃあ撮影開始しまーす。」
その声で撮影がスタートした。
***
「お疲れ様でした。ありがとうございました。」
その声で撮影も終わり、俺は死ぬほど疲れた。夕焼けがどうとかって、プロデューサーが言い始めたから夕方まで待たないといけなかったからだ。
いつもだったらモブスタイルに着替えるのだが今日は疲れすぎて着替えずにそのまま帰る。だが直ぐに帰れる訳もない。そう、出待ちがいるのだ。出待ちは嬉しいのだけど疲れたその後の対応はもっと疲れる。今日は10人もいなくて少なく感じる。あ、ビーチだからか。なるほど。勝手に納得していると
「あの、サインと写真いいですか?」
と聞かれ、いいですよと承諾すると
色紙とペンを渡してくれる。
名前とサインをササッとかいてしまい、次写真ですよね、と俯いていた顔を上げるとなんと相田さんだった。
…!!!
うわああ。
聞いてないぞ?
聞いてないぞ?
聞いてな、あ、聞いてるわ。
『澪くん、かっこいいですよね。』
↑6話参照
言ってた、ね。
平静を装え俺。プロだろ。演技しろ。
完璧な紳士になるんだ。
どうしたんですかと聞かれ何でもないですよと答える。
スマホをスタッフに渡し、撮ってもらい、ありがとうございますと言おうとすると、あの、と相田さんに声をかけられ
「その、最後に1つお願いがあって、、、。」
「はい。」
「いけない子。けど俺そういう子嫌いじゃないよ。って耳元で囁いて貰えませんか?」
え、と戸惑っていると
「どうしたの?」
とマネージャーに声をかけられた。クラスメイトのことと囁くこと色々話すと、まあ囁くぐらいいいんじゃない?と言われ戻ってしまった。
抵抗しながらも仕方がないと思い相田さんに
「いいですよ、許可出たので。」
と答えると彼女はありがとうございますと満面の笑みで答え、じゃあお願いしますと照れ臭そうに言った。
俺もプロだ。演じろ。大丈夫。何とかなる。
無心無心。
よし、腹は括った。
「いけない子。けど俺そういう陽菜ちゃんも嫌いじゃないよ。」
後ろから口を耳に近づけ吐息多めにゆっくりと囁きかけた。
どうだ!完璧だろう!と何とかやり切った思いで応援ありがとうと言うと彼女は動揺しながら逃げるように去っていった。
今のを見られたからだろうが他の出待ちの子にも同じセリフを散々言わされた。
俳優の村山澪は嫌な事でもやるのだ。
けど、相田さんじゃないせいかやりやすい気がした。
色んな意味で疲れた今日の撮影のおかげだろう、家に帰りソファに座ると睡魔におそわれた。
***
村山くん大丈夫なのかな?
ダンスをキレキレに踊っていたから体調は問題ないと思ったんだけど、、、。
陸くんに聞いたら腹痛だと言っていた。
よくお腹を壊す体質だそう。
まあ、心配していても何も変わらないと思い、志織ちゃんに借りた少女漫画を読み始めた。
***
「っ…!!」
声に出ないけどなんかドキドキしててこういうのいいなっておもう。
主人公が羨ましい!
3巻目を読み終え4巻目にいこうとすると携帯がなり、何かと思いスマホを覗くとTwitterのネッ友さんからで。
゛澪くんビーチで撮影してるらしい!私は距離的に無理だから私の分もよろしくね゛
とかかれていた。
陽菜はお金とスマホを持ってダッシュで撮影現場へ向かった。
***
撮影現場のビーチに来ると私以外のファンの方が多くいたけれどいつもより人が少なく感じビーチだからかなって納得した。
それにしても夕焼けをバックにした澪くんはかっこいい。神秘的という言葉が似合う。
撮影が終わり澪くんは疲れていると思うけれど声をかけるとサインをささっとかいてくれた。澪くんは少し黙っていてどうしたんですかと聞くとなんでもないですよ、と返してくれた。なんでもないとは言うけれどやっぱり少し疲れているんだろう。
写真はスタッフさんに撮ってもらった。
その時は身バレ対策か眼鏡をかけていた。
丸眼鏡。
似合いすぎている。けれど他の人がかけるとパッとしないだろう。
本人は外そうとしたけれどかっこよかったので大丈夫ですと言って止めた。
だってかっこいいじゃないですか。
澪くんが身に付けるものは必然的にかっこよく見えてしまうのですよ。
とりあえず、
写真とサインありがとうございました、とお礼を言おうとしたその時、頭の中に来る前に読んだ少女漫画のワンシーンが。
ダメ元で本人に頼もうと決めた。
無理だったらしょうがないと割り切って考えて言ってみる。
「いけない子。けど俺そういう子も嫌いじゃないよ。って耳元で囁いて貰えませんか?」
とお願いしてみる。緊張と恥ずかしさで顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
言った後に本人は困った顔をしていたけど後から来たマネージャーさんらしき人と相談して、いいですよ、許可出たので、と嫌な顔せず了承してくれた。
「じゃあお願いします」
と頼むと彼の演技は始まった。
「いけない子。けど俺そういう陽菜も嫌いじゃないよ?」
後ろから耳元でゆっくりと囁きかけてくた。
爽やかな香りがして、吐息がかかる度にビクンと震えてしまう。
ーそういう陽菜もー
陽菜って言ったよね。
何故名前を知っているんだろう。
そのことが引っかかって離れない。
応援ありがとうと言われたが私は恥ずかしくてその場から逃げ出してしまった。
家へ帰ってサインを見ると相田陽菜ちゃんへと書かれていて現実だと言うことを実感することが出来た。けれどここでも相田陽菜という名前がかかれていた。
一切名前を教えてないはずなのに何故だろうと疑問に思いモヤモヤしたまままぶたを閉じた。
あとがき。
誤字脱字がめっちゃ多いんです。
報告して頂ければ助かります!
この話は焦り目で執筆してますのでまた編集してちょっと話が変わるかも、、かもです。
ご了承願います!
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