第71話 セレウスとの密談
◇◆◇
「さて、それでは、これからの事なんですが・・・。」
「フフフッ、しかし『
「やめてっ!?っつか、せっかくカッコつけたのに、先程の会話
「いやいや、別に恥ずかしがる必要はねぇさ。フォローする訳じゃないが、何から学ぶかは人それぞれだし、その言葉で他者の心が動くなら、それが例え
うっ・・・、ツッコミどころは満載だが、それに関しては正直図星だったりする。
ある程度慣れたとは言え、
ま、『転生』当初は“レベリング”やら『魔法技術』の習得やらに夢中になっていて、ある意味それどころじゃなかったんだけど、それにも慣れてくると、人は現金なもので『娯楽』にも飢えてくるモノだ。
特に『前世』の記憶をはっきり持っている“元・現代人”である僕としては、『TV』、『ネット』、『ゲーム』、『漫画』などの『コンテンツ』はやはりは恋しかったのである。
まぁ、『ゲーム(レトロゲー)』に関してはアルメリア様の『私室』で結構やってはいたんだが・・・。
ま、まぁ、それはともかく、とりあえずはそんな発言が飛び出すほどにはセレウス様の『心』にも余裕が生まれたと解釈しておこう、うん。
アルメリア様の例もあるから、『神』と呼ばれる『存在』ってのも案外“俗っぽい”のかもしれんしな。
「ま、まぁ、それはその内に・・・。ってか、貴方の『
「ん?俺はお前に『
「アンタ
「ままま、そう言うなって。お前に悪影響はねーし、これでもお前の『プライバシー』にも配慮してるんだぜ?こうでもしねぇと、お前の『プライベート』を四六時中覗き見する事になっちまうしよ~。」
「それはっ!?・・・ドウモアリガトウゴザイマス・・・。」
「おう、いいってことよ。」
ま、まぁ、ぼ、僕も
人に知られたら恥ずかしい『秘密』の一つや二つはあるよ、そりゃまぁ、うん・・・。
「ゴホンッ!・・・それで、これからの事ですが(キリッ)っ!」
「(誤魔化したな・・・。ま、そっとしといてやろう。)ああ、そうだな。まず、当面の問題なんだけどな・・・。」
「はいっ!」(食い気味)
「・・・。え、え~と、『ライアド教』に『召喚』されちまった『地球人』達への対応だ。これに関しては、アルメリアの嬢ちゃんの狙い通り、お前が『限界突破』の『試練』をクリアした事で“対処”が可能となった。」
「そういえば、そんな様な事を仰ってましたね・・・。けど、僕は具体的な方法は何も知らんのですが・・・。」
「そこはそれ、
「・・・へっ?」
ドーユーコト?
「本来なら『神々』ってのは、
「ふむふむ。」
これに関してはある程度予測はしていた。
実際『神々』は
「だがしかし、その点俺は
「なるほどぉ~。ってか、『野良神』って・・・。貴方も大分『オタク文化』に毒されてるみたいっすね・・・。」
「けど間違ってはいないだろ?これでも俺も『神』の端くれだから、『
「ああっ!なるほどっ!」
『至高神ハイドラス』は、当然『召喚』された『地球人』達の『導き手』のポジションを得ている筈だから、『至高神ハイドラス』とその『地球人』達との間にも『縁』が出来ている筈だ。
通常なら、そうなってしまった場合は他の『神々』が介入する事は極めて困難となるが、セレウス様の様な『立場』ならそれも可能となる訳か。
「そういうこった。まぁ、その『縁』を『
「・・・あれ?まぁ、それについては今更僕も反対はしませんが、別の『世界線』の『魂』でも、一応
まぁ、今となっては結構古い記憶なので詳しくは覚えてないが、『転生』当初にアルメリア様からそんな様な説明を受けた覚えがある。
「う~ん、それについてはまぁ見解の相違だな。なんと言っても、そもそも
「なにそれこわっ!しかし、なるほど。つまり、
「そそっ。ルドベキアの嬢ちゃん、アルメリアの嬢ちゃん、俺とでそれぞれ見解は異なるんだが、別の『世界線』の『魂』がこの『世界』のバランスに悪影響をもたらす要因となるって点では概ね見解が一致している。で、俺は、その『
「なるほどねぇ~。」
100%の確証はないかもしれんが、最悪の場合は
まぁ、巻き込まれてしまった『地球人』達には申し訳ないが、事は
ただでさえ、
流石に、僕らも有無を言わさずに『
まぁ、それもその人の『選択』次第だけどね。
「あれ?でも、『縁』を斬れても
「それは俺の『
「ああ、なるほど。」
いや、僕もよく分かってはいないのだが、セレウス様が出来るっつーなら出来るんだろう。
僕とルドベキア様の間に『リンク』があるのは、ルドベキア様本人やアルメリア様も明言している訳だし。
僕と“繋がってる”って事は、当然“一心同体”であるセレウス様とも“繋がってる”って訳だから、それを何だか
「『召喚』された『地球人』達への対応策、『世界』のバランス崩壊に対する対処法は分かりました。で?セレウス様の『最終目的』は何ですか?『決着』がどうのって仰っていましたけど。」
「・・・。ま、今更隠しても仕方ないか・・・。俺の『最終目的』は『至高神ハイドラス』を“
「“
何やら穏やかではないなぁ~。
まぁ、とは言え僕自身も『至高神ハイドラス』には『借り』がある身の上だから、セレウス様のその発言も分からなくはないけどね?
セレウス様の過去の
「ま、それに関しては俺とお前である意味『目的』は一致しているだろ?」
「そう、ですね。その為に『リベラシオン同盟』を立ち上げた訳ですし、『地球人』達への対応の為に、こうして『限界突破』を果たした訳ですしね。まぁ、もっとも、僕には『高次元』の『存在』を滅する方法など思い当たりませんでしたので、『ハイドラス派』の『力』を削ぐ程度が関の山で、『根本的原因』の排除までは不可能だろうと考えていましたが・・・。」
「まぁ、ぶっちゃけ
「えっ?僕って『神殺し』が可能なんですかっ!?いや、もちろん率先してやりたい訳じゃありませんけど・・・。」
例えば、『自然』そのものを『神格化』した場合は、『土木技術』や『治水技術』が発展した事により、『自然』の支配からの“脱却”をさして『神殺し』とする場合もある。
(例えば、日本における『人身御供』とそれを要求する『化け物』あるいは『神』、そしてそれを『退治する者』って構図の『昔話』や『童話』は、もちろんそれぞれ説があるだろうが、一説には『文化の発展』を比喩したモノであるとも言われている。)
あるいは、『自然界』の強者をさして『神』と呼び、それを退治する事を『神殺し』とする場合もある。
また、
そして、
つまり、『ゲーム』で言うところの『
故に、その次善策として打ち出したのが『信仰』そのもの、あるいは『母体』そのものの『力』を低下させると言う間接的な手段であった訳だ。
それが、ここに来て『根本的原因』そのものを排除する事が可能だとはねぇ・・・。
「まぁ、確かに可能だがお前が気にする事じゃないさ。これは先程の“一人で背負い込む事”
「ま、それはそうですね。」
セレウス様も、一種の『
もちろん、僕としても、ただならぬ『因縁』があるだろうセレウス様からその『役割』を横取りするつもりは毛頭ないからな。
ま、場合によってはその限りじゃないけれど・・・。
「しかし、ここまで話しておいて何だが、いずれにせよ、当面はお前が打ち出した様に『リベラシオン同盟』を介して『ライアド教(ハイドラス派)』の『力』そのものを少しずつ削ぎ落としていきつつ、お前と仲間達は『
肩を竦めながらセレウス様はそう言う。
僕もその意見には賛成だ。
「まぁ、それはそうですね。僕らは『ライアド教』、それも『至高神ハイドラス』と『ハイドラス派』が『諸悪の根源』であると知っていますが、大半の人々はその『事実』を知らない訳ですからね。いきなりケンカふっかけたら僕らが『悪者』になっちゃいますし、巨大な『宗教団体』と『強国』である『ロンベリダム帝国』相手に流石にそれは分が悪い。ま、相手の出方次第ってのは、対応が後手に回っている様で
「まぁ、一気にカタをつけられないのは多少歯痒いわな。しかし、考えようによっては、『時間』に猶予があるのは、こちらに取っても都合が良いんだぜ?『召喚』された『地球人』に対処する為にももちろんお前の『限界突破』は必須だった訳だが、例え『限界突破』を果たしてなくとも、ぶっちゃけお前達なら『
「へっ?そうなんですか?」
まぁ、仮に退ける事が可能だったとしても、『縁』をどうこうする事は僕らだけでは不可能だったから、いずれにせよ僕の『限界突破』は必須だった訳だが、でも確か、『召喚』された『地球人』達も僕と同じく(ま、今や僕は『限界突破』を果たした身だが)“
僕はもとかく、仲間達では若干荷が重いのではないだろうか?
いや、確かに仲間達が一方的にやられる図は想像出来んけど・・・。
「いやいや、お前重要な事を忘れているぞ?確かに『召喚』された『地球人』達の『ステイタス』上の『性能』は、下手すりゃ今のお前に匹敵するモノだが、その『中身』は、『達人』には程遠いズブの『
「あっ・・・。」
言われてみればその通りだし、僕も一度はそう考えた筈だ。
しかし、僕も
僕自身も、
仲間達が一方的にやられる図が想像つかなかったのも、その『違和感』があったからか。
「そういうこった。そしてもっとも重要なのは、『
「なるほど、確かに。」
『戦闘考察力』。
つまり、『思考』の『高速化』、あるいは『思考』の『瞬発力』の事である。
『強者』同士が戦う場合、常人では考えられないスピードでの攻防が行われる。
もちろんその驚異的な身体能力にも目を見張るモノがあるのだが、それよりも注目すべき点は、その“刹那”とも言える時間の中で行動を“取捨選択”する『思考力』の方である。
これにより、
これは完全に『経験』に由来する『スキル』であり、通常ではありえない事であるが、
なぜなら、圧倒的な『力量差』故に考える間もなく相手が倒れてしまうから、その『スキル』を研鑽する機会がないからである。
また、『ゲーム』においては、『格ゲー』などでとてつもない『瞬発力』・『反射神経』を発揮する『プレイヤー』達もいるが、それも結局
なぜなら、『プレイヤー』は“己の肉体”で戦っていないので、“実際の戦闘”におけるリアルな『空気感』、相手からの『プレッシャー』、急速に失われる『体力』と『思考力』に対応出来ずに、それらを発揮する間もなく
「クルマで例えると、『
「なんで急にクルマで例えたんすかっ!?いや、分かり易いけども。」
「えっ?『メカ』や『マシン』は男のロマンだろ?」
いや、そんな何言ってんだコイツみたいな顔されましても・・・。
しかし、所謂『チート』ってのも、
単純な“俺TUEEEE”が出来ないから、しっかりと
ま、『チート』に限らず、天狗になっていると足元をすくわれるのは、どこの『世界』でも同じだけど。
まぁ、『英雄の因子』っつー『チート』持ちの僕が言う事じゃないけどさ。
「それに、お前の仲間達は、『人化』状態の『山の神』に稽古着けてもらってるみたいだぜ?お前の『足手まとい』にならない様にだとよ。健気なモンじゃねぇか。」
「え、そうなんですか?『足手まとい』なんて思った事ないけど・・・。」
「ま、多分『山の神』の『方便』だろうけど、『限界突破』を果たしたお前と仲間達では、確かにどんどん『レベル』が離れる可能性はあるわな。それに『山の神』との稽古は、意外と理にかなっているかもしれんぞ?『山の神』の起源は『自然崇拝』から来るモノだから、強大な『力』を持っていても、“戦い方”自体はメチャクチャだろうからな。お前達の感覚から行くと、『強者』ってのは何かしらの『達人』であると考えるかもしれんが、『神々』や『モンスター』や『魔獣』にはそんな道理は通用しないからなぁ。」
「確かに・・・。しかし、待てよ。『召喚』された『地球人』達もある意味エキドラス様と似たタイプになる訳か。『ステイタス』上は『圧倒的強者』であるにも関わらず、“戦い方”はズブの『
「ま、そうだな。『山の神』も、『制約』やら『役割』があるから彼自身は動けない。そこで目を付けたのがお前の仲間達だったってトコだろう。彼自身も『自然崇拝』が起源の『神々』の末裔だから、『世界』のバランス崩壊は望むべきモノじゃないからなぁ。」
「なるほど。確か『世界』のバランス崩壊に無頓着なのは『人神』だけでしたモンね。」
「そっ。」
肩を竦めて“やれやれ”といった
それは僕も同じ気持ちだが。
「ま、そんな訳で、『ライアド教(ハイドラス派)』や『ロンベリダム帝国』にどんな思惑があろうと、『時間』を掛ければ掛けるほどお前達に取ってもメリットがあるって訳さ。」
「ふむふむ。」
そこで、セレウス様の
「あぁ~、
「“表”に出てくる
「そっ。あぁ~、そうだな。最後にお前の『限界突破』後の“レベリング方法”についてレクチャーしとくか。」
「?『限界突破』後はこれまでの“レベリング方法”ではダメなんですか?」
確かアルメリア様の話では、『限界突破』後にレベル1000まで上げる事が可能って事だったが・・・。
「それ自体は間違ってないけど、現状でもお前の『肉体的能力』は『人間種』としてはありえないくらいの『力』を持つに至っている。ま、ここからは『制約』に抵触するから詳しくは説明出来ないんだが、お前の『霊能力』
「ふむふむ。」
「
「・・・案外セレウス様の先程の発言も冗談じゃなかったんすね・・・。しかし、なるほど。それなら確かに、これまでの“レベリング方法”だけではダメですね。」
「そういうこった。どうせお前達は『リベラシオン同盟』を離れて『
「分かりました。」
確かにこれまでも目の前に襲われている人がいたら介入したけど、仲間達の“事情”から、
何と言っても、『
しかし、これからはそこら辺も考慮しつつ、他者に関わっていく事も必要になるって訳か。
考え方によったら、もちろん僕の“レベリング”の事もあるが、仲間達の評判が高まれば、結果的に『他種族』に対する認識を改めるキッカケとなるかもしれない。
そうした意味でも、この“レベリング方法”を実践するのは大きな意味があるかもしれないな。
ま、それでも『差別』や『偏見』の根は深いから、その程度では「焼け石に水」かもしれないが、何もしないよりはよっぽどマシだろうしね。
「それと、俺と“コンタクト”を取りたい時は、『心の中』で俺を“喚んで”みな。ま、
「なるほど、分かりました。」
言い方はアレだが、長年僕の『心の中』で“引きこもり”だったセレウス様としては、“表”に出る機会は多い方が良いだろう。
ま、僕の今現在の『霊能力』では、『顕在化』出来る時間が極めて短い様なので、いざという時の為にも、セレウス様を“喚ぶ”タイミングは注意しておこう。
「んじゃ、またな、アキト。」
「ええ、また。」
セレウス様が“消える”と同時に、僕の『意識』も少しずつ遠退いていくのだったーーー。
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