第3話


俺たちは学年ツートップと言われている相田 陽菜と坂井 志織とダンスのグループを組むことになった。


...さてどうしたものか。

まあ、どうしようもないんだけど。

とりあえず、

「相田さん、坂井さん、颯はダンス習ってて上手いし、リーダーは颯でいいと思うんだけど、どう思う?」


「私はOKだよっ!」

「私も大丈夫よ。ダンスはあまり得意では無いの。陸くん、ありがとう。」

相田さんは文武両道って感じがしてたから少し意外だな。

まあいいや、始めよう。


「ダンスの練習始めましょうか。俺も颯程は踊れないからよろしく頼みましたよ、リーダーさん。」


「チッ」

颯が舌打ちをする。

「何か言ったか?」

と尋ねてみると

「何もねーよ。早く始めよ」

と言う颯。

嫌がりながらもやってくれる颯は俺の自慢の友達だ。


「うんうん、で、なんの曲にする?」

と坂井さん。

「その事なんだけど、、、」

颯の説明が始まった。

まずダンスは洋楽を使うことが多いらしい。

言われてみれば日本の曲で踊るのはYoutubeだけだったな。しかもほとんどがボカロだ。


俺は仕事で英語を使うこともあるから話す事が出来るので洋楽もよく聞く。颯はダンスでよく聞いているだろう。知らない曲でも多分あいつなら何とかなると思うしな。


そして、相田さんは洋楽はよく知っていたのだが、坂井さんはあまり聞かないみたいだった。なのでTikTokで流れてくる洋楽から選んだ。

みんなTikTokにある曲はよく知っているらしく違うグループでもそうしている所は結構多かった。


曲が決まって振り付けは颯が早々と決めたので教えて貰って踊るのだが、相田さんが苦戦している。

リーダーを決める時に苦手だと言っていたしな。

坂井さんは振り付けを覚え、颯にポジションだとか細かい部分を教えて貰っていた。


俺も問題ないので相田さんに教えに行くことにした。


***


「相田さん、分からないところありますか?」

「とても恥ずかしいんですけど、その、最初から最後まで分からないんです。やるならちゃんとやりたくて...。教えて頂けますか?」


ダンス初心者ができるようにと頑張ってくれるのを見て断れるはずがない。

「もちろん!」

快く返事した。


そこから40分練習をして徐々にではあるが踊れるようになってきていた。まだ、あどけなさはあるがこのまま練習を重ねれば上手く踊れるようになるだろう。


「村山さん、ちゃんと踊れていましたか?」

「はい。始める頃よりも上達しています。ちゃんと練習すればちゃんと踊れるようになります。」

「良かった...。」

彼女は少し安心した様子でほっと息をついていた。

「あの、失礼だと思うんですけど、その、意外でした。最初まだグループが決まっていない時に2人で練習されていて、とっても上手だなって思いました。その時にみんな、お2人のことを見ていたんです。上手でしたから当たり前だと思います。本人は気付いていなかったみたいですけど。」


そうだったのか...。

若干だが周りの視線が気になると思ったんだ。その時は気のせいだと思ったが。今度こんなふうに目立つことがあったらバレるかもしれない。


「で、グループに誘いました。言い方が悪いんですけど、皆さん、しつこいというか。だけどダンスがあまり上手な訳でもないので。するとあの場にダンスが上手な2人がおられたので。だから、その、利用する真似して申し訳ないです。本当に...。自分でも反省していて、巻き込む羽目にもなってしまって申し訳」


「そういうのやめてください。」


つい、俺は彼女の言葉を遮ってしまった。


「っ...。そうですよね。利用したんですから。グループやめろと言われてもおかしく」


- [x] 「俺はそういう事を言ってるんじゃないんですよ。自分をせめて相手に謝るのやめてください。俺はごめんなさいよりもありがとうの方が聞きたいんです。だから自分をせめるのもうやめましょう。......って朝ドラの何とかって人が言ってたじゃないですか。」


そういった時彼女はほんのりと頬を赤らめたが何事もなかったように、

「はいっ!そうですね。ちなみに言っていたのは澪くんですよ。あなたと同性同名なんですから忘れないでください。」

と答えた。


ほんのりと頬を赤らめた、そんな事はどうでもよいわ。それよりもだ。澪くんですよ。彼女がそう言ったことに問題がある。だって俺だもん。しかも、みおくん。くんって。それじゃあファンと同じ呼び方じゃん。


「澪くん、かっこいいですよね。クラスの女子みんな大好きですよ。演技上手でダンスも上手で空手してて。あ、村山さんと同じ特技ですね。空手してますか?まさか、本人だったりして。」


ギクリ


「おいお前ら、いつまで話してんの。早く着替えて教室戻るぞ。」

と、颯の声が。ナイスタイミング。


「相田さん、戻りましょう。」


「そうですね。」


最初あった俺たちの気まずさは無くなり次の保健体育の授業で上手く発表出来そうな気がした。


***



授業後、教室にて。


「ダンスの練習終わって相田さんと村山が仲良さげに話してたらしい。」


「え、まじ?普通にありえねえだろ。」


「まじなんだよ。俺見たから。」


「やばい。可哀想。あんなモブと陽菜ちゃんとか釣り合わない。なんかしたら私がぶっ飛ばしてやる。」


などという話が飛び交っていた。




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