第63話 アルメリアからの依頼
アベルとジールの子孫達“人類”は、この地上の生存競争を勝ち抜き、文明を持つに至っていた。
しかし、『楽園』を追放した後も“人類”の往く末を見ていた『天空神ソラテス』は、人々の“心”に悪が蔓延っている事に心痛めていた。
『神々の石板』に触れ、『神々』と同じ『知恵』を持つに至り、己の『似姿』として『自由意思』を与えられた人々だったが、それを正しき事には使わずに、悪しき事にしか使わなかったからだ。
自分で額に汗して働くよりも、他人から奪う方が楽だと“堕落”してしまったのである。
そうした末に、地上には暴虐と悪徳が溢れかえったのだった。
その事を『天空神ソラテス』は嘆き、『人』を創造した事をひどく後悔した。
そして『天空神ソラテス』は言った。
「私は、創造した『人』を地上から消し去ろう。『人』をはじめとして、家畜や
そうして、『天空神ソラテス』は、『天』より大雨を降らせ、この地上を浄めるべく、大洪水を引き起こし、“人類”を一掃しようとしたのだった。
しかし、そこにロトという若者がいた。
彼は、『天空神ソラテス』の
『天空神ソラテス』は、その若者の存在に、全てを洗い流す事を思い留まり、ロトに『方舟』を建造する事を命じたのだった。
「ロトよ。私はこれよりのちに、大洪水を引き起こし地上を浄めるつもりだ。だが、そなたが私の言う通りの『方舟』を造るのならば、そなたとその家族の命、動物達の命は助けよう。」
「おお、偉大なる我らが父よ。
ロトはその言葉通りに『方舟』を建造し、『方舟』を完成させた彼は、彼の家族と地上にいるありとあらゆる動物を
『方舟』の完成を待っていたかの様に、『天空神ソラテス』の言葉通りに『天』より大雨が降り注ぎ大洪水を起こして、『方舟』以外の全てのものが洗い流されていった。
その大洪水は40日40夜に及んだが、ようやく鎮まった時には、『方舟』は『アルゴダ山』に流れ着いていた。
こうして、『天空神ソラテス』との約束を守ったロト達は、『祝福』を受け、『人』や動物は全滅の危機を免れたのだったーーー。
ー『アクエラ創世記 方舟』の記憶の断片よりー
◇◆◇
みなさん、ご無沙汰しております。
アキト・ストレリチアです。
僕も13歳になり、
ま、だからと言って、僕は
それよりも、僕の中での大きな変化は、ようやく“
『ゲーム』でもそれなりに時間が掛かる“レベリング”ですが、それを『
なんせ、
これが『ゲーム』ならば、大抵の人はある程度のところでサジを投げるのではないでしょうか?
今やほとんど『習慣化』しましたが、途中から気分はどこかの“修行僧”や“修験者”みたいでしたから。
また、アルメリア様の『加護』がなければ、いくら僕が『英雄の因子』と言う特殊な『能力』があったとしても、“
以前にも言及しましたが、ただ『ゲーム』の様に『モンスター』や『魔獣』を狩り続けるだけでは“
先程“たとえ”として出した“修行僧”や“修験者”の様に、俗世を捨てて“修行”に没頭したとしても、
そうした意味では、
さて、そんな僕ですが、半ば『限界突破』の『試練』を放棄しようかと考えていました。
前述の通り、“
『リベラシオン同盟』を設立して、『ライアド教・ハイドラス派』と事を構える覚悟の出来ている僕ですし、それには『武力』がないよりはあった方が良いのも理解しています。
しかし、もちろん今現在
所謂、一種の『燃え付き症候群』だったのですね。
だけど、“今”はちょっと“事情”が変わりまして、『限界突破』をせざるをえなくなりました。
その“事情”とは、アルメリア様との会話にさかのぼります。
・・・
「鏡さんよくないっスかっ?」
「バッカおめー、片桐さん一択だろーがよっ!」
この『
今やっているのは、不朽の名作『ときめ〇メモリアル』だ。
いや、鏡さんもいいんだけど、つーか全員可愛いんだけど、
そこは、やはりおっさん(今現在は13歳の少年だが)になっても譲れない(ちなみに2では一文字さん推しだ。いやこちらも全員可愛いんだけどねっ!?)。
「って、そーではなく。何か“用事”があったんじゃないんですか?」
あーだこーだと、二人でしばらく『攻略』を進めていたのだが、ハッと気付いて僕はアルメリア様に質問した。
まぁ、多少流されてしまったが(つーかやっぱり『前世』の『マンガ』・『アニメ』・『ゲーム』の様な『娯楽』に飢えているのかもしれんが)、呼び出されていた事をはたと僕は思い出していた。
「えっ?・・・ああっ!そうでしたっスねっ!?」
この
まぁ、僕も人の事は言えないけど。
ちゃんと『セーブ』してから、『電源(?)』を消して、おほんっとアルメリア様は神妙な顔で僕に向き直った。
いや、今さら取り繕っても遅いんだが・・・。
『私室限定』の『装備』である、ジャージにドテラ、ボサボサ髪に黒ぶちメガネは健在だし・・・。
いや、今さらあえてツッコミもせんが。
「まずはアキトさん。“
「・・・えっ?あっ、マジすか。ようやく“
「・・・何だか反応が薄いっスねぇ~。
「いや、そうは言われましても・・・。」
以前にも言及したと思うが、
なので、大抵の場合は、村や町、都市部の行政機関や『冒険者ギルド』などにある『
そうしなければ自分の『ステイタス』を確認する事が出来ないからである。
まぁ、僕らの場合は少し特殊で、アルメリア様に“見て”貰えば即座に確認する事も出来るのだが、これも以前言及したが、レベル400を越えてからは『パラメーター』に『数値的』な変化は一切ないのである(実際には“内在的”に変動しており、490から500にかけてその分が一気に上がる様だが)。
それ故、僕は面倒になってレベル400を越えた辺りから“更新”をサボりがちになっていた。
“更新”をしないと『レベルアップ』しないって訳でもなかったしねー。
ただ、『レベルアップ』による『数値上』の変化は、『ステイタス』由来の身体能力にも直に影響するので、多少の“違和感”は出てしまう。
それ故、定期的に“更新”する事は、己の“力量”を再確認する上でも理にかなっているのである。
ま、僕みたいにそこら辺を“感覚”で『調整』しちゃう人もいるけどねー。
あんまりオススメはしない方法なんだけど・・・。
そんな訳もあり、何とも感慨もないまま僕は“
いや、もちろん嬉しい気持ちや達成感もあるにはあるが、それよりも長かったなぁ~って気持ちの方が大きかったのである。
「ま、それは良いっス。“本題”はここからっスから。あっ、後で“更新”はしときましょうねっ?」
「あっハイ。」
“更新”をサボってた事を咎める様に、アルメリア様に笑顔で『圧』をかけられ、僕は反射的にそう返事を返した。
ふうっと雰囲気を変えて、アルメリア様は真剣な表情で再度口を開いた。
「それで“本題”なんスけど、諸々の“事情”でワタシのこの『
「あぁ~・・・。何かすいません・・・。」
これには僕も思い当たる節があった。
元々、
当初は『15年』ほどで『生体端末』が
『世界』に対して『不干渉』の
「いえ、それはワタシが好きでやった事っスからお気になさらずに。それに、かなり早めにアキトさんも“
「あぁ~、それなんですけど・・・。」
「いえ、アキトさんのおっしゃりたい事は分かるっスよ。これだけ『時間』が掛かった“レベリング”を再度行うモチベーションが持てないって事っスよね?」
流石に長い付き合いなので、アルメリア様には僕の考えはお見通しだった様だ。
やる事はやるし、一度『ハマる』とアレなのだが、基本僕は“めんどくさがり屋”だしねー。
「それに関しては、アキトさんの考えも分かるんスけど、ちょっとマズイ状況になったので、是が非でも『限界突破』の『試練』を受けて頂く必要が出てきたっスよ。」
「マズイ状況?」
コクリとアルメリア様は頷いた。
「アキトさん。以前お話した『
「ああ、あれから結構時間も経ちましたし、『ハイドラス派』が再び『召喚者の軍勢』を使用でもしたんですか?」
僕は、ニルが混乱の内に持ち去った『
「その通りっス。で、その結果、とんでもない事になりまして・・・。」
「???」
苦々しい顔でアルメリア様は呟く。
「アキトさんは『フルダイブ技術』とか『VRMMORPG』とかって“言葉”に聞き覚えがあるっスか?」
「もちろんです。これでも年季の入った『オタク』でしたからねぇ~。」
某作品等の大ヒットで意外と“最近”みたいな印象があるが、この手の『仮想現実』や『仮想世界』を取り扱った作品は、結構昔からあるジャンルの一つだ。
当然『オタク』として僕もそのジャンルの事は知っている。
「なら話は早いっスね。“今現在”の『地球』では、その『フルダイブ技術』や『VRMMORPG』が現実のモノとなったんスよ。」
「ええっ!?マジすかっ!?『技術』の進歩ってすげぇなぁ~。」
僕の『地球時代』にも、すでに『VR技術』はあったけど、あれは主に『視覚』だけを取り扱ったモノだった。
まぁ、それでも“VR元年”だ何だと凄く盛り上がっていたけれど、それが『フルダイブ技術』ともなると多くの『オタク』達(だけではないと思うが)が“夢想”したであろう『物語の“中”に入る』事が可能になったと言う事だ。
いち『オタク』としては、僕も是非とも『体感』してみたいモノである。
・・・いや、ちょっと待てよ?
このタイミングでその話をするって事はっ・・・?
「えっ?もしかして・・・」
「お気付きになりましたか?以前にもお話したっスけど、おそらく『召喚者の軍勢』の『効果』は、『地球』の『神話』や『伝承』・『伝説』等、そして『
「・・・『
ハハッと軽く笑いながらそう言ってみたのだが、アルメリア様は神妙に頷いた。
Oh、マジかよ・・・。
「正確には、とある『VRMMORPG』の『アバター』を『召喚』したんスけど、『アバター』と“リンク”していた『プレイヤー』の“魂”も一緒にくっついて来てしまったんスよ。」
「うわぁ、それは何とも・・・。災難ですねぇ~。」
僕も正確な『フルダイブ技術』の概要までは知らないが、おそらく『仮想現実』と『プレイヤー』を『電気信号』で繋ぐ事が“キモ”である筈だ。
つまり、本来なら途方もない『エネルギー』を使う筈の『召喚魔法』や『異世界転生』・『異世界転移』ではあるが、『召喚』されたのは『
しかし、不幸な事に
当然、『元の肉体』から“魂”、この場合は『脳機能』になると思われるが、が離れてしまったので、『元の肉体』は『地球』では『脳死』と判定されて『処理』されている事だろう。
まぁ、そもそも『地球』に“帰る方法”も、今現在は分かっていないから、そこの心配をするだけ無意味なんだが・・・。
「それどころの騒ぎじゃないっスよっ!『召喚』されてしまった『地球人』達の『アバター』は、全員アキトさんと同じく“
「ふむ、それは凄いな・・・。それがアルメリア様が『限界突破』を勧める理由ですか?」
『召喚』したのが『ライアド教・ハイドラス派』である以上、僕やその『地球人』達の立場や気持ちはともかく、『敵対』する可能性は高い。
しかも、僕と同等の『力』を持つとなれば、僕も“
「いやいや、お忘れっスか?今回は意図的でないにしても、『異世界』から“
「あっ・・・。」
忘れてた・・・。
別の『世界線』の『
「『世界』のバランスの崩壊・・・!?」
「そうなんっスよっ!しかも、『導き手』のポジションは当然ながら『至高神ハイドラス』になりますので、今さら
「そりゃ、マズイですねぇ・・・。」
今現在の
前回に『召喚』されて、『
なので、『世界』に与える影響は、『
しかし、今回はもちろん不幸な事故だとは思うが、“魂”を持つ『地球人』が『召喚』されてしまった。
なおかつ、彼等は僕に
それ故、すでに影響が出ているのか、はたまた彼等の死後に影響が出るのかは知らないが、
「影響はすでに出ているっスよ。アキトさんの場合は、『魂』のエネルギーは『英雄の因子』の『能力(『
「・・・対策はあるんですよね?」
『召喚』されてしまった『地球人』達が悪い訳では当然ないが、彼等を起点とした『世界』のバランスの崩壊、すなわち、天変地異や生態系の変質や変化が起こる可能性がある。
それどころか、このまま何もしなければ、
(そもそも、僕の
まだ、その“冒険”にも出ていないのに、『世界』が崩壊しては困ると言った個人的な事情もある。)
「もちろんっス。アキトさんの『限界突破』。これが“鍵”を握っているっス。」
「ふむ、そこに繋がる訳ですか・・・。アルメリア様が僕に『限界突破』を勧めていた理由は分かりました。しかし、僕が『限界突破』したところで意味はあるんでしょうか?」
「ええ。おそらくアキトさんは『限界突破』をただの『レベル上限』の解放だと思っていると思います。しかし、
「だ、大丈夫ですかっ!?」
瞬間、以前も一度目撃した事があったが、アルメリア様の『輪郭』に“
・・・もしかして『制約』に抵触したのだろうか?
「・・・アハハッ、だ、大丈夫っス。だけど、やっぱりワタシから“
そういえば、以前『祖霊』・シルウァも“
もしかして、『限界突破』も
「まぁ、それは仕方ないでしょう。アルメリア様が気に病む必要はありませんよ。よくわかりませんが、要するに僕が『限界突破』をする事で、『世界』のバランスを崩壊する事態を回避出来るって事ですよね?」
コクリとアルメリア様は頷いた。
「先程も言いましたが、ワタシのこの『
「まぁ、何とかしますよ。仲間達もいますしね。」
流石に自分一人では無理かもしれないが、僕にはこれまでの
アルメリア様がいなくなったとしても、やってやれない事はない筈だ。
「そう、っスね。アイちゃん達も、アキトさんほどではないにしても、“
「・・・あの、アルメリア様?」
ブツブツと呟くアルメリア様に、僕は訝しげに声を掛ける。
「ああ、すいませんっス。それで、『限界突破』の『試練』の“方法”なんスけど、
「いやいや、無理ゲーじゃないっスかっ!?」
確かに“
『竜種』は、
しかも
流石、『試練』と言うだけあって、とんでもない無理難題を出すモノである。
「でも、アキトさんなら“勝算”はあるっスよね?」
「いや、まぁ、無い事は無いですが・・・。」
そもそも、『純粋』な『竜種』はその強大な『力』故に、“絶対数”が少ないので、『人間種』の『領域』で出逢う確率は極めて低い、と言うかほぼ無いと言って差し支えない。
とは言え、『竜種』の中でも『亜竜種』に分類される『ワイバーン』などの『下位種』は、『知能』も『モンスター』や『魔獣』程度故に、『人間種』の『領域』で出逢う事もある。
『下位種』とは言っても、『竜種』の端くれなので、他の『モンスター』や『魔獣』とは一線を画した“強さ”だが、何の因果か、僕はそいつらとは何度か戦り合った経験がある。
その経験に加え、『伝説』や『伝承』を紐解いて『情報』を集めたり、『竜種』の『行動パターン』をシミュレーションしたりして、しっかり“対策”を立てて挑めば、例え
まぁ、あるにはあるが、出来れば戦いたくはないんだけどねー。
「はぁ~、前言撤回したくなってきましたよ。『限界突破』する必要がなければ、拒否してましたよ、いやマジでっ!」
「まあまあ、そうおっしゃらずに。アキトさんだけが頼りなんスよぉ~。」
「はぁ~・・・。」
いくら(おそらく)今現在
まぁ、やらねばならないから、『覚悟』を決めるしかないのだが・・・。
「となると、
「いえいえ、アイちゃんの『故郷』の近くにいるっスよ?」
「ああっ!確か『山の神』と呼ばれる『
そういえば昔、アイシャさんからその様な説明を受けた記憶があるなぁ~。
「けど、一応『鬼人族』の皆さんに『信仰』されている“存在”でしょうに・・・。そんな『
『鬼人族』の皆さんに恨みを買う様な事態は出来れば避けたいのだが・・・。
「それについては大丈夫だと思うっスよ?『鬼人族』の皆さんは基本的に『脳筋』なので、腕自慢の方々は、年に数えるほどですけど、『山の神』に挑む方々もいるみたいっスから。まぁ、アキトさんは『人間』ですけど、『力』を示せば『鬼人族』も認めてくれるでしょうし、問題ないっスよ。」
「ハハハッ、そういえば身近に“戦闘民族”いたんだった・・・。」
着実に僕の“退路”は塞がれている訳ね。
「はぁ~、じゃあ、まぁ、準備を始めますか・・・。」
「頑張って下さいねっ!」
キラキラと良い笑顔でアルメリア様は僕を鼓舞した。
何か腹立つな・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現時点でのアキトのステイタス。
名前:アキト・ストレリチア
性別:男
種族:人間
職業:リベラシオン同盟・実動部隊リーダー
年齢:13歳
レベル:500
HP:4812
攻撃力:4924
防御力:4862
力:4831
耐久:4715
器用さ:4931
敏捷性:4964
素早さ:4973
知性:5000
精神:5000
運:982
魅力:5000
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『英雄の因子』所持者
発現能力:九死一生・言語理解・
『リベラシオン同盟』・実動部隊リーダー
称号:英雄、戦士、魔法使い、結界術士、魔闘気使い、魔獣使い、狩人、農夫など
特殊技能:槍術、棒術、杖術、剣術、体術、魔法、結界術、魔闘気、交渉術など)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます