第62話 『異世界転移』
◇◆◇
ルキウスの醸し出す『雰囲気』に呑み込まれて、タリスマン達はメイド達に『
“地下部分”はそれはそれで見た事もない様な様々な物品や
この世の『贅』の限りを尽くした様な美しい建築様式、廊下や壁どころか天上部分まで“芸術”として描かれた壁画、一目で高級品と分かる調度品など、まさしく多くの人々がイメージする『お城』そのものだった。
よくよく見てみれば、タリスマン達を誘導するメイド達でさえ、その見た目から所作、服装に至るまで一点の曇りもない美しさを誇っていた。
事ここに至って、ようやくタリスマン達は『
革新的な『技術』であった『フルダイブ技術』だが、『LOL』のメンバー達“一般人”が入手可能な『コンシューマー盤』は、あえて“本来”の仕様からは相当に『制限』されている。
そうでなければ、まさしく“
また、まだそこまでの『機能』を“一般人”が入手出来る価格帯で詰め込むのは難しかったと言う事情もある。
なんせ、まだ『実用化』に至ってから歴史の浅い『分野』だ。
まぁ、そんな訳もあり、“解像度が粗い”とか“五感の再現”が甘い部分があり、どことなく“
しかし、『イグレッド城』の
それに、今思えば『NPC』である筈のランジェロやルキウスも“自由意思”で動いていた様にも感じる。
“リソース”の観点からも『運営』が“本気”を出しただけ、とは流石にタリスマン達も思えなかった。
「妙だな・・・。」
「・・・ティアさんもそう思いましたか?」
ティアの呟きは、たまたま近くにいたエイボンの耳に届き、彼はそう応えた。
「ああ、聞こえてしまったか、エイボン殿。いや、あまりに
「いえ、仰りたい事は分かります。多分ティアさんと僕は同じ事を考えていると思います。・・・
エイボンの発言に、ティアは目を見開き小声で応えた。
「・・・エイボン殿も
「ええ。今のティアさんの“
肩を竦める様に、エイボンは言った。
「“
「どちらにせよ、判断材料が足りませんね。『召喚』した以上何かしらの『目的』があるのは明白ですので、とりあえずの『安全』は確保されていると思います。ですが、何かに『
「うむ。そうなると『
ティアは『同調の指輪』を着けたり外したりしながらそう言った。
「皆さんにも注意喚起しましょう。皆さんも半信半疑でしょうが、おそらく『
エイボンの発言にコクリと頷くティア。
と、そこにメイド達が大きな部屋の前で止まり、その中の一人がタリスマン達に声を掛ける。
「『勇者』様方。しばらくこちらのお部屋でおくつろぎ下さい。主人ーーー皇帝陛下の御準備と皆様の歓迎の御準備が整い次第『サロン』にご案内致しますので。」
最上級のスイートルームも霞むほどの豪勢な大部屋をまるでただの『楽屋』の様に使うメイド達、ひいてはルキウスにタリスマン達はまたしても圧倒された。
『権力の誇示』、そうした意味合いが『王宮』や『貴族の屋敷』にはある。
タリスマン達の反応を見るに、その効果は十分にあった様だ。
その『楽屋』にはすでに別のメイド達が待機しており、タリスマン達に着席を促し、速やかに給仕をするのだった。
ある意味“監視”されている様な状態だ。
相手がメイド達とは言え、警戒してし過ぎる事はない。
さりげなく『同調の指輪』を外したティアは、『LOL』のメンバーに呼び掛けるのだった。
[皆、すまないが“言葉”を発しないで“指輪”を一旦外してくれないか?]
ティアの『言語』は当然ながらメイド達には何を言っているか分からない。
しかし同じ『世界線』、しかも使用していた『サーバー』の関係から、同じ『日本』で生活していた『LOL』のメンバー達には『同調の指輪』をしていても『言語』が通じる。
タリスマン達は、一瞬ティアを見るのだが、言われた通り無言で『同調の指輪』を外すのだったーーー。
[・・・お話は分かりました。]
[ちょっと『
[あまりに『
先程のティアとエイボンのやり取りの繰り返しをティアはタリスマン達に再度行う。
ここは、まず何に置いても『
比較的冷静にタリスマン、N2、キドオカはティアの発言に納得していた。
当然ながら彼らも『
しかし、ウルカとアーロスはティアの発言に取り乱していた。
[いや、なんでそんな皆さん冷静なんですかっ!?『元の世界』に帰れないかもしれないんですよねっ!?]
[そ、そうだぜっ!あ、いや、ティア姐さんの発言を疑う訳じゃないが、ただの“勘違い”って可能性も・・・。]
[お二人ともお気持ちは分かりますが、どうか冷静になって下さい。]
[そうだな。俺も正直半信半疑だったが、うすうす何か変だとは思っていた。皆も感じていたなら、これをただの“勘違い”と断じるのは楽観的過ぎるだろう。]
[“勘違い”なら“勘違い”で、ただの笑い話になるだけですからそれでも良いのですがね。しかし、もし本当に『
[僕らも『アバター』で
[いずれにせよ、今は何より『情報』が欲しい。しかし、『
ティアの発言に無言で皆コクリと頷いた。
[しかし、ならば『
[それに関しては儂もエイボン殿も同様の疑いは持っておるが、今の所問題ないじゃろ。儂ら自身で任意に外す事が可能じゃし、今のところ異変も起きてはいない。ただ単に『意志疎通』を可能とする『アイテム』なのかもしれん。ま、一応警戒はしておくがの。]
話が一段落したタイミングで、狙いすました様にメイド達が何かを訴えてきた。
どうやら“準備”が整った様だ。
[ここまでの様じゃな。皆くれぐれも用心する様に。『
コクリと頷く一同。
そして、再び『
◇◆◇
ルキウスがタリスマン達を『謁見の間』ではなく『サロン』に通したのは、当然ながら『計算』あっての事だ。
『権威』を見せつける、『立場の差』を分からせる上では『謁見の間』を利用するのは非常に効果的な『手段』だが、相手の『主義』・『主張』・『思想』・『文化』が分からないのはルキウスもタリスマン達と同じである。
それ故、あまり『権力』をひけらかすのは、むしろ反感を買う事態ともなりうる。
最終的には『
「さぁ、遠慮せずに食事を楽しんでくれたまえ。」
タリスマン達がメイド達に連れてこられたのは、先程の『楽屋』よりも更にグレードの高い『大広間』だった。
『サロン』と呼ばれているその場所は、ルキウスが比較的近しい間柄の者達をもてなす『場』である。
これでも『他国』の要人や貴人達との『社交会』や『舞踏会』を行う様な『大ホール』よりも手狭なのだが、ルキウスと懇意になりたい者達にとっては、むしろこちらの方が遥かに魅力的な場所であった。
所狭しと並べられた御馳走に一人一人に専属で付く給仕役のメイド達に囲まれて、しかし、タリスマン達は食事に手を付ける事なく、ルキウスに説明を求めていた。
「いえ、ご歓待はありがたいのですが、我々は先に現状のご説明を頂きたいのです。そちらにも何か“事情”があるのでしょうが、こう言っては何ですが、我々は突然訳も分からず喚ばれたのですよ?」
『LOL』を代表し、ギルド長であるタリスマンがそう切り出す。
『ゲーム』内とは言え、一ギルドの長として、タリスマンはそれなりに『折衝事・交渉事』には覚えがある。
故に、必然的に『進行役』はタリスマンの『仕事』となった。
タリスマンの顔を一瞥すると、スッとルキウスは手を上げる。
すると、メイド達は統制の取れた足取りで、サッと『サロン』から出ていった。
後に残ったのは、ルキウスとランジェロ、ニルにルキウスの側近数名とタリスマン達だけとなった。
「いや、失礼。『
男性から見ても魅力的に見える微笑を浮かべ、ルキウスはそう言った。
「それでは最初に。“ここ”は、“この世界”はどこなのでしょうか?」
そんなルキウスに負けじとタリスマンもなけなしの『胆力』を発揮して質問した。
それには、ルキウスではなくランジェロが応える。
「それは私から。ここは『アクエラ』の『ロンベリダム帝国』、『
一瞬メンバー達がざわつくのだが、タリスマンは落ち着いた口調で次の質問をする。
「なぜ我々は喚ばれたのでしょうか?」
「それは余から答えよう。
ルキウスはすでに一手打ってきた。
虚実を混ぜた『情報』と『印象操作』。
“嘘”は言っていないが“真実”も言ってはいない。
わざと相手に“憶測”や“誤解”を与える様な言い回しをする事で、タリスマン達の『思考』を誘導しているのだ。
もちろんボロが出る事もない。
少なくとも、『帝国内』ではこれは“事実”だからだ。
『王候貴族』との付き合いの中で、ルキウスは『観察眼』、特に『人間』の“本質”を見抜く事に長ける様になっていた。
タリスマン達も十分に注意・警戒してはいるが、こればかりは『経験値』が違い過ぎる。
ちょっとした“仕草”、“視線”、“呼吸”からでも意外と『情報』と言うのは入手が可能だ。
その中で、ルキウスはタリスマン達の心の内に秘められている『英雄願望』とか『正義感』、あるいは『自尊心』や『承認欲求』を垣間見たのだった。
ここら辺を『刺激』するのが効果的か、とルキウスは瞬時に判断する。
「その“争い”に我々を『
「もちろん協力して貰えれば有り難いが、強要するつもりはない。いくらそなたら『
ルキウスがタリスマン達を“戦争利用”しないと明言した事により、あからさまにホッとした様子の者達もいた。
その様子をさりげなく『観察』し、やはりいきなり“戦場”に送り込むのは悪手だと理解した。
「『
「『古代魔道文明』の『遺産』の総称だ。そなたらを喚んだのもその『遺産』の『力』だ。」
「・・・その『力』があれば、我々が『元の世界』に帰る事も可能なのでしょうか?」
「その可能性はあるが・・・、ランジェロ。」
「『勇者』殿と陛下の仰る通り、その可能性はありますが、今現在我が帝国で保管している『遺産』には、その様な効果の『遺産』は御座いません。」
「そう、ですか・・・。」
『元の世界』に帰る『手段』があるかもと期待したのだが、ランジェロの発言にガクッと肩を落とした。
しかし、少なくともその“可能性”や“手掛かり”があったのはタリスマン達としては朗報だった。
「・・・すまぬな。我々も多少焦っていたのもあるし、ある意味“
ルキウスは殊勝な言葉を吐くが、もちろんこれも『ブラフ』だ。
論点をずらし、『責任』の追求を避けるのは『
今回の『召喚』も、あくまで『古代魔道文明』の『遺産』の研究をしていた末の『事故』であると印象付け、一時はその成果に喜んで見せたのだが、『
結果的に、タリスマン達にとっても『
それを“切っ掛け”に、なし崩し的に『帝国』に傾倒させていく“流れ”にする事がルキウスの狙いであった。
あえて、『
「ところで、なぜ我々が『
「そなたらの『世界』には『ステイタス』がないのか?我々は『
「『ステータス』っ!?『
「う、うむ。ランジェロ。」
急に身を乗り出して来たタリスマンに、これは“素”でたじろぎルキウスはランジェロに説明を促す。
「あくまで『ステイタス』は『個人情報』なので、本人の承諾なしに細かい事は調べられないのですが、それでも最低限の『情報』は得る事が可能です。我々は、『勇者』殿達を“『勇者』殿”であると判断したのも、その『情報』からですな。『
「実際、余の側近にして“精鋭中の精鋭”である近衛の者達でさえ、レベルで言うと350前後だ。『
「それが、もうお察しの通り『勇者』殿達は
「ご、500っ!?」
タリスマン達は驚愕の表情を露にした。
『アバター』姿で『
「おそらく、多少『
軽いパニックに陥ってしまったタリスマンに代わり、ティアがそう質問した。
「もちろんです。と、申しますか『
「本当に『個人情報』とか『身分証明』、『履歴書』に近いのだな・・・。」
「『勇者』殿達は、今現在『アクエラ』においては“いる筈の無い者達”となりますな。先程申し上げた通り、行政機関や『冒険者ギルド』で登録をしない事には、出来る事は限られてしまいます。」
「・・・ふむ。」
ティアは瞬時にこの『忠告』を一種の『警告』であると判断した。
ルキウス達の発言を信じるなら、『
しかし、それは
『
しかも、ルキウス達の発言を信じるなら、今現在の『
逆に言えば、様々な『勢力』から付け狙われるに値した『価値』を持っている事でもある。
『社会システム』上、『
それならば、逆にルキウス達を『
『戦争』に関しては正直タリスマン達にはどうでも良い事だ。
同じ『人間』の危機かもしれないが、それはどんな悲惨な事柄でも『
それを『
ま、一応それに関しては“強要”しない事を明言していたが、逆に言えば、“強要”でなければ『
そこら辺は、引き続き警戒する必要があるだろう。
それとは別に、『
『
裏を返せば、ルキウス達にとっては折角手に入れた『
『協力』していると見せかけて恩を売りつつ、『情報』を確保するのが望ましいだろう。
「いずれにせよ、そなたらの『
『
圧倒的な『強者』であり、『貴族』に引けを取らない高い『教養』を有しており、頭も回る様だが、それでも『
「ありがとうございます。しばらくお世話になります。」
日本人由来の『
こうして、のちに『
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『LOL』のメンバー達の、
名前:ククルカン
性別:男
種族:魔族(『アバター』の見た目上)
職業:『LOL』メンバー、『
年齢:28歳
レベル:500
HP:4700
攻撃力:4700
防御力:4700
力:4700
耐久:4700
器用さ:4700
敏捷性:4700
素早さ:4700
知性:5000
精神:5000
運:3963
魅力:4700
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・邪悪
『LOL』メンバー
称号:
特殊技能:体術、格闘術、鈍器、白魔法、古代神魔法など)
◇◆◇
名前:ティア
性別:女
種族:人間
職業:『LOL』メンバー、『
年齢:24歳
レベル:500
HP:4700
攻撃力:4700
防御力:4700
力:4700
耐久:4700
器用さ:4800
敏捷性:4800
素早さ:4800
知性:4900
精神:4900
運:4230
魅力:5000
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・中立
『LOL』メンバー
称号:
特殊技能:体術、弓術、鞭、歌唱、神霊術など)
◇◆◇
名前:アーロス
性別:男
種族:竜人族(『職業』上、『竜族』の“血”を受け継いでいると言う『設定』になった)
職業:『LOL』メンバー、『
年齢:16歳
レベル:500
HP:5000
攻撃力:5000
防御力:4900
力:5000
耐久:4900
器用さ:4700
敏捷性:4700
素早さ:4700
知性:4800
精神:4800
運:1982
魅力:4700
魔素感受性:70
魔法習熟度:700
(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・中立~善
『LOL』メンバー
称号:
特殊技能:剣術、槍術、黒魔法、付与魔法など)
◇◆◇
名前:ドリュース
性別:男
種族:人間
職業:『LOL』メンバー、『
年齢:18歳
レベル:500
HP:4700
攻撃力:4700
防御力:4700
力:4700
耐久:4700
器用さ:4800
敏捷性:4800
素早さ:4800
知性:4900
精神:4900
運:3189
魅力:5000
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・悪~中立
『LOL』メンバー
称号:
特殊技能:体術、弓術、鞭、歌唱、召喚魔法など)
◇◆◇
名前:エイボン
性別:男
種族:人間
職業:『LOL』メンバー、『
年齢:20歳
レベル:500
HP:4700
攻撃力:4700
防御力:4700
力:4700
耐久:4700
器用さ:4700
敏捷性:4700
素早さ:4700
知性:5000
精神:5000
運:4092
魅力:4800
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・中立
『LOL』メンバー
称号:
特殊技能:杖術、短剣術、黒魔法、精霊魔法、古代語魔法など)
※・『TLW』時の『ステータス』は
・『スキル』・『魔法』に関しては、『TLW』時のモノをそのまま使用可能。ただし、
・なお一部『スキル』に関しては“感覚”に置き換わっている。
・『TLW』の“精霊魔法”と、
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