第71話 セレウスとの密談



◇◆◇



「さて、それでは、これからの事なんですが・・・。」

「フフフッ、しかし『』とは言い得て妙だな。『信仰』の『力』と言うのも、存外“元〇玉”みたいなモノ、いや、俺とお前の関係も含めると、“ペ〇ソナ”みたいモノだしなっ!」

「やめてっ!?っつか、せっかくカッコつけたのに、先程の会話云々うんぬんがどの辺からしているかがバレバレだったんすかっ!?ってか何ですかっ!?神様の間で流行ってるんですか、日本のオタク文化っ?アルメリア様もそうでしたしっ!」

「いやいや、別に恥ずかしがる必要はねぇさ。フォローする訳じゃないが、何から学ぶかは人それぞれだし、その言葉で他者の心が動くなら、それが例えだったとしてもそれはお前自身の『言葉』だからな。それとアルメリアの嬢ちゃんのは完全に個人の趣味だが、俺はお前を介して一緒に『』いたから、それでモロに影響を受けちまったのよ。そうそう、今度『』がある時にでも俺の『』に案内するぜ?今現在の『作品モノ』は流石に無理だが、過去の『作品モノ』なら結構色々取り揃えているからよっ!お前も、こっちの世界アクエラに来てから随分経ったし、『オタク的コンテンツ』には結構飢えてるんじゃねぇか?」


うっ・・・、ツッコミどころは満載だが、それに関しては正直図星だったりする。

ある程度慣れたとは言え、向こうの世界地球こちらの世界アクエラではやはり『生活環境』に歴然の差があるからねぇ~。

ま、『転生』当初は“レベリング”やら『魔法技術』の習得やらに夢中になっていて、ある意味それどころじゃなかったんだけど、それにも慣れてくると、人は現金なもので『娯楽』にも飢えてくるモノだ。

特に『前世』の記憶をはっきり持っている“元・現代人”である僕としては、『TV』、『ネット』、『ゲーム』、『漫画』などの『コンテンツ』はやはりは恋しかったのである。

まぁ、『ゲーム(レトロゲー)』に関してはアルメリア様の『私室』で結構やってはいたんだが・・・。

ま、まぁ、それはともかく、とりあえずはそんな発言が飛び出すほどにはセレウス様の『心』にも余裕が生まれたと解釈しておこう、うん。

アルメリア様の例もあるから、『神』と呼ばれる『存在』ってのも案外“俗っぽい”のかもしれんしな。


「ま、まぁ、それはその内に・・・。ってか、貴方の『』ってどういう事ですかっ!?」

「ん?俺はお前に『宿』いるからなぁ~。お前の『心の中』っつーか『個人的無意識』と『普遍的無意識』の『狭間』に、使われていない『領域』があったから、そこを『間借り』させてもらって『』をしてそこに住んでいるのよ。」

「アンタ人ん家の『心の中』で何好き勝手やっとんのじゃっ!!」

「ままま、そう言うなって。お前に悪影響はねーし、これでもお前の『プライバシー』にも配慮してるんだぜ?こうでもしねぇと、お前の『プライベート』を四六時中覗き見する事になっちまうしよ~。」

「それはっ!?・・・ドウモアリガトウゴザイマス・・・。」

「おう、いいってことよ。」


ま、まぁ、ぼ、僕もだからねっ!

人に知られたら恥ずかしい『秘密』の一つや二つはあるよ、そりゃまぁ、うん・・・。


「ゴホンッ!・・・それで、これからの事ですが(キリッ)っ!」

「(誤魔化したな・・・。ま、そっとしといてやろう。)ああ、そうだな。まず、当面の問題なんだけどな・・・。」

「はいっ!」(食い気味)

「・・・。え、え~と、『ライアド教』に『召喚』されちまった『地球人』達への対応だ。これに関しては、アルメリアの嬢ちゃんの狙い通り、お前が『限界突破』の『試練』をクリアした事で“対処”が可能となった。」

「そういえば、そんな様な事を仰ってましたね・・・。けど、僕は具体的な方法は何も知らんのですが・・・。」

「そこはそれ、。」

「・・・へっ?」


ドーユーコト?


「本来なら『神々』ってのは、この世界アクエラでは『アストラル体』だけの『存在』ってのが基本なんだが、仮にに『顕現』したとしても、『神々』の『役割』から逸脱出来ない『制限』や『制約』がある訳よ。これによって、『世界』のバランスが一定にたもたれているんだな。」

「ふむふむ。」


これに関してはある程度予測はしていた。

実際『神々』はこの世界アクエラに色々と干渉している様だが、その一方で『神々』介入する事は『歴史』や『伝承』なんかを紐解いてみても極めて稀だしね。


「だがしかし、その点俺はこの世界アクエラでは『神の座』から追われている立場だ。言うなれば今の俺は『野良神』みてーなモンだな。だからこそ、もちろん一応の『神々』としての『制限』や『制約』はあるものの、『役割』に縛られる事もないって訳だ。」

「なるほどぉ~。ってか、『野良神』って・・・。貴方も大分『オタク文化』に毒されてるみたいっすね・・・。」

「けど間違ってはいないだろ?これでも俺も『神』の端くれだから、『。」

「ああっ!なるほどっ!」


『至高神ハイドラス』は、当然『召喚』された『地球人』達の『導き手』のポジションを得ている筈だから、『至高神ハイドラス』とその『地球人』達との間にも『縁』が出来ている筈だ。

通常なら、そうなってしまった場合は他の『神々』が介入する事は極めて困難となるが、セレウス様の様な『立場』ならそれも可能となる訳か。


「そういうこった。まぁ、その『縁』を『』に斬るか、『』に斬るかは、その『召喚』された『地球人』達の“在り方”次第だがな。冷たい様だが、『ハイドラス派』に傾倒してこちらの世界アクエラに“災厄”をもたらす『存在』に成り下がっている様なら、本人達の為にも、にでも『魂』を向こうの世界地球に送り返してやらんと、に『魂』となっても未来永劫この世界アクエラで苦しむハメになるしれんからな。」

「・・・あれ?まぁ、それについては今更僕も反対はしませんが、別の『世界線』の『魂』でも、一応こちらの世界アクエラでも帰化するんじゃありませんでしたっけ?」


まぁ、今となっては結構古い記憶なので詳しくは覚えてないが、『転生』当初にアルメリア様からそんな様な説明を受けた覚えがある。


「う~ん、それについてはまぁ見解の相違だな。なんと言っても、そもそもこちらの世界アクエラでは有史以来別の『世界線』からの『魂』の流入を招いた事がないからなぁ~。お前も知っての通り、この世界アクエラには『召喚魔法』がないから『異世界転生』や『異世界転移』自体がほぼ不可能に近い。ま、お前の場合は『至高神ハイドラス』からの干渉+『英雄の因子』が原因で、今回の『召喚』された『地球人』達の場合は『失われし神器ロストテクノロジー』+『フルダイブ技術』が原因で、それぞれその『前提』が崩れちまった訳だが、どちらにせよ、まだそれぞれが死んだ後の事はがない訳だ。あ、後俺が向こうの世界地球に飛ばされた様な『時空の歪み』でもある意味それが可能だが、これは考えるだけ無駄だな。俺ら『高次元』の『存在』ならともかく、『人間種』が『時空の歪みそれ』に巻き込まれた時点で100%死ぬから。」

「なにそれこわっ!しかし、なるほど。つまり、がないからこそ、これから起こりうる事は『予測』でしかない、と言う事ですね?」

「そそっ。ルドベキアの嬢ちゃん、アルメリアの嬢ちゃん、俺とでそれぞれ見解は異なるんだが、別の『世界線』の『魂』がこの『世界』のバランスに悪影響をもたらす要因となるって点では概ね見解が一致している。で、俺は、その『』が、上手く帰化出来ずに『システム』から弾かれた『魂』が、色々な悪い『』を集めた末に『怨霊化』して起こす事だと考えているって訳だ。もっとも、その『結果』を確認するつもりも、ただ傍観するつもりもないけどな。」

「なるほどねぇ~。」


100%の確証はないかもしれんが、最悪の場合はこの世界アクエラに大いなる“災厄”がもたらされるかもしれんのだから、それをただ黙って見ている、などと言う『選択』は流石に取れんわな。

まぁ、巻き込まれてしまった『地球人』達には申し訳ないが、事はこの世界アクエラの『命運』を左右するの事なので、場合によっては『強制退場』して貰わなければならない。

ただでさえ、この世界アクエラは厳しい世界で、しかも『法律』も『人権』も有って無い様なモノだ。

流石に、僕らも有無を言わさずに『地球人』達彼らを『攻撃』つもりは毛頭ないが、『交渉』のテーブルに着くならばともかく、あくまでも『敵対』すると言うならば、いくら『同郷』といえども僕も容赦するつもりはない。

まぁ、それもその人の『選択』次第だけどね。


「あれ?でも、『縁』を斬れても向こうの世界地球に送り返すのは難しいのでは?」

「それは俺の『神霊力しんれいりょく』を使えば問題ないし、当初のとは大分違ってきているが、お前が協力してくれるってんなら、俺の負担もより軽くて済む。お前とルドベキアの嬢ちゃんの『リンク』を利用させて貰えばな。」

「ああ、なるほど。」


いや、僕もよく分かってはいないのだが、セレウス様が出来るっつーなら出来るんだろう。

僕とルドベキア様の間に『リンク』があるのは、ルドベキア様本人やアルメリア様も明言している訳だし。

僕と“繋がってる”って事は、当然“一心同体”であるセレウス様とも“繋がってる”って訳だから、それを何だかに利用するって事なんだろう、多分。


「『召喚』された『地球人』達への対応策、『世界』のバランス崩壊に対する対処法は分かりました。で?セレウス様の『最終目的』は何ですか?『決着』がどうのって仰っていましたけど。」

「・・・。ま、今更隠しても仕方ないか・・・。俺の『最終目的』は『至高神ハイドラス』を“”させる事さ。ヤツにはちっとばっかり『借り』があるんでね・・・。」

「“”ときましたか・・・。」


何やら穏やかではないなぁ~。

まぁ、とは言え僕自身も『至高神ハイドラス』には『借り』がある身の上だから、セレウス様のその発言も分からなくはないけどね?

セレウス様の過去のから察するに、セレウス様と『至高神ハイドラス』との間には、何やらただならぬ『因縁』がありそうだし。


「ま、それに関しては俺とお前である意味『目的』は一致しているだろ?」

「そう、ですね。その為に『リベラシオン同盟』を立ち上げた訳ですし、『地球人』達への対応の為に、こうして『限界突破』を果たした訳ですしね。まぁ、もっとも、僕には『高次元』の『存在』を滅する方法など思い当たりませんでしたので、『ハイドラス派』の『力』を削ぐ程度が関の山で、『根本的原因』の排除までは不可能だろうと考えていましたが・・・。」

「まぁ、ぶっちゃけのお前ならやってやれない事ではないんだけどな?しかし、わざわざお前が『神殺し』の汚名をこうむる必要はねぇよ。『神々』の仕出かした事は、同じ『神々』できっちり落とし前をつけるさ。」

「えっ?僕って『神殺し』が可能なんですかっ!?いや、もちろん率先してやりたい訳じゃありませんけど・・・。」


向こうの世界地球の『神話』や『伝承』なんかにも、結構そうした『神殺し』の『逸話』なんかもあったりするんだけど、こちらの世界アクエラと違って『神々』の『存在』はかなり『抽象的』で『曖昧』だったりする。


例えば、『自然』そのものを『神格化』した場合は、『土木技術』や『治水技術』が発展した事により、『自然』の支配からの“脱却”をさして『神殺し』とする場合もある。


(例えば、日本における『人身御供』とそれを要求する『化け物』あるいは『神』、そしてそれを『退治する者』って構図の『昔話』や『童話』は、もちろんそれぞれ説があるだろうが、一説には『文化の発展』を比喩したモノであるとも言われている。)


あるいは、『自然界』の強者をさして『神』と呼び、それを退治する事を『神殺し』とする場合もある。


また、こちらの世界アクエラと同じく『神々』は純粋に『高次元』の『存在』とされる場合もあるし、その場合の『神殺し』は、同じ『神々』であるパターンであり、人では到底手が届かない事とする場合もある。


そして、こちらの世界アクエラにおける『神々』は『高次元』の『存在』である『アストラル体』であり、僕ら『人間種』には特殊な状況下だったり、特殊な『才能』を持たない者では、知覚する事も居場所を突き止める事もほぼ不可能に近い。

つまり、『ゲーム』で言うところの『諸悪の根源ラスボス』を倒せば済むと言う単純な方法が取れないのである。

故に、その次善策として打ち出したのが『信仰』そのもの、あるいは『母体』そのものの『力』を低下させると言う間接的な手段であった訳だ。

それが、ここに来て『根本的原因』そのものを排除する事が可能だとはねぇ・・・。


「まぁ、確かに可能だがお前が気にする事じゃないさ。これは先程の“一人で背負い込む事”云々うんぬんとはまた別の話だ。お前達がお前達に出来る事をやるのと同じ様に、『神々俺達』には『神々俺達』の出来る事をやるべきさ。一応『役割分担』ははっきりさせておいた方がいいかと思ってな。」

「ま、それはそうですね。」


セレウス様も、一種の『』として僕にも『至高神ハイドラス』を討つ事が可能であると明言しただけで、その『役割』を他者に譲るつもりはないのだろう。

もちろん、僕としても、ただならぬ『因縁』があるだろうセレウス様からその『役割』を横取りするつもりは毛頭ないからな。

ま、場合によってはその限りじゃないけれど・・・。


「しかし、ここまで話しておいて何だが、いずれにせよ、当面はお前が打ち出した様に『リベラシオン同盟』を介して『ライアド教(ハイドラス派)』の『力』そのものを少しずつ削ぎ落としていきつつ、お前と仲間達は『失われし神器ロストテクノロジー』などの捜索。発見した場合は、ヤツらに渡さない為に、もしくはする事に徹した方が良いだろうな。」


肩を竦めながらセレウス様はそう言う。

僕もその意見には賛成だ。


「まぁ、それはそうですね。僕らは『ライアド教』、それも『至高神ハイドラス』と『ハイドラス派』が『諸悪の根源』であると知っていますが、大半の人々はその『事実』を知らない訳ですからね。いきなりケンカふっかけたら僕らが『悪者』になっちゃいますし、巨大な『宗教団体』と『強国』である『ロンベリダム帝国』相手に流石にそれは分が悪い。ま、相手の出方次第ってのは、対応が後手に回っている様でですが・・・。」

「まぁ、一気にカタをつけられないのは多少歯痒いわな。しかし、考えようによっては、『時間』に猶予があるのは、こちらに取っても都合が良いんだぜ?『召喚』された『地球人』に対処する為にももちろんお前の『限界突破』は必須だった訳だが、例え『限界突破』を果たしてなくとも、ぶっちゃけお前達なら『地球人』達彼ら退は可能だったからなぁ。」

「へっ?そうなんですか?」


まぁ、仮に退ける事が可能だったとしても、『縁』をどうこうする事は僕らだけでは不可能だったから、いずれにせよ僕の『限界突破』は必須だった訳だが、でも確か、『召喚』された『地球人』達も僕と同じく(ま、今や僕は『限界突破』を果たした身だが)“レベル500カンスト”の『圧倒的強者』だった筈だが。

僕はもとかく、仲間達では若干荷が重いのではないだろうか?

いや、確かに仲間達が一方的にやられる図は想像出来んけど・・・。


「いやいや、お前重要な事を忘れているぞ?確かに『召喚』された『地球人』達の『ステイタス』上の『性能』は、下手すりゃ今のお前に匹敵するモノだが、その『中身』は、『達人』には程遠いズブの『一般人素人』達だぞ?それこそ、この世界アクエラで地道に『経験』を積み重ねてきたお前達とでは『経験値』の点で天と地程の差がある。ま、それでもこの世界アクエラな『S級冒険者』クラスの者達では確かに荷が重いかもしれんが、お前とアルメリアの嬢ちゃんの考案した特殊な『トレーニング方法』を実践したきたお前の仲間達なら、覆せないほどの『性能差』じゃねぇよ。」

「あっ・・・。」


言われてみればその通りだし、僕も一度はそう考えた筈だ。

しかし、僕もこちらの世界アクエラの『生活』が長くなったから、すっかり“レベル500カンスト”の数値に気を取られ、その『召喚』された『地球人』が特殊な『職業』だったり、某かの『武道』でも嗜んでいない限り、向こうの世界地球の『』が本格的な“”を身に付けている事の方が稀である事をうっかり失念していた。

僕自身も、こちらの世界アクエラに来るまでは、もちろん『スポーツ』ぐらいは嗜んでいたが、本格的な“戦う術”など知らなかったからなぁ~。

仲間達が一方的にやられる図が想像つかなかったのも、その『違和感』があったからか。


「そういうこった。そしてもっとも重要なのは、『地球人』達彼らには高度な『戦闘考察力』が全くない事だ。『ステイタス』由来の身体能力にはある程度慣れる事が可能だし、『実戦経験』を積む事も出来るが、『戦闘考察力これ』ばかりは一朝一夕では身に付かないからな。。ま、そんな事は通常ありえないんだがな・・・。」

「なるほど、確かに。」



『戦闘考察力』。

つまり、『思考』の『高速化』、あるいは『思考』の『瞬発力』の事である。

『強者』同士が戦う場合、常人では考えられないスピードでの攻防が行われる。

もちろんその驚異的な身体能力にも目を見張るモノがあるのだが、それよりも注目すべき点は、その“刹那”とも言える時間の中で行動を“取捨選択”する『思考力』の方である。

これにより、に所謂『戦闘コマンド』、“攻撃”・“防御”・“避ける”・“逃げる”などを判断・選択し、それがお互いどちらかが倒れるまで

これは完全に『経験』に由来する『スキル』であり、通常ではありえない事であるが、には身に付かない『スキル』でもある。

なぜなら、圧倒的な『力量差』故に考える間もなく相手が倒れてしまうから、その『スキル』を研鑽する機会がないからである。

また、『ゲーム』においては、『格ゲー』などでとてつもない『瞬発力』・『反射神経』を発揮する『プレイヤー』達もいるが、それも結局この世界アクエラでは通用しない『スキル』である。

なぜなら、『プレイヤー』は“己の肉体”で戦っていないので、“実際の戦闘”におけるリアルな『空気感』、相手からの『プレッシャー』、急速に失われる『体力』と『思考力』に対応出来ずに、それらを発揮する間もなくからである。



「クルマで例えると、『地球人』達彼らがいくら『性能』の良い“モンスターマシン”に乗っていても、単純な“ストレート勝負”ならまだしも、複雑な“コース勝負”が必要な“実際の戦闘”においては、『性能差』があれどお前の仲間達が後れを取る事はないって事さ。まぁ、とは言え、大半の場合はその単純な“ストレート勝負”で勝敗が決してしまうんだけどな。」

「なんで急にクルマで例えたんすかっ!?いや、分かり易いけども。」

「えっ?『メカ』や『マシン』は男のロマンだろ?」


いや、そんな何言ってんだコイツみたいな顔されましても・・・。

しかし、所謂『チート』ってのも、この世界アクエラじゃ考えモノだよねぇ~。

単純な“俺TUEEEE”が出来ないから、しっかりとこの世界アクエラの『ルール』と自分の『実力(出来る事)』を把握しておかないと、思わぬ『落とし穴』があるからね。

ま、『チート』に限らず、天狗になっていると足元をすくわれるのは、どこの『世界』でも同じだけど。

まぁ、『英雄の因子』っつー『チート』持ちの僕が言う事じゃないけどさ。


「それに、お前の仲間達は、『人化』状態の『山の神』に稽古着けてもらってるみたいだぜ?お前の『足手まとい』にならない様にだとよ。健気なモンじゃねぇか。」

「え、そうなんですか?『足手まとい』なんて思った事ないけど・・・。」

「ま、多分『山の神』の『方便』だろうけど、『限界突破』を果たしたお前と仲間達では、確かにどんどん『レベル』が離れる可能性はあるわな。それに『山の神』との稽古は、意外と理にかなっているかもしれんぞ?『山の神』の起源は『自然崇拝』から来るモノだから、強大な『力』を持っていても、“戦い方”自体はメチャクチャだろうからな。お前達の感覚から行くと、『強者』ってのは何かしらの『達人』であると考えるかもしれんが、『神々』や『モンスター』や『魔獣』にはそんな道理は通用しないからなぁ。」

「確かに・・・。しかし、待てよ。『召喚』された『地球人』達もある意味エキドラス様と似たタイプになる訳か。『ステイタス』上は『圧倒的強者』であるにも関わらず、“戦い方”はズブの『一般人素人』。だからこそ、何をしてくるか分からない“怖さ”もある。そして、エキドラス様との『稽古』を『経験』をしておけば、『地球人』達に対するある程度の『シミュレーション』になる、と言う訳か。」

「ま、そうだな。『山の神』も、『制約』やら『役割』があるから彼自身は動けない。そこで目を付けたのがお前の仲間達だったってトコだろう。彼自身も『自然崇拝』が起源の『神々』の末裔だから、『世界』のバランス崩壊は望むべきモノじゃないからなぁ。」

「なるほど。確か『世界』のバランス崩壊に無頓着なのは『人神』だけでしたモンね。」

「そっ。」


肩を竦めて“やれやれ”といったをするセレウス様。

それは僕も同じ気持ちだが。


「ま、そんな訳で、『ライアド教(ハイドラス派)』や『ロンベリダム帝国』にどんな思惑があろうと、『時間』を掛ければ掛けるほどお前達に取ってもメリットがあるって訳さ。」

「ふむふむ。」


そこで、セレウス様のから何やら光の粒子が溢れてきた。


「あぁ~、はここまでだな。お前の『霊能力』だとここら辺が『限界』か。」

「“表”に出てくる云々うんぬんって話ですか?」

「そっ。あぁ~、そうだな。最後にお前の『限界突破』後の“レベリング方法”についてレクチャーしとくか。」

「?『限界突破』後はこれまでの“レベリング方法”ではダメなんですか?」


確かアルメリア様の話では、『限界突破』後にレベル1000まで上げる事が可能って事だったが・・・。


「それ自体は間違ってないけど、現状でもお前の『肉体的能力』は『人間種』としてはありえないくらいの『力』を持つに至っている。ま、ここからは『制約』に抵触するから詳しくは説明出来ないんだが、お前の『霊能力』云々うんぬんって話からも分かる通り、『限界突破』後は、『精神』と『霊魂』を鍛える事が“キモ”になってくる。具体的には、『徳を積む事』だな。」

「ふむふむ。」

向こうの世界地球にも似たような『修行法』があるけど、他者に対して『善行を積む事』は、己の『精神修養』であると同時にお前に対する『プラス』の感情が他者からもたらされる事でもある。先程の『』や“元〇玉”・“ペ〇ソナ”云々うんぬんじゃないが、そうして集まった『信頼』あるいは一種の『信仰』と言っても良いかもしれないが、がお前の『精神』や『霊魂』を強化してくれるんだよ。ま、『限界突破』の研鑽が必要だったのに対して、『限界突破』への奉仕が必要ってこったな。」

「・・・案外セレウス様の先程の発言も冗談じゃなかったんすね・・・。しかし、なるほど。それなら確かに、これまでの“レベリング方法”だけではダメですね。」

「そういうこった。どうせお前達は『リベラシオン同盟』を離れて『失われし神器ロストテクノロジー』などの捜索に当たる事になるんだし、そのついでと言っては何だが、困ってる連中がいたらに手助けしてやればいいさ。」

「分かりました。」


確かにこれまでも目の前に襲われている人がいたら介入したけど、仲間達の“事情”から、に介入する事はなかったからなぁ。

何と言っても、『ロマリア王国この国』では『他種族』を忌避される傾向にあるからね。

しかし、これからはそこら辺も考慮しつつ、他者に関わっていく事も必要になるって訳か。

考え方によったら、もちろん僕の“レベリング”の事もあるが、仲間達の評判が高まれば、結果的に『他種族』に対する認識を改めるキッカケとなるかもしれない。

そうした意味でも、この“レベリング方法”を実践するのは大きな意味があるかもしれないな。

ま、それでも『差別』や『偏見』の根は深いから、その程度では「焼け石に水」かもしれないが、何もしないよりはよっぽどマシだろうしね。


「それと、俺と“コンタクト”を取りたい時は、『心の中』で俺を“喚んで”みな。ま、はもう無理だが、お前の『霊能力』の強化によっては、俺の『顕在化』出来る時間も長くなるからな。つか、俺も少しばかりこっちの世界アクエラで『』せんとならんから、寝る時にでも“喚んで”くれや。偶然『至高神ハイドラスヤツ』に遭遇する可能性はほぼないだろうが、『地球人』達に遭遇する可能性はあるから、念の為にな。」

「なるほど、分かりました。」


言い方はアレだが、長年僕の『心の中』で“引きこもり”だったセレウス様としては、“表”に出る機会は多い方が良いだろう。

ま、僕の今現在の『霊能力』では、『顕在化』出来る時間が極めて短い様なので、いざという時の為にも、セレウス様を“喚ぶ”タイミングは注意しておこう。


「んじゃ、またな、アキト。」

「ええ、また。」


セレウス様が“消える”と同時に、僕の『意識』も少しずつ遠退いていくのだったーーー。


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