第70話 『事象起点【フラグメイカー】』の『効能』
◇◆◇
「セレウス様、ですか?」
「おうよっ!」
いや、そんなドヤ顔(いや、まぁ、顔はハッキリは見えないんだが)でニカッと頷かれても、僕はその『名』を知らんのだが・・・。
まぁ、僕に『
しかし、それにしてもここに来て唐突に出てきたモンだ。
これまで僕と、ある意味“一心同体”だったのにも関わらず、今まで一向にセレウス様からの“アプローチ”がなかった事から、彼に何らかの『制約』があったのか、あるいは彼の『解放』には何らかの『条件』が必要だったのかもしれんが・・・。
もしかしたら、その『解放条件』が『限界突破』の『試練』と言ったところなのかもしれないなぁ。
「察しが早くて助かるぜ、アキト。流石は俺の『宿主』だぜ。確かにお前の『英雄の因子』の『能力』は俺の『
「・・・ナチュラルに人の思考を読むの止めてもらっていいですか?」
「おお、すまんすまんっ!お前との付き合いも随分長いからなぁ~。自然と“考える事”が伝わってきちまうのよ。」
カラカラと豪快に笑うセレウス様。
それすらも様になってるのが何だかイラッとするが、まぁ、それはともかく。
「それで、急に出てきてどうしたんですか?」
「いや、急じゃないのよ、これが。俺、一応
えぇ・・・、急にメッチャ喋るじゃん。
何気に気になる『ワード』もチラホラあるし、あっけらかんと言うには結構重たい話じゃね?
「あのぉ~・・・。」
「いやいや、すまんが疑問や質問は後にして、まずは俺の話を聞いてくれ。『
「はぁ・・・。」
確かに以前のルドベキア様との邂逅(まぁ、それも随分前の話になるが)の時に感じた『力』と言うか『存在力』みたいなモノが、セレウス様からはあまり感じられない。
彼の言葉を借りるなら、『
「そうそう、正にそれなのよ、アキト。
「だから、ナチュラルに人の思考を読むのを止めて下さいよぉ~。何ですか?神様の間で流行ってるんですか?ルドベキア様もアルメリア様もそうだったし・・・。」
「おう、そうそう。ルドベキアの嬢ちゃんとアルメリアの嬢ちゃんが世話になってる様だな!彼女等の“親代わり”としては、一応礼を言っとくぜっ!」
「あれ?お二方とはお知り合いですか?ってか“親代わり”って?確か彼女達は『管理神』だから、『土着神』より更に『高次元』の『存在』でしたよね?」
「ま、その辺の“事情”も追々な。今は、それよりも重要な事を伝えておきたい。」
一転してセレウス様の真剣な雰囲気に、僕も様々な疑問を一旦脇に置いておいて、彼の話に真剣に耳を傾ける事にした。
「サンキューな。で、さっきも言った様に、
「『
何だか話が若干“オカルト”じみてきたが、セレウス様を始め、ルドベキア様やアルメリア様などの『高次元』の『存在』を直に知っている僕としては今更ではあるか・・・。
「そっ。『霊媒体質』や『憑依体質』はある意味一種の『テレパス能力』だからな。『憑霊』・『神降ろし』・『神懸り』・『神宿り』・『憑き物』って言葉がある一方で、『悪魔憑き』とか『狐憑き』なんて言葉もあるくらいだ。いずれにせよ、それらに対して何らかの“対処法”を持たなければ『精神』や『霊魂』に多大な悪影響を及ぼすし、下手すればお前自身の『魂』も
「ふむ、なるほど・・・。」
とりあえず、僕とセレウス様の関係、僕が『英雄の因子』所持者になった経緯は理解出来た。
「俺としても、一度は逃げ出しかけた
「ふむふむ。」
捉え方によってはある種の『寄生』みたいに聞こえるが、『英雄』と言う“称号”を持つに至った
少なくとも、確かに『地球』時代の僕は人並みに幸せだったと思うし、『地球』で普通に暮らす分には『英雄の因子』の『能力』など必要ではないからな。
逆に、そんな『能力』を持っているとバレたら、何らかの事態に巻き込まれていた可能性すらある。
そう言った意味では、セレウス様の配慮はありがたかったし、彼が取った手段は分からない話ではなかった。
「いや、ある意味『寄生』ってのは合ってるさ。俺の方にもメリットはあったからな。少しずつ『力』を蓄えて、お前の『最期』を看取ってからお前と別れて、
「『至高神ハイドラス』からの干渉、ですか・・・。」
「うん、まぁ、厳密には違うんだが、概ね合ってる。で、知っての通り、『運命力』を弱体化させられたお前は『転生』するハメになっちまったって訳だ。俺も、干渉の影響でお前の中で『
確かに客観的に考えれば、事前にルドベキア様やアルメリア様に出会わなければ、僕自身も『ライアド教』に
『英雄の因子』を抜きにしてみれば、『
それだけでも
改めて実感したが、今現在の『召喚』に巻き込まれた『地球人』達と同じ立場に立っていたかもしれないのか・・・。
「そういうこった。ま、俺も含めて、ルドベキアの嬢ちゃんやアルメリアの嬢ちゃんも、もちろん『制約』もあったんだが、“
「なるほど・・・。」
『限界突破』の『試練』にはそんな裏があったのか・・・。
「で、ここからが本題だ、アキト。」
「・・・なんでしょうか?」
若干迷う様な素振りをみせながらも真剣味を帯びたセレウス様の雰囲気に、僕も襟を正して真正面から向き合う。
「・・・お前は俺と
「・・・。」
「まぁ、だからと言ってお前自身の『力』を付け狙う『
「確かに・・・。」
セレウス様の言いたい事も理解出来る。
しかし、僕は思わずクスッと笑いをもらしてしまった。
「?何かおかしかったか?」
「フフフッ、いえ、すいません。ただ、僕と貴方はよく
「???」
疑問符を浮かべるセレウス様に謝罪しながら、また僕はおかしくなってしまった。
おそらくこの
それこそ、その結果『破壊神』に“ジョブチェンジ”
「・・・
僕の『答え』に絶句した様子のセレウス様。
「・・・しかし、お前にこれ以上迷惑を掛ける訳にはっ!!!」
「・・・“神々の事情”の事や貴方の“事情”の事は正直見当もつきません。ですが、貴方がお一人で全てを背負われる事が間違いである事は確信を持って言えます。僕と“一心同体”であるならご存知ですよね?以前、僕自身アルメリア様に諭された事を・・・。」
「っ!?それは・・・。」
ー「・・・アキトさん、それは思い違いですよ?彼らも『
今にして思えば、これはアルメリア様からセレウス様に宛てた『メッセージ』でもあったのかもしれないなぁ。
これは、以前僕自身が仲間達や他の人を“
これによって僕は、自分一人
そして、それは『神』と呼ばれる『高次元』の『存在』も同じではないだろうか?
いくら強大な『力』を持っていても、『
なぜなら、『世界』とは様々な『生命』達一つ一つが
「正直、貴方の心遣いは有り難いと思います。僕だって、出来れば面倒事はゴメンですからね。けれど、これは、最早“
「っ!!!」
僕だって、別に何かから逃げる事や諦める事を否定するつもりはない。
皆が皆『物語』の『英雄』の様に“強い”訳ではないからだ。
しかし、だからと言って、自分達の『生活』や『人生』を
それは、最早自分達の『生活』や『人生』ではなくなるからだ。
当たり前の話で、だがしかし、誰もが意外と忘れがちになる事なのだが、最終的に自分自身の『生活』や『人生』を守れるのは自分自身だけなのである。
それを、僕らは忘れてはいけないのである。
「貴方自身の精神やお考えはとても尊いモノですが、一方で非常に
「・・・・・・。フフフッ。“
呆気に取られた後、暫し考え込み、セレウス様は自嘲気味に笑いそう呟いた。
「本当は貴方自身も迷っていたのではありませんか?それに、これは僕だけの考えではありませんよ。僕自身もルドベキア様やアルメリア様、頼りになる仲間達に気付かされましたからね。まぁ、確かに人と人との繋がりは、正直面倒な側面もありますけど、一人では成し得ない事が出来たりもしますしね。それに、あまり深く考える事でもないんですよ。人は人で、勝手に考えて行動するのですから、協力を募っても嫌なら拒否するだけの事です。それでも協力してくれると言うなら、それはその人の『意思』なんですから、『神』だろうと『英雄』だろうと、それをねじ曲げるのはその人に対する侮辱ではないでしょうか?僕は、そう考える様になりました。まぁ、当然『強制』はダメですけどね・・・。」
「そう、かもしれんな・・・。俺は
やはりセレウス様自身にも思うところがあったのか、僕の言葉を深く反芻してから、改めて別の案を明示してきた。
もちろん、僕としては断る理由がない。
「ええ、もちろんです。」
そう頷くのだった。
アキトが『限界突破』の『試練』をクリアした事によって、本来ならセレウス自身の『
こうして、アキトは新たな心強い『仲間』を得る事となったのであるーーー。
◇◆◇
「しかし、先程の『戦い』は見事でしたなっ!」
「
〈いやいや、そんな事はないとも。確かに
「確かに
〈ありゃ、『
「いやいや、エキドラス様。
「違いない。」「そうだなぁ。」〈なるほどのぅ。〉
〈「「「わーはっはっはっ!!!」」」〉
アキトがセレウスと邂逅している頃、アキトの仲間達は、エキドラスのもとでアキトが目覚めるのを待っていた。
そこに、『アスラ族』から献上された上質な酒とツマミ、肴に「アキト対エキドラス」の話が加われば、(もちろんそこまで酷いモノではないが)若干『戦闘狂』のきらいがあるハンス、ジーク、ユストゥスとエキドラスは、すっかり意気投合して上機嫌で酒を酌み交わしているのだった。
まぁ、何だかんだ言っても、結局『男』と言う『生き物』は、『勝負事』や何かを競い合う事が好きなのだろう。
「・・・すっかり意気投合している様だな・・・。」
「いーんじゃなぁーい?きょうはあの3人もあばれるコトはないだろうしー。」
「・・・イーナもすっかりいつも通りに戻ってしまったな。別に先程の『モード』でいつもいても良いのだぞ?」
「つかれるからいいよー。もうこっちのほうがなれてるしねー。」
それを遠巻きに見ていたメルヒとイーナは『アスラ族の集落』時とは違い、若干呆れながらも、穏やかな雰囲気で酒を嗜んでいた。
まぁ、イーナはいつもの調子に戻ってしまったのだが。
「それよりも、ティーネ殿もアイシャ殿もリサ殿も、
「そーそー。エキドラスさまもちゃんともどるっていってるんだし、しんぱいないよー。わるいケハイはかんじないしねー。」
「うっ・・・。」
「それは、分かっているんですが・・・。」
「どうもダーリンがいないと落ち着かないって言うか・・・。」
メルヒとイーナは呆れた様に『
〈そうじゃぞ、娘達よ。アキトはただ寝ている訳ではないのじゃ。そんな様子では、目覚めたアキトに
「・・・えっ!?」
「それって・・・!?」
「どういう事ですかっ!?」
そこに、それを見かねたエキドラスがいつの間にか男達の輪から外れ近付いてきて、若干酔っぱらいながらも、挑発する様にそんな事をのたまった。
もちろん、3人娘に発破を掛ける為の『方便』なのだが、その言葉に3人娘は青ざめた様に問い返した。
〈何、そのままの意味じゃ。お主らも
「「「っ!!!???」」」
それにこれはただの『方便』でもない。
エキドラスももちろん全てを理解している訳ではないが、アキトが『
アキトがこれから
〈・・・儂はアキトを含めお主らの事が気に入ったのじゃ。じゃから儂の
『世界』のバランス崩壊は、エキドラスの様な『自然崇拝』を起源とする『神々』(エキドラスはその末裔だが)に取っては見過ごせない事態だ。
とは言え、彼自身が
それ故、通常『神々』には『使徒』として『神々』の意向に沿って動く者がいるのだが、エキドラスには(『アスラ族』がそれに近しいが)残念ながらそうした存在がいなかった。
そこで目を着けたのがアキトであり、そしてその仲間達であった。
アキト自身は、アルメリアからの依頼と自身の考えから独自にその阻止の為動いているが、仲間達はアルメリアやアキトから協力を求められて快諾したモノの、どこか話が大き過ぎて半ば『現実感』がない状態だった、
しかし、エキドラスからこのままではアキトの『足手まとい』になるかもと諭されてようやくハッとするのだった。
アイシャ達は、お互い顔を見合わせ頷き合う。
彼女達は、『
「いえ、是非お願いしますっ!」
代表してアイシャが力強く応えた。
エキドラスはその『答え』に満足そうに頷いた。
〈うむっ!いちいちいやらしい言い方をして悪かったのぅ。しかし、儂にも色々と“事情”があるのじゃ。〉
「いえ、私達もエキドラス様のお言葉で目が覚めましたのでお気になさらないで下さい。」
〈うむ、すまんな。どれ、『
「「「「「「「「はいっ!!!」」」」」」」」
こうして、アキトがセレウスと邂逅している間に、アキトの『
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