第90話 『グーディメル子爵家』の夜会(パーティー)にて 2
◇◆◇
と、言う様なやり取りが僕の『精神世界』であったのが数日前。
その後、アルメリア様とセレウス様の『情報』をもとに、
と、言うのも、今日の『グーディメル家』の
当初は、ディアーナさんの生存報告と共に『反戦派』の『貴族』の方々との『極秘資料』の“共有”やその『処理』への協力の打診、また、余興として『農作業用大型重機』の『試作機』を御披露目して、『農作業用大型重機製作プロジェクトチーム』のメンバー募集やスポンサー募集を募る予定だった。
そのついでではないが、
僕の『
『手品』や『フェイント』と同様に、僕らの目を
単純だが、それ故に上手い手でもある。
もし、僕にチーター二人(二柱?)の協力や助言がなかったら、僕も危うく引っ掛かっていた所であった。
しかし、知った以上は今現在の僕らなら
警戒すべきは、ニコラウスさんの周囲にいるだろう
ならば、問題なさそうである。
とは言え、リリさんとの『共同研究』を主導している片割れである僕としては、
まぁ、しかし、そっちの件はアイシャさんとティーネに任せておけば大丈夫だろう。
“仕込み”はすでに済んでいる訳だし。
・・・しかし、そう頼んだ時にアイシャさんとティーネはエライ渋っていたなぁ~。
残ったリサさんは上機嫌だし。
何だか、
「アキトの『パートナー』の『座』がぁ~・・・!」とか、
「アイシャ殿っ!これも
「そういうティーネも、若干悔しそうじゃぁ~んっ!!!」とか、
「い、いえ、私と
「えぇ~、まだそんな事言ってんのぉっ~!?」とか、
「まあまあ、アイシャちゃんもティーネさんも、ここは一番ダーリンと出会って日の浅いボクに譲ってよぉ~。生憎『
「うぅ~、何か納得いかないけどぉっ~!」とか、
「仕方ありませんね。・・・ここでも、『他種族』である弊害が・・・。」
などと言ったやり取りがあったのだが、いや、流石に
『農作業用大型重機』の『試作機』の御披露目をする為に、一応『正装』はしていますがね?
流石に僕も鈍感ではないので、こうした華やかな場で僕の『パートナー』として着飾った彼女達が僕の横に並びたいと思ってくれていた事は何となく察しているが、まぁ、今のところ彼女達の気持ちに応えられていない事は、僕も心苦しい部分はあるのだが・・・。
いや、決して僕はヘタレじゃないぞっ!?
ちょっと、色々忙しいだけでっ・・・!!
・・・誰に言い訳してんだろう、僕・・・。
・・・
「こんばんは。はじめまして。アキト・ストレリチアです。」
そんな事を考えつつ、僕とリサさんは『グーディメル子爵家』の面々と挨拶を交わしていた。
先程も言及した通り、僕は『正装』、リサさんはドレスアップしている。
(ちなみに、
もちろん、そこら辺も『流行』や、また『TPO』に合わせて装いも変わってくる訳だが。
僕はファッションに関しては詳しくないが、『
イメージ的には、某ヅカの男役の方々が身に纏いそうな感じ。
もっとも、形や色のバリエーションは、某ヅカにも負けず劣らず結構豊富みたいだが。
女性のドレスは、もはや完全に門外漢である。
正直、ファッションに疎い僕は全く分からないのだが、どうやら『
その装いはシックでエレガントではあるのだが、そこはそれ、流石は『特権階級』かつ女性である。
下品にならない程度に髪飾りやイヤリング、ペンダントにブローチ、ブレスレットに指輪などの装飾品で、それぞれオシャレを演出していた。
その中でも、僕はあまり目立たない黒色の『宮廷服』を身に着けている。
リサさんも、アイボリー色のシンプルなワンピースタイプのドレスを着用しているが、そこはそれ、流石は『ドワーフ族』の女性である。
その装飾品は、『特権階級』の間にも出回らない様な珍しい『宝石類』があしらわれている。
ちなみに、この装飾品の製作者は、『金細工職人』である『鬼人族』のアイシャさんだったりする。
なんのかんの言って、僕の仲間の女性陣は、非常に仲が良い様である。)
そう僕とリサさんが挨拶をするが、『グーディメル子爵家』の面々は、セドリュカさんとクラリッサさん、リリさんを除いて、ポカーンッとしていた。
まぁ、それはそうだろう。
突然、知らない奴が現れたんだからな。
そんな事はお構い無しに、セドリュカさんは話を進めた。
「お前達、こちらは『リベラシオン同盟』の『独立部隊』にして、『冒険者』パーティー・『アレーテイア』を率いるアキト・ストレリチア殿だ。かの有名な『ルダ村の英雄』殿だな。そして、そちらはアキト殿のお仲間で、『ドワーフ族』のリーゼロッテ・シュトラウス嬢だ。」
「改めまして、はじめまして。今ご紹介に
「同じく、はじめまして。『リベラシオン同盟』の『独立部隊』にして、『冒険者』パーティー・『アレーテイア』所属のリーゼロッテ・シュトラウスと申します。よろしくお願いいたします。」
セドリュカさんのご紹介に、僕とリサさんは一礼した。
すると、ザワッとざわめきが生じた。
やっぱり、『
「と、父さんっ!わ、私の聞き間違いでないなら、今、『リベラシオン同盟』、とっ・・・!?」
「ああ、その通りだが・・・、詳しい話をする前に、まずお前達もご挨拶しなさい。アキト殿達に失礼であろう?」
「こ、これはとんだ御無礼をっ!はじめまして、アキト殿、リーゼロッテ嬢。私は、セドリュカとクラリッサの長男、エリック・ド・グーディメルと申します。こちらは、妻のマドレア。一人娘のディアンヌです。」
「エリックが妻、マドレアでございます。」
「うわぁ~、きれ~。ママァ~、おうじさまみたいだねぇ~。こっちのおねぇ~ちゃんもきれ~。」
「「ちょ、ディアンヌっ!!??」」
おお、凄いぞこの
自分でもたまに忘れそうになるが、確かに“アキト・ストレリチア”は『ロマリア王国』の『王子様』だ(まぁ、
それを看破するとはなっ!?
と、言う冗談はおいといて、一応、僕も今現在の自分の容姿は自覚している。
有り体に言って、所謂『イケメン』に成長してますわ。
まぁ、僕は『前世』の記憶を持っているので、若干複雑な心境もはあるのだが、まぁ、悪い事ではないだろう。
『見た目』の印象は、結構重要だからね。
「よろしくお願いいたします、エリックさん、マドレアさん。ディアンヌちゃんも、よろしくね?」
「よろしくお願いいたします。エリック様、マドレア様。ディアンヌ様も、よろしくね?」
ニコッと僕とリサさんが微笑むと、ディアンヌちゃんもパアッと笑顔になってくれた。
ありがたい事に、今の僕はアランやエリー、ファブリスくんの例からも分かる通り、子どもウケが結構良いみたいなのだ。
そのまま、先程のリリさん同様に、ディアンヌちゃんは僕らに駆け寄り、そのまま僕に抱き付いてきた。
「うん~♪」
「「」」
それに、エリック夫妻は顔面蒼白になったが、僕はお二人を手で制してディアンヌちゃんを抱き上げた。
「~♪」
どうやら、その行為はディアンヌちゃんのお気に召した様である。
「え、えっと、この雰囲気の中では、中々やりづらいのだが、私もご挨拶させていただこう。私は、セドリュカとクラリッサの次男、ジョルジュ・ド・グーディメルです。アキト殿、リーゼロッテ嬢。どうぞ、よろしく。」
ほのぼのとディアンヌちゃんと僕とリサさんが和んでいると、若干戸惑った様に、ジョルジュさんが声を掛けてきた。
おっと、これは失礼。
「ああ、これは失礼しました。よろしくお願いいたします、ジョルジュさん。」
「よろしくお願いいたします。ジョルジュ様。」
一通りの顔合わせとお互いの紹介が済んだ所で、セドリュカさんが話を進めた。
「アキト殿。長男のエリックは『グーディメル商会』を、次男のジョルジュは『グーディメル鉱業』を、それぞれ引き継いでいます。」
「ほお、それは凄いっ!お二人とも、お若いのに、やはり『グーディメル子爵家』の方々は“やり手”なのですねぇ~。・・・ふむ、お二人なら名実共に『プロジェクトリーダー』としては申し分なさそうですね・・・。」
若干失礼ではあるが、僕がエリックさんとジョルジュさんを値踏みする様に観察した後そう感想をもらした。
それに、セドリュカさんが安堵の声を上げる。
「そうですかっ!いやぁ、アキト殿にそう言って頂けると有り難いですなぁ~。」
「いえいえ、・・・リリさんも関わっている事ですから、正直
「はぁ・・・。我が娘ながら、難儀なモノですなぁ~・・・。(ボソボソ)」
ヒソヒソとリリさんに聞こえない様に内緒話する僕とセドリュカさん。
もちろん、セドリュカさんにお願い出来れば、それに越した事はなかったのだが、残念ながらセドリュカさんはディアーナさんのサポートで手一杯である。
そこで白羽の矢が立ったのがエリックさんとジョルジュさん、と言う訳である。
もちろん、このお二人にその“実力”がないと見れば、あるいは変な“野心”とかが見え隠れすれば、流石にこの話は無かった事にする所だったが、これでも人を見る目はそれなりに養ってきた自負がある。
まぁ、もっとも『英雄の因子』の『能力』に依存している側面もあるのだが、そうしたこれまでの経験則からも、実際に会った時の印象や直感も、これで結構バカに出来ないのである。
お二人からは“デキそう”な雰囲気もありつつも、一番の決め手は、お二人とも『
まぁ、それはセドリュカさんやリリさんにも言える事なんだけどね。
当然ながら、『組織』を運営していく上では、様々な人々の手を借りる場面が多々出てくる。
大抵の人達は、『トップ』が強力な『リーダーシップ』を発揮すれば、人々が勝手に着いてきてくれると考えるかもしれないが、事はそう単純ではない。
特に、“人間関係”に置ける事は、ね。
もちろん、『トップ』が優秀ならそれに越した事はないのだが、それでも人一人に出来る事はたかが知れているし、逆に優秀過ぎるのも問題がある。
『組織』を
例えば、これは以前にも言及したかもしれないが、
時に隆盛を誇るそうした『家』や『企業』は、強力な“
所謂“ワンマン経営”である。
これは、もちろん利点もあるのだが、問題点も非常に多いのである。
まず、利点としては、
1、判断や意思決定のスピードが早い。
2、判断が当たり続ければ、『組織』の成長も早い。
3、1、2を合わせて、スピード感があるので、時流に乗りやすい。
などが挙げられる。
それ故、特に設立して間もない『組織』においてば、むしろ“ワンマン経営”は有りと言えば有りであろう。
事実、今現在の
しかし、天才的な経営者や、異常に『運命力』の高い歴史上の偉人なんかもいるんだが、それでも、全ての采配が当たり続ける事など、まずあり得ない。
それ故、結論から言うと、ある程度『組織』が軌道に乗った時点で、徐々に“ワンマン経営”から“チーム経営”にシフトチェンジした方が無難であろう。
まぁ、それが難しい事もあるんだろうが。
では、問題点であるが、
1、イエスマンの増殖、横行。
2、ナンバーツーの不在。
3、不正行為の助長。
4、辞められない。
である。
先程も述べた通り、全ての采配が当たり続ける事など、『確率論』的にも、まずあり得ない事だ。
しかし、“ワンマン経営”が行き過ぎると、“ワンマン経営者”の判断に対して“苦言”を呈する者達を排除してしまう傾向になる。
誰でも、自分の意見に反対される事を面白く感じる筈がない。
しかも、これまでその“独自判断”で
となれば、当然、そうした者達の“苦言”は、ただの口煩い戯れ言でしかなく、行動を阻害する障害でしかない。
結果、そうした者達は“出世コース”からは外れてしまう事になる。
まぁ、それが露骨なモノかそうでないかの違いはあるかもしれないけどね。
となると、当然、“ワンマン経営者”に楯突く者はいなくなる。
誰だって自分の身はかわいい。
それに、
その末で、イエスマンが増殖、横行するのである。
その流れで、ナンバーツーが不在となる。
当たり前だろう。
“ワンマン経営者”自ら、その候補を排除してしまったのだから。
気概のある者達は、むしろそんな状況がバカらしくなり、“外”に出ていってしまうだろう。
所謂『人材』の流出である。
更にその流れで、不正行為を助長する事になる。
イエスマンしか
赤字になったり、戦に負けたりするのである。
その失敗を補填する為に、その事実を誤魔化す。
粉飾決算や、偽情報の流布などである。
更に、そうした“環境”では当然『後継者』が育たない訳で、“ワンマン経営者”は辞める事も出来ない。
当たり前だろう。
そうした“土壌”を、自ら排除してきたのだから。
そして、最終的には実にアッサリ崩壊する。
諸行無常は世の常。
“ワンマン経営者”が倒れれば、その後の『戦国大名家』や『企業』の没落ぶりは目もあてられない。
一時代を築いたほどの勢力が、今や見る影もない、なんて事が往々にしてある。
強力な“
その点、長らく続く『戦国大名家』や『企業』と言うのは、『トップ』でなく、その周囲を固める者達が優秀で、更にその“世代交代”もスムーズである事が常である。
もちろん、“ワンマン経営”の利点である判断や意思決定スピードが落ちるなどと言ったデメリットもあるが、僕が『農作業用大型重機製作プロジェクトチーム』の『プロジェクトリーダー』に求めているモノは、各方面との『調整役』であって、強力な“
そうした意味では、エリックさんとジョルジュさんはおあつらえ向きの『人材』である。
彼らは、自分の『立ち位置』をしっかり把握している印象を受ける。
これは、その環境に寄る所も大きいのだろう。
結局、本当に優れた『組織運営』と言うのは、如何に『人材』を
そう言う意味では、『トップダウン方式』の『システム』も有りだろうが、『ボトムアップ方式』も時に必要になってくる。
重要なのは、『バランス感覚』と『信頼関係』である。
エリックさんとジョルジュさんの様な人は、自分に出来ない事を素直に認め、それを他者から意見を求める事が出来るタイプの人であろう。
それは、“先代”から『組織』を引き継ぎ、今日に至るまで問題なく『組織運営』している事からも窺い知れるし、先程のセドリュカさんとの会話からも推察出来る。
さぞ、部下の方々に愛されている事だろう。
「あの、それで父さん。ディアーナ公女殿下とアキト殿・リーゼロッテ嬢が此方にいらっしゃる理由をお聞かせ頂いてもよろしいですか?」
それに、若干置いてきぼりにされたエリックさんが、改めて問い掛ける。
「おお、すまんすまんっ!では、かいつまんで“事情”を説明しよう。」
・・・
「なんとっ・・・!?」
「我々の知らない所で、その様な事が巻き起こっていたのですかっ・・・!?」
ディアーナさんの『暗殺未遂』から、『
「今日の
「お前達には、その『農作業用大型重機製作プロジェクトチーム』の『プロジェクトリーダー』の座に就いて貰いたいのだ。」
「それはっ・・・、もちろん『グーディメル商会』や『グーディメル鉱業』としては願ってもない話ですが、その、よろしいのですか・・・?」
チラリと僕の顔を窺い、エリックさんはそう述べた。
「『
「なるほどなぁ・・・。姉さんはそうした事には疎いし、父さん達はディアーナ公女殿下の補佐で手一杯。それ故、我らに話が回ってきた、と言う訳か・・・。」
ジョルジュさんは、納得する様に頷いた。
ちなみに、そのリリさん、てか、クラリッサさんとマドレアさん、リサさんとディアンヌちゃんは、この話には加わらず、キャイキャイとお喋りに興じていた。
まぁ、ディアンヌちゃんには、大人の話なんかつまんないだろうからね。
「そうです。それと、もう一つ。これは、少し先の話になりますが、『農作業用大型重機製作プロジェクト』が軌道に乗って成果が現れるまでには、しばらく時間が掛かるでしょう。その間を埋める意味でも、また、『
「それは、もちろん有り難い申し出だが、少し難しいのではないですか?『食糧輸送』にはそれなりに時間が掛かる。『ロマリア王国』から『ヒーバラエウス公国』に至るまでには、『食糧』が大抵は腐ってしまってとても食べられた物じゃない。もちろん、『保存食』としてでも交易を強化出来るのなら、随分助かりますが・・・。」
エリックさんは、
これは、確かにその通りだ。
以前にも言及したが、
それ故、『食糧輸送』となると、ほぼ100%日持ちのする『保存食』としての形態での取引となる。
まぁ、それでも重宝するモノだが、生憎、今の僕は『技術革新』を多少推し進めるのも
もちろん、僕も
それ故、『魔法技術』をベースにした比較的単純な『冷却システム』なら作り出す事が可能である。
ってか、すでに出来てるんだけどね。
「それも問題ありません。鮮度抜群、とまではいきませんが、『保存食』ではない、腐っていない『食糧』をお届け出来ますから。」
「なんとっ・・・!?」
「・・・それは、噂に聞く、『
「・・・おや、よく御存知ですね?」
「私も噂に聞いた程度でしかないのですが・・・。『ロンベリダム帝国』では、そうした物の普及が、少しずつ始まっているとかなんとか・・・。」
ああ、なるほど。
おそらく、その件には『
『
「御存知なら話は早い。まぁ、そうした訳で、お二人には、
「そうですな。」
「・・・分かりました。」
「・・・はい。」
うん、とりあえずエリックさんとジョルジュさんの心証はよさそうだ。
これもある種“プレゼン”みたいなモノだからな。
『農作業用大型重機』の『試作機』の御披露目で良い返事を頂ける様に、もう少し頑張りますかねぇ~。
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